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大統領科学技術諮問委  イノベーション強化策を提案

公開日時 2012/12/11 04:00

米大統領行政府の大統領科学技術諮問委員会(PCAST)は、11月末までにオバマ大統領に米国の科学技術が世界に遅れるとの危機感を示したうえで、R&Dイノベーションを活性化するために、官民学の分野でR&D投資を増やす政策の必要性とその具体的な提案を示した報告書を提出した。


「大統領への報告   変容と機会:米国研究企業の未来」(REPORT TO THE PRESIDENT TRANSFORMATION AND OPPORTUNITY: THE FUTURE OF THE US RESEARCH ENTERPRISE)と題する報告書では、米国は従来、R&D投資対GDP(国内総生産)比で世界のトップを走っていたが、いまや、他の先進国あるいは一部新興国よりも少なくなってきたとトップを落ちたと指摘したうえで、米国の産業は、応用R&Dから基礎研究や初期段階の応用研究に絞ることにシフトしてきていると指摘、それら研究を十分にサポートしなければ、過去1世紀以上米国経済を牽引してきた米国産業の成長や雇用を確保する発明と発見におけるリーダーシップを失うと危機感を示した。


米国のR&D投資対GDP比は、投資額とともに世界のトップを走っていたが、現在では世界ランキングの8位(先進国では4位)に落ちた。中国、台湾、シンガポールなどアジアのR&D投資対GDP比の伸びが著しいことが影響した。2009年には、世界のR&D投資総額のアジア諸国のシェアが米国と同額に追いついた。また、2012年には、世界のR&D投資のシェアでは、アジアが37%となり米国の31%を抜く勢いだ。 米国のR&D投資対GDP比は2009年には2.87%。オバマ大統領はこれを3%に上げることを目標としている。


このため、同報告書では、基礎研究による成果を適切に応用させる政策なくしては他国に科学技術のリーダーシップを奪われるとの懸念を示したうえで、その打開策として、基礎研究や初期段階の応用研究における長期的投資を増やすこととその研究成果を新製品、産業、雇用へリンクさせることへの障害を解消させること-を目的とすることを提言している。

PCASTは、そのための具体策として、以下の5つの「主要な機会」を形成することが必須と指摘した。①米国は世界でのR&D投資におけるリーディングポジションを維持するために、連邦政府、大学、産業が相互にサポートし合う仕組みを構築する、②連邦政府は、基礎研究や早期応用研究における持続的な投資者としての役割を果たす、③連邦政府機関は、漸進的あるいは画期的研究、専門分野あるいは学際的研究、プロジェクトをベースとしたあるいは人物をベースとした各種の賞などについて、それぞれのミックスを支持するポートフォリオを成長させる機会を作る、④政府は業界が業界自身、あるいは大学や国立研究機関との提携の際に投資をさせる政策的奨励策やインセンティブを設ける、⑤研究指向型大学は、イノベーションエコシステムのハブとしての役割の強化を図る。研究指向型大学では、基礎研究のベースの知的レベルを高く維持する一方、卒業生が今日の社会で、研究成果を民間部門にすぐ応用できるなどの活動ができるように教育プログラムを変革する-を上げた。


そのうえで、PCASTは、オバマ大統領に対しては、米国のR&D投資対GDP比3%に到達、これを維持するという目標を再確認すること、議会に対しては、政治的困難さを認識しているとしながらも、研究インフラや研究施設への連邦政府研究資金の安定性・予見性が確保される1つ以上の仕組みを設定すること、「研究および実験に関する税額控除」(The Research and Experimentation Tax Credit)を恒久化すること、大学に関する規制および政策改革が必要で無駄がないように行政管理予算局(OMB)や科学技術政策室(OSTP)が旗振りをすべきこと、科学・技術・工学・数学(STEM)教育の質が求めるべきものになっていないので、大学は、経験的に妥当とされた教育方法や学部学生の専攻科目は信頼のおける研究経験を通して、新たな知識の創造を経験するような機会を作るべきこと、また、学部学生のSTEM教育の改善には、学界、専門学会、財団、民間企業、地方自治体・州政府・連邦政府などのリーダーの関与が望まれる、また、大学にとっても企業に取っても世界からの一流の研究者・学生を引き付け、留まらせることが必要で、連邦政府はそのために、学生および被雇用研究者には家族も含めビザにおける滞在の優遇策の措置-などを求めた。


PCASTは、共同議長をJohn P Holden大統領補佐官(科学技術担当、科学技術政策室長)、およびBroad Institute of Harvard and MITのEric Lander所長が務めるほか、米国内科委員会(ABIM)のChristine Cassel会長兼CEO、エール大学のRichard C Levin学長、グーグルのEric Schmidt CEO、マイクロソフトのCraig Mundie研究・戦略責任者、カリフォルニア大学バークレー校のEd Penhoet名誉教授(バイオケミストリー、公衆衛生)兼AltaPartners所長など学者、企業幹部19名で構成されている。
 

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