製薬国内大手・準大手８社の10年３月期（09年度）決算が５月14日に出揃った。海外売上高がおよそ半分を占める大手４社は、円高による数百億円の目減りに加え、世界最大市場の米国で国際戦略品の一部が米国で、後発品の攻勢にさらされることを意味する特許切れを迎え、いわゆる「2010年問題」がじわりと悪影響を及ぼし始めた決算となった。

国内トップの武田薬品は、09年度横ばいの国内事業は、10年度は新製品ラッシュを受け増収を見込むものの、頼みの海外事業が伸び悩み、業績全体に影響が出た。円高による目減りに加え、世界で2000億円超を売り上げるPPIランソプラゾール（日本名タケプロン）が、円高の影響、米国特許切れで２割近くも落ち込み、売上高全体で4.7％の減収。10年度も減収減益の見通しだ。加えて、決算と併せ発表した12年度まで中期経営計画では、12年に米国特許切れが見込まれる糖尿病用薬ピオグリタゾン（同アクトス）の減収も吸収しきれず、09年度実績より低い事業目標を掲げざるを得なかった。

アステラス製薬は、国内事業は10年度も含め堅調に推移するが、海外では国際戦略品の筆頭格の免疫抑制剤プログラフが後発品の影響を受け始めた。10年度は、排尿障害改善剤のハルナールも欧米で後発品の影響を受けるとみて、同社も減収減益を予想する。なお、同社は10年度が底という認識を示している。

エーザイは、２大主力品のうちPPIパリエットは米国での特許満了はまだ先だが、欧米で他社のPPIの後発品との競合などによる影響を受けて減らしており、米国では円高の影響も加え２割の落ち込み。認知症薬アリセプトやがん領域製品などの売上増はあったものの、2.7％の低い伸びにとどまった。しかし、10年には米国でアリセプトの特許切れが控える。0.9％と辛うじて増収を確保する計画だ。８％の伸びで好調な国内事業だが、10年にはパリエットの後発品参入が見込まれ、11年にはアリセプトが特許切れを迎える。

第一三共は、ランバクシー社（ラ社）が連結されたことで見かけは高い伸びを示すが、ラ社の連結を除くと0.2％の増収にとどまる。かつての屋台骨ですでに特許切れした高脂血症治療プラバスタチンに加え、抗菌剤レボフロキサシンも10年には特許切れ。成長原動力のARBオルメサルタンが貢献するものの、10年度は2.9％の低い伸びを予想する。

準大手の大日本住友製薬、塩野義製薬は２桁増収だが、米国子会社の連結が後押しした形。国内営業は両社とも課題に挙げる。10年度、国内は薬価改定の影響があるが、塩野義は新製品の伸びで吸収する一方、大日本住友は影響率が９％強と大きく吸収しきれないと見ている。

国内医療用薬事業では関節リウマチ治療薬レミケードなど主力品に加え、ジェネリックの伸びで5.7％の増収と好調な田辺三菱製薬だが、10年度は血液製剤メドウェイの申請データ改ざん問題も影響するとして減収減益を見込んだ。大正製薬も薬価改定の影響を受け、医療用薬事業は4.8％減となる見込み。