アスピリンの経済効果に注目
公開日時 2009/09/02 04:00
アスピリンの経済効果に注目が集まっている。新興国での心疾患患者が増加する中、心疾患の発症予防において、アスピリンの重要性が再認識されてきたためだ。この領域では新規性の高い新薬の開発が相次いでいるが、そのなかにあって、長く標準薬としての地位を確立したアスピリンの経済学的視点が重要となってきた。8月31日、バイエルシエーリングファーマが主催したプレスセミナーで報告された。
(8月31日 スペインバルセロナ発 望月英梨)
全世界で心疾患による死亡者は年間1800万人。全死亡の30.2%を占めており、対策が急務となっている。
心疾患への治療法としては、薬物療法のほか、PCI(経皮的冠動脈形成術)やCABG(冠動脈バイパス手術)がある。ただ、どのような治療方法を選択したか社会的なステイタスに分けて検討したところ、PCIやCABGは貧困層で数%しか行っていないのに対し、抗血小板療法は97%を超えているという。
抗血小板薬のコストを比較すると、アスピリン81mgは0.07米ドル/日で、ジピリダモール(1.17米ドル/日)や、クロピドグレル(4.78米ドル/日)よりも安い。
プレスセミナーで講演したベルギーのL Annemans氏は、低用量のアスピリン投与は、心疾患の発症を10年間遅らせるとされていると説明。心疾患の発症率が1.5%であることを考慮すると、最も費用対効果が良いスペインでは、患者1人当たり797ユーロ。最も費用対効果が低い英国でも201ユーロを節減できるとの解析を示した。
さらに、QOLを加味した生存期間である質調整生存年とコストをみた研究結果も提示。すでに心血管イベントを発症したことがある人に対する再発予防や、2型糖尿病患者の運動を上回る費用対効果があるとした。
Annemans氏は、「経済的負担の観点から、現実的なベネフィットをもたらし、患者の治療成績やQOLを改善する可能性がある」と強調した。