エーザイは５月14日、2015年３月期（14年度）決算を発表し、国内の医療用医薬品（先発品）売上は2455億円、前期比13％減だった。抗リウマチ薬ヒュミラ、疼痛薬リリカ、不眠症薬ルネスタは伸長したが、薬価改定やジェネリックの影響で認知症薬アリセプトと消化性潰瘍薬パリエットがそろって20％以上の減収となったことが大きく影響した。国内のジェネリック事業は売上269億円、前期比15％増だった。

アリセプトは14年９月に世界初のレビー小体型認知症の適応を取得。この適応ではジェネリックは使えないことから、アリセプトブランドのリバイバルを目指した。しかし、14年度第３四半期（14年10～12月）のアリセプトの売上は前年同期比23％減、第４四半期（15年１～３月）は同22％減。14年度第１四半期（14年４～６月）は同27％減、第２四半期（７～９月）は同38％減だったため、減収幅は緩和されたが、20％以上の減収と厳しい状況は変わらなかった。

同社は、「レビー小体型認知症の適応を取得しなかったら、もっとアリセプトの売上は下がっていた」とし、リバイバルが成し遂げられなかった理由として、レビー小体型認知症の認知向上や診断方法の普及に時間がかかっていることを挙げた。

レビー小体型認知症は、認知症全体の約２割とされ、潜在患者数は約13万人。パーキンソン病と同じような症状を示すパーキンソニズムや幻覚が認知症の症状よりも先にみられることから、レビー小体型認知症と気づかずに別の疾患として診断・治療されるケースが少なくないという。同社は15年度により一層、疾患啓発と診断方法の普及活動を行うことで、レビー小体型認知症の患者掘り起こしを行い、アリセプトの価値最大化を図る。

■がん領域の情報提供厚く

グローバル製品のひとつに位置づけている乳がん治療薬ハラヴェンは、日本で15年度に売上100億円（14年度売上61億円）を目指す。同社では現在、がん担当ＭＲ約130人だけでなく、がん以外の全ての製品を担当するＭＲ1200人弱のうち約630人もハラヴェンの情報提供活動を行っているという。社内では「デュエット体制」と呼称している。この約760人のＭＲは今後、ハラヴェンのほか、甲状腺がん治療薬レンビマ（５月20日薬価収載予定、即発売予定）の情報活動も行う。レンビマは同社初の経口抗がん剤で、院外処方も想定される。同体制を敷いた背景には、適正使用の徹底に向け、保険薬局への情報提供を強化するねらいもありそうだ。

また、がん領域の新薬は、医師自ら最新情報を収集し、投与してみる傾向にあることから、がん領域の学術情報サポートの一環としてメディカルサイエンスリエゾンを増員したことも明らかにした。

なお、連結業績は、国内業績の不振と、米国でのパリエット（米国製品名アシフェックス）の特許満了の影響が大きく、売上5485億円（前期比９％減）、営業利益283億円（57％減）だった。15年度はグローバル製品のハラヴェン、レンビマ、抗てんかん薬ファイコンパ、肥満症薬ベルヴィークの拡大、日本事業の成長確保などで増収増益を目指す。

【14年度連結業績（前年同期比）、15年度予想（前年同期比）】
売上高　5484億6500万円（8.5％減）　5565億円（1.5％増）
営業利益　283億3800万円（57.3％減）　460億円（62.3％増）
税引前利益　258億7500万円（58.5％減）　428億円（65.4％増）
純利益　434億5300万円（12.9％増）　270億円（37.9％減）

【14年度グローバル主要製品売上（前年同期実績）　15年度予想、億円】
アリセプト　657（827）610
パリエット　560（914）465
ハラヴェン　353（288）470
ファイコンパ　43（21）100

【14年度国内主要品売上（前年同期実績）　15年度予想、億円】
アリセプト　469（650）420
パリエット 　371（473）330
ヒュミラ 　299（288）340
メチコバール　224（252）210
リリカ 　215（194）非開示
ワーファリン　86（97）80
アクトネル 　67（77）65
ハラヴェン 　61（64）100
セルベックス 　47（67）40
ルネスタ　45（29）85
ジェネリック　269（234）300
※リリカは共同販促収入