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第2世代の腎細胞がん薬アキシチニブ 「ファイザーが狙うのはセカンドライン」

公開日時 2011/08/01 04:00

今年6月に米シカゴで開催された「ASCO(米国臨床腫瘍学会)2011」では、悪性黒色腫や腎細胞がん、肉腫といった難治がんなどで、分子標的薬などの有望な臨床成績が発表された。このほど、サイニクス社と米ヘルスケアコンサルタント企業Kantar Health共催の「ASCO 2011キーハイライト・セミナー」で来日したKantar Healthのオンコロジースペシャリストのゴードン・ゴコナワ氏(シニア・コンサルタント)が本誌のインタビューで、ASCOでの報告を踏まえ、注目される開発品の臨床試験の結果や上市後のインパクトなどを語った。

アステラスの腎細胞がん薬チボザニブ 「市場でのポテンシャルは大きい」

腎細胞がん(RCC)は患者数が少ないながらも、国内で既に分子標的薬4剤(ネクサバール=バイエル、スーテント=ファイザー、アフィニトール=ノバルティス、トーリセル=ファイザー)が上市され、薬剤が込み合ってきた市場。しかし、大手外資や内資によって、これに続く分子標的薬が開発中で、アキシチニブ(ファイザー)などが効果や安全性の面から臨床現場から期待されている。

同剤はスーテントやネクサバールと同じマルチキナーゼ阻害剤だが、VEGF1、2、3を選択的に阻害する第2世代の分子標的薬といわれる。転移性RCC患者に対するセカンドラインにおけるネクサバールと比較したフェーズ2試験(AXIS1032)では、主要評価項目のPFS(無増悪生存期間)が優れていることが分っている(4.7カ月対6.7カ月)。毒性プロファイルを見ても大きな違いない。

ただし、セカンドラインの標準薬になり得るかどうかについては課題もあるものの、ゴードン氏によると、mTOR阻害剤アフィニトールの臨床試験結果(RECORD-1試験)と比べても、患者背景は異なるものの、PFSはアキシチニブの4.8カ月に対し、アフィニトールは4.9カ月であり、「それほど大きな差は出ていない」という。毒性に関しては、「大きな差は見られないが、日本人ではアフィニトールを投与した患者に間質性肺炎が出るということで懸念している」と解説。

これらを踏まえ、同氏は、アキシチニブ以外に、スーテント、トーリセルを有するファイザーの戦略について、患者の臨床的背景で薬剤の使い分けを進めるのではないかとの考えを提示。予後の良い患者では、ファーストラインでスーテント、セカンドラインでアキシチニブ、サードラインでトーリセル、予後の悪い患者ではファーストラインでトーリセル、セカンドラインでスーテントもしくはアキシチニブという形で、患者の臨床背景によらず、アキシチニブをセカンドラインとして位置付けるような戦略をとる可能性があるとの見方を示した。

アキシチニブ以外にも新規の分子標的薬の開発が進行中で、ゴードン氏はそれらの薬剤の特徴や想定される位置づけについても説明。FGFR/VEGFR阻害剤ドヴィチニブについては開発元のノバルティスが、アフィニトール、スーテントの2剤を投与しても効果が期待できない患者のサードラインとしてのポジショニングを目指すのではないか、との考えを提示。一方、アステラス製薬が米アヴェオ社と開発中のVEGFR阻害剤チボザニブに関しては、外科手術後の予後の良い患者を対象にしたフェーズ2試験で、PFSは14.8カ月という結果が得られている。現在ネクサバールと効果や安全性などを比較するフェーズ3試験が行われているが、同氏は「PFSを改善するような有効性を示すデータが出れば、RCCの市場でポジショニングが可能。国内ではRCCのステージ4の患者の6~7割が手術を受けるので、市場のポテンシャルはかなりある」と解説した。

大きく前進したメラノーマの治療 激化する大手外資による開発競争

メラノーマ(悪性黒色腫)の新薬の展望についても語った。メラノーマの治療をめぐっては、今年のASCOの会長が開催期間中に「今年はメラノーマの年である」と発言したように、今年最も注目されているがんといっても過言ではないだろう。背景には、米国では今年3月に切除不能・転移性メラノーマで全生存期間を初めて延長させた抗CTLA-4抗体YERVOY(一般名:イピリムマブ、BMSが開発)が承認され、大きく治療が大きく前進したことが挙げられる。加えて、第一三共が買収したPlexxikon社と提携先のロシュグループが開発中のベムラフェニブのP3試験結果が今年の米国臨床腫瘍学会で発表され、BRAF遺伝子変異のある転移性メラノーマ患者群で化学療法群と比較して、死亡リスクを63%、有意に低下させた。

ゴードン氏はこれら2つの薬剤が揃って使用可能になった場合のBRAF遺伝子変異のある転移性メラノーマに対する使い分けについて、「ベムラフェニブは約50%という非常に高い奏効率が得られているので、腫瘍が大きく、早い奏効を求める患者には有効。エルボイは奏効率がベムラフェニブよりは低いが、長く持続する特徴があるので、腫瘍サイズは小さく、低悪性度のがん患者に対して有効なのではないか」とコメント。一方、BRAF遺伝子変異のない患者(野生型)に対しては、ファーストラインでエルボイと化学療法を行うことになるのでは、との見方を示した。日本では両剤ともにメラノーマに対しての開発はまだ行われていない。

転移性メラノーマの新薬開発は競合が激しく、BRAF遺伝子変異型の患者をターゲットとした新薬がGSK(フェーズ3)やノバルティス(フェーズ1/2)などにより、複数開発されている。また、BRAF以外をターゲットとするMEK阻害剤の開発が、GSK(フェーズ3)、アストラゼネカ(フェーズ2)が進めているほか、さらに一歩進み、分子標的薬同士の併用療法の開発も活発化している状況。MEK阻害剤とRAF阻害剤の併用療法をGSK、ノバルティスが実施しているほか、ロシュがベムラフェニブとMEK阻害剤の併用療法、さらにはロシュ/中外製薬がRAFとMEKのデュアルインヒビターの開発を進めるなど「BRAF変異のある患者での効果を増幅する効果を狙った新薬」の開発は激戦の様相を呈し始めているという。
 

 

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