医師の働き方改革 MRに求められる“目利き力”と“自分事化” 医師の「質問しづらくなる」との懸念に対応
公開日時 2023/11/28 04:52
医師の働き方改革に伴い、MRを通じた情報収集時間が「減る」と予想している医師の6割強は、気軽な質問がしづらくなるなどの懸念を抱いている――。このような調査結果を製薬デジタルマーケティング支援会社のMCI DIGITALがまとめた。懸念のトップ3は、「気軽な質問や依頼がしづらくなる」、「薬剤に関する新しい情報がタイムリーに入手できない」、「薬剤に関する質問・相談がタイムリーにできない」――だった。働き方改革以降は、これまで以上にMRが“目利き力”を生かして情報を必要とする医師にデジタルを含めてタイムリーに提供できる体制が重要となるほか、MRが“自分事化”して対応できる教育にも焦点があたりそうだ。
文末の「関連ファイル」に、医師の働き方改革により、MR面談からの情報収集時間が「減る」と考えている医師が抱く懸念事項に関する資料を掲載しました(会員のみダウンロードできます。14日間の無料トライアルはこちら)。
◎医師の4人に1人 MR面談による情報収集時間が「減る」と予想 4月調査・7月調査ともに
同社は、医師の働き方改革施行後に薬剤・疾患関連情報の収集時間がどのように変化するかについて、医師約5000人を対象に、23年4月(調査期間:4月17日~28日)と7月(同7月26日~8月1日)に意識調査を実施した
(4月調査結果の記事はこちら)。
時間外労働規制に備えて勤務先で労働時間短縮計画が「策定され推進中」又は「計画策定中」と答えた医師約2500人のうち、働き方改革後にMR面談を通じた情報収集時間が「減る」と予想している医師は、4月調査で26.3%、7月調査でも25.9%となり、医師の4人に1人は「減る」と予想していることがわかった。
◎「減る」理由の1位 「MRとの面談可能な時間帯・曜日が縮小」
直近の7月調査から、MR面談を通じた情報収集時間が「減る」と予想している医師670人に「減る」と思う理由や懸念を聞いた結果を見てみる。「減る」と予想した理由の1位は「MRとの面談可能な時間帯・曜日が縮小するため」(40.0%)で、勤務先施設の環境要因が影響するとのことだった。「MRとの面談が完全アポイント制になるため」(16.0%)といった環境要因も一定割合あった。「所定労働時間外での面談が残業扱いとなるため」は25.7%だった。
一方で、「減る」と予想した理由の2位は「時間外労働時間の上限を理由にMRからの面談依頼を断りやすくなるため」(32.5%)だった。MRが目利き力を生かして、医師から選ばれるMRになることがより重要になりそうだ。3位は「時間外労働時間の上限を契機にMR数がさらに減少すると予想するため」となった。
◎懸念の1位 「気軽な質問や依頼をしづらくなる」
MR面談を通じた情報収集時間が「減る」ことによる懸念事項を聞いたところ、「特に困ることはない」との医師は37.5%となり、逆に何かしら懸念があるとの医師は62.5%となった。
懸念事項を複数回答可で求めたところ、上位から「気軽な質問や依頼をしづらくなる懸念がある」(26.6%)、「薬剤に関する新しい情報がタイムリーに入手できない懸念がある」(25.1%)、「薬剤に関する質問・相談がタイムリーにできない懸念がある」(25.1%)、「インターネットで調べる手間が増える懸念がある」(17.0%)――となった。
同社は本誌取材に、「医師の働き方改革後の医薬情報の収集に関しては、若手医師で『困る』との割合が高い。MR面談を含め医薬情報をどんどん仕入れたいとの意識が現れたとみられる」と話した。医師の働き方改革は24年4月に施行され、勤務医の場合は原則、年間960時間とする上限規制が設けられる。
7月調査は、製薬企業のオウンドサイト(自社サイト)やその他医療関係企業サイトを閲覧している医師5094人(病院勤務医:3955人、開業医:1139人)を対象に実施した。調査時期は23年7月26日~8月1日。分析結果は、MCI DIGITALの「医師版マルチメディア白書2023年秋号」に掲載されている。