ミクス編集部の酒田です。最近は、記事へのコメントやツイッターで発信していますが、ブログに書くのは久しぶりです。
4月21日、大阪に出張してきました。大阪に行くと必ず、薬の神様がまつられている少彦名神社に足を運び、ご挨拶します。境内には奉納された、たくさんの絵馬が掛けられています。創薬、事業ががうまくいくことを願うものもありますが、多くは家族や自分の病気が快癒すること、そしてまた元気に一緒に過ごせる日々が来ることを願うものです。
21日は、田辺三菱製薬の不祥事に対する日本製薬工業協会(製薬協)の発表があるために大阪に行きました。神社には、その発表会見の帰り立ち寄っただけに、患者さんたちの願いは、ひときわ胸に刺さりました。
今回の処分のきっかけとなった製品「メドウェイ」は、人血清由来だと生じる未知のウイルスの混入といった危険性を、遺伝子組み換え製剤にすることで回避する狙いで開発されました。研究開発の着手は1981年。血液製剤をよく知る者たちによる積み重ねによる技術の結晶であり、約81年から数えると約30年かけて完成した(承認は08年)世界初の遺伝子組み換えアルブミンです。患者さんに恩恵をもたらすはずでした。
それなのに、承認申請データの改ざんという、治療薬の信頼性の根幹を崩す所業を働いたわけです。絵馬の願い事にあるように、薬を待ち望んでいた患者さんもいたと思います。きっと、30年近くも研究開発に費やした会社の中にも同じ気持ちを抱えている方もいるでしょう。
記者会見では、処分が軽いのではないかと疑問をなげかけました。田辺三菱は、行政処分で製造販売業者としての管理監督責任を厳しく問われたことだけでなく、その製造販売承認制度は業界側が導入を求めた経緯があり、その制度の中で起きた不祥事であることが1つ。そして、一部のデータ不正が行われた時期が薬害肝炎訴訟の和解過程の時期と重なっているといった企業倫理的な側面も考慮されるべき、と考えたからです。
導入経緯や薬害問題は今回の不祥事とは直接関係はありません。しかし、業界団体の処分は、法に基づく行政処分とは違った、企業倫理を含めた製薬企業のあり方という見地からなされてもよいと思うのです。
結果として、業界団体なりの判断は、厳しい方ではなく、軽い方に流れたと感じています。団体内の処分というのは、実質的な社会的影響はそんなに大きくないのかもしれません。とはいえ、この不祥事に対する業界の姿勢を公に示す大事な機会だったと思うのです。今回、身内をかばったとの見方が出ることをおそれます。
そんな思いを抱えて、少彦名神社に足を運び、患者・家族さんの病気の快癒を願う絵馬を見つめました。
今回の不祥事では、不正の舞台が子会社であり、生データまで改ざんされていたことから、親会社である製造販売業として、どう管理監督すべきかという、05年の法施行当時から指摘されていた課題を具体的に突きつけました。製薬協は、処分と併せ、会員に法令順守の徹底を呼びかけました。田辺三菱の前には、加盟団体は違いますが、ジェネリックメーカーの大洋薬品工業の不祥事もあり、ミス隠しもあり悪質でした。
では、法令順守の原点はどこにあるのか。それを踏みにじるということは、どういうことなのか。その答えは、少彦名神社に掲げられていた絵馬の1枚1枚の向こうにいる患者・家族さんの思いにどう応えるのかということにあるのではないでしょうか。どんな気持ちで、病を抱える家人を思い、どれほど病がよくなることを強く願っていることか。薬の果たす役割も大きいと思います。いま一度、絵馬を見つめ、想像をめぐらしてほしいと思います。