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ノバルティス・リー社長 医師の働き方改革で「対面訪問難しく」 約60人のデジタルコミュニケーター配置

公開日時 2023/03/27 04:50
ノバルティス ファーマのレオ・リー社長は3月24日に開いた国内ビジョンミーティングで、電話やオンラインなどで情報提供活動を行う「デジタルコミュニケーター」を約60人配置したことを明らかにした。コロナ禍を機に医師の情報収集手段が多様化したほか、2024年4月から順次施行される医師の働き方改革によって、医師とより会いにくい市場環境になると言われている。リー社長も「アポイントを取得して対面訪問することは難しくなる」と指摘し、医師が情報収集したい時にすぐにオンラインなどでつながることのできる社内環境整備に今後も注力していく構えをみせた。

「働き方改革関連法の施行により、医療従事者が製薬企業の者と適正使用や最適患者について話す時間がさらに短くなってしまうと考えられる」、「今後もMRは必要と思うが、先生方のスケジュールや都合、ニーズにあう環境を作り、適切な情報提供活動を続けていきたい」――。リー社長は、24年4月以降の医師の働き方改革によって、医師の時間の使い方が大きく変わり、医師とMRとの関係にも影響を及ぼすと見通した。

医師の限られた時間の中でも迅速かつ的確に情報提供できるようにするため、デジタルでのコミュニケーションを強化し、その一環として業界最大規模のデジタルコミュニケーターを組織した。「デジタルコミュニケーターは顧客とリアルタイムでコミュニケーションできる。先生方が話したい時に電話やビデオコミュニケーションでつながることができる」と説明した。

同社では「徹底した顧客志向」を目指す方針で、顧客ニーズの社内共有やオムニチャネルの推進をより一層強化し、顧客の求めに全社で対応していく考え。顧客ニーズを把握する一助とするため、「Voice of Customer(VoC)」と呼称する医療従事者を対象としたアンケートシステムを22年7月から実装しており、幅広い要望を把握して情報提供活動に反映させる取り組みも始めている。

◎革新的医薬品に100%特化した新生ノバルティスがスタート

ノバルティスは、23年下期に後発品やバイオシミラーを手掛けるサンドを分離し、革新的医薬品に100%特化した“新生ノバルティス”としてスタートする。

リー社長は、新生ノバルティス日本法人のビジョンは「日本で、最も高い価値を提供し、信頼される製薬企業になる」ということだとした。5つの疾患領域(循環器、固形腫瘍、血液腫瘍、イムノロジー、中枢神経)と、”2+3”のテクノロジープラットフォーム(低分子化合物、生物学的製剤、核酸医薬、放射性リガンド療法、遺伝子・細胞治療)に特化して革新的医薬品を持続的に開発・提供することで社会に「価値」を提供。併せて、▽患者及び介護者、▽医療従事者及びアカデミア、▽医療システム従事者――とのパートナーシップを強化し、社会が抱える課題に一緒に対処することで「信頼」を育むと説明した。

◎「革新的医薬品を開発するだけでは不十分」

リー社長は、「患者さんにとっての最善のアウトカムをもたらすことは、革新的医薬品を開発するだけでは不十分。(患者や医療従事者などの)キーステークホルダーとのパートナーシップを構築することで、患者さんに最善のアウトカムが提供できる」と述べ、ビジネスモデルをプロダクトアウト(=企業が作りたいものを重視して開発すること)から、エコシステムとカスタマーイン(=顧客ニーズを起点に製品やサービスを開発すること)のモデルに変えていく決意も示した。

カスタマーインの取り組みは既に進めており、例えば医薬品のライフサイクル全体にわたって患者の声を必ず反映させることを行っている。開発の段階では、患者からの情報収集をもとに関連する評価指標を策定したり、臨床試験プロトコルの作成に活かしている。市販後には患者の視点を反映した製品計画を実施しているという。

リー社長は、成功体験のひとつとして「仕事や子育てのために臨床試験に参加することが難しいという課題があった。我々は患者さんと協業することでこの課題を解決した」とのエピソードを披露した。そして、「患者さんにとっても充実した毎日につながると思っている」と述べ、今後も患者とともに革新的医薬品を開発し提供していく意向を示した。

◎日本法人の22年売上3169億円、1.1%減 売上トップ製品はレボレードの288億円

ノバルティス日本法人の22年売上は薬価ベースで3169億円で、前年比1.1%減だった。売上上位10製品は、レボレード(288億円)、エンレスト(280億円)、エクメット(257億円)、タシグナ(205億円)、ルセンティス(181億円)、ジャカビ(179億円)、エクア(161億円)、グリベック(137億円)、アフィニトール(133億円)、イラリス(104億円)――となる。

◎国内の年平均成長率3.5%目指す 今年7プロジェクトの承認見込む

国内の開発パイプラインには現在約40プロジェクトあり、このうち4つが承認申請中、18が第3相臨床試験段階にある。

申請中のプロジェクトは、▽高コレステロール血症又は家族性高コレステロール血症を対象疾患とする低分子干渉RNA(siRNA)医薬品のインクリシラン(一般名、開発コード:KJX839)、▽両アレル性RPE65遺伝子変異による遺伝性網膜ジストロフィーを対象疾患とする「LTW888」、▽JAK阻害薬・ジャカビの造血幹細胞移植後急性移植片対宿主病の適応追加、▽ジャカビの造血幹細胞移植後慢性移植片対宿主病の適応追加――となる。同社は23年中に、これら4プロジェクトを含む計7プロジェクトの承認取得を見込む。

リー社長は、日本法人の今後の年平均成長率は3.5%と設定したことを明らかにし、今年の承認取得を見込む7プロジェクトを含む開発後期プロジェクトが「我々の成長をしっかり支えてくれる薬になる」と話した。
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