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「患者サポートセンター」を地域のハブに昭和大学江東豊洲病院の取り組み  (2/2)

公開日時 2015/11/30 00:00
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地域医療における
大学病院の機能役割

 

佐藤 次に、的場先生に医療マネジメントの観点から今後の大学病院の役割についてお話を伺います。地域包括ケアにおける大学病院の役割・機能について教えてください。

 

的場  地域包括ケアでいうと大学は高度急性期を担当する。一つは「救急医療」、もう一つは「紹介による急性期医療」そして「高度医療」となる。在院日数が短くな るなかで、キャパシティーが許す限りベッドの回転を速くしないといけない。このため地域の連携先の医療機関からどれだけ患者さんを紹介してもらえるかが重 要になる。

 

佐藤 地域連携を含めた大学病院側の戦略とは。

 

的場  外来機能はしっかり地域の開業医との役割分担でやれるかどうかを地道に考えるようにしている。今後は一般の外来をやりながら地域から紹介患者を受けるとい う訳にはいかないだろう。一方、別の視点からみるとオペレーションマネジメントが成否を握ると考える。例えば昭和大学江東豊洲病院の場合、15室の手術室 を設けた。病院規模に対してこの数はどうかということもあったが、手術室が制約条件にならないようにどうするかを考えた。また当院の場合、月曜日から金曜 日だけでなく、土曜日、日曜日の手術も行っている。これも一つのマネジメントだ。ただ、これには医師の勤務体系に課題がある。医師にはしっかり休みを取り ながら働くというマネジメントが必要になる。加えて、医師のシフトをどう組むかも課題だ。主治医制という考え方もあるが、医師の勤務体系を考える上では チーム制をどう考えるかも議論しているところだ。

 

佐藤 こうしたマネジメントに独自のKPIなど設けているのか。

 

的場 医師の働き方を変えて欲しいということにも取り組んでいる。例えば医師が当直明けにちゃんと帰宅しているのかなどを調べたりしている。

 

佐藤 大学病院という特性上、専門性の高い疾患や難病の患者を集めたいということもあるのではないか。こうした活動はしているのか。

 

的場  大学病院であれば、ある程度その側面があるべきだと思う。細分化された医療の最先端であれば、特定の地域を超えて患者を引き受けたりすることもある。大学 病院は二次医療圏の患者を集めるだけでその目的を達成できるかというと難しい。逆に、もっと広く例えば関東圏などから患者を集めることができればそれも可 能だ。ただ、これをどう実現するかについてはもっと考えなくてはならないだろう。

 

佐藤 患者から選ばれる大学病院の医師になるために何をすべきか。

 

的場  患者からの指名というよりは、患者を紹介する医師からの指名を重視する。であれば地域医療を担う診療所の医師への認知度をどう高めるかが重要になる。ま た、特殊な疾患であればあるほど地域の基幹病院のような施設からの紹介を受けることができなければ、目的とする患者を集めることができない。自分の得意領 域だけで診療することは誰にでも出来ることではないが、今後はこれができる医師が大学病院で専門性を追求できる唯一つの道ではないかと思う。仮にだが、 1000床の中で、果たしてこうした専門性の高い患者を受け入れる病床が何床分に相当するのかは分からない。残りは地域医療に特化していくことになるだろ う。

 

佐藤 首都圏・大都市圏の課題についてどうお考えですか。

 

的場  首都圏はまだまだ競争が働くマーケットだ。高齢化もこれからが本番だ。首都圏はいわゆる地方でやってきたことが遅れて適応されるのではないかと見ている。 地方の急性期病院の急性期化をするプロセスの中で、地域連携を作り上げたモデルが、一足遅れで東京に入ってくる。そのなかでより高度な医療を確保していく かが課題だ。

 

佐藤 最後に医療の中でITの役割がどう影響するかをおたずねします。クレイトン・M・クリステンセン著「医療イノベーションの本質―破壊的創造の処方箋」の出版・翻訳に携われた立場で医療のIT化に伴うビジネスモデルはどう進化するでしょうか。

 

的場  著書では3つのビジネスモデルに分類している。一つ目が「ソリューションショップ型」で、これは問題解決型といえる。病院で言うと「診断」の部分に相当す る。一旦診断のついたものを治療のプロセスに乗せて、例えば手術を正確に行い、一定の成果を出していくことが「価値不可プロセス型」といえる。これが2つ 目だ。3つ目の「ネットワーク促進型」というのは場を作ることによって価値を生み出すようなビジネスモデルだ。一般には銀行のように借りたい人と貸す人の ような場を作る。いまの病院は特に前者の2つが混在化している。ITが支えるという点でいえば、ネットワークを促進するなかで、専門家をつなぐネットワー クか患者同士をつなぐネットワークモデルが考えられる。

 

特に慢性疾患の管理は、ネットワークがうまく機能するのだと思う。医師は医学的見地での管理はできるが、一方で服薬のアドヒアランスや生活習慣の改善には、医師以外の職種が求められる。

 

また、難病や大きな手術後の生活については、患者のネット―ワークが大事になる。いままでの患者会は地理的な制約を受けていたが、今後はSNSによりその価値が高まり、行動変容に結び付くだろう。

 

佐藤 いまご説明のあったビジネスモデルは今後の医療ITを考えるうえで非常に参考になると思います。大変貴重なお話をありがとうございました。本日は長時間にわたりありがとうございました。

 


マルチチャネル3.0研究所とは:(MC3.0研究所)
「地 域医療における製薬会社の役割の定義と活動スタイルを定義することを目的にして、製薬企業の新たなる事業モデルを構築し地域社会並びに患者や医師をはじめ とする医療関係者へのタッチポイント増大に向けたMRを中心とするマルチチャネル活用の検討と実践を行う研究機関」である。設立2015年4月主宰 佐藤 正晃

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