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中医協 22年度薬価制度改革で調整幅が議論の俎上に カギ握る医薬品卸機能の評価

公開日時 2021/05/13 04:53
中医協総会は5月12日、製薬業界の意見陳述を行い、2022年度薬価制度改革の議論が始まった。毎年薬価改定の導入で医薬品流通への影響が懸念されるなかで、安定供給の重要性が高まっている。この日の中医協総会では、安定供給を維持する医薬品卸機能の適切な評価の観点から、“調整幅”に議論が及んだ。日本医薬品卸売業連合会(卸連)の折本健次理事は、「2000年以降、調整幅の理解がないままにここまで来た。再度、薬価制度における調整幅、流通経費の負担の明確化をお願いしたい。調整幅を引上げてほしいというよりも、医薬品卸の流通経費についても引き続き、医療機関、メーカー、卸が議論すべきものであろうと認識している」と述べた。

◎新型コロナワクチンの配送や自主回収で追加コストが負担に

「医薬品卸が果たしている役割や機能について適正な評価を行い、医薬品を安全かつ安定的に流通させるためのコストについて、どのようなルールで負担すべきなのかを検討し、今後の医薬品流通、ひいては医薬品の安定供給に支障が生じないようにしていただきたい」―。卸連の渡辺秀一会長(メディパルホールディングス)はこう訴えた。医薬品卸の機能としては、①医薬品の安全確保と安定供給、②国家安全保障上の有事の際の供給、③社会維持のための医薬品の需給調整―をあげた。新型コロナワクチンの配送や、後発品などの自主回収や欠品に伴う対応などに、多額の追加コストが発生していることなども説明した。

「薬価が下がっても医薬品の安定供給は確保されることが当然のようになっているが、足元ではその前提が崩れかけている」と危機感を露わにした。背景には、21年度から毎年薬価改定が導入され、医薬品卸の業績を直撃していることがある。

◎カテゴリーチェンジの影響大きく 仕切価上昇で最終原価が上昇

医薬品卸には、後発品の使用浸透が進む一方で、希少疾患治療薬など高額医薬品が増える、カテゴリーチェンジの影響が重くのしかかる。高額医薬品は超低温や振動制限など保管条件が厳しい製品も多く、医薬品卸にとっては品質管理のコストはむしろ増加している。流通コストを変えることが難しいなかで、「全般的に卸のコスト増が吸収できる十分な営業利益かどうか」と卸連の折本理事は投げかけた。さらに、薬価毎年改定が導入されるなかで、今後の営業利益率の低下の厳しさも口にした。

◎卸連・折本理事「薬価調査、薬価制度、未妥結減算制度の在り方を見直す時期」

実際、各社の決算も厳しい状況だと見通し、「仕切価上昇、それに伴うリベート、アローアンスから仕切価に置き換えるというなかで、結果的に最終原価が上昇した。医薬品卸そのものの公正な競争が激化した」ことが影響したと説明した。そのうえで、調整幅について議論する必要性に言及。「調整幅は、誰のものと言ったことは数値でも表されていない。いわゆる薬剤の流通の安定化のための最小限の流通経費、調整経費、率であると認識している」との見解を示した。そのうえで調整幅を含めた流通経費の議論必要性を強調した。全国の医療機関や薬局で価格にバラつきがあることも指摘。「これら全体を含めての価格交渉、薬価調査、薬価制度の在り方、未妥結減算制度の在り方を見直す時期ではないか」との見解も示した。

支払側の安藤伸樹(全国健康保険協会理事長)は、「いままでの医薬品と異なる流通が増えることについて、調整幅も考える必要はあるが、製薬業界にその点をどう考えているのか」と質問。これに対し、日本製薬団体連合会(日薬連)の手代木功会長は、「市場取引の実態について検証が必要だろうと思っている」と述べた。

◎毎年薬価改定で支払側・幸野委員「市場重視の薬価制度では当然」


日本製薬団体連合会(日薬連)など日米欧3団体はこの日の意見陳述で「特許期間中の新薬については適正な薬価水準が維持されるべき」と主張した。中間年改定については、21年度改定の延長ではなく、「薬価制度抜本改革にて示された、価格乖離の大きな品目について薬価改定を行う、という趣旨に立ち戻り、イノベーションの推進や医薬品の安定供給への影響も十分に考慮した検討が必要」と強調した。

支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、国内の医療用医薬品市場が2015年以降フラットであることに対し、「プライスとクオンティティ―が価格と販売量がうまくコントロールされている。非常に良い傾向ではないか」との見解を示した。

そのうえで、2018年度以降、薬価改定が実施されるたびに8%前後の乖離率が出ることを指摘。日本の薬価制度が市場実勢価格主義であることに触れながら、「取引の中でそういうメカニズムが生まれている。市場を重視するのであれば毎年薬価改定をやるべきではないか」と述べた。さらに、「市場価格で公定価格と市場実勢価格に差がなければ、調整幅のなかであれば維持される。調整幅を超えて、7%、8%の乖離があるため、薬価をそれに合わせて見直さねばらないとなっている。なぜ乖離が出ているのか」と疑問を投げかけた。そのうえで、「毎年薬価改定は乖離が生まれるから見直すということで、市場を重視する日本の薬価制度であれば当然だ」と述べた。

◎診療側・松本委員 安定確保医薬品の薬価議論を牽制「時期尚早」


このほか、医療上必要不可欠であって、汎用され、安定確保が求められる医薬品として選定された「安定確保医薬品」について製薬業界側は、「従来以上の安定供給体制の整備が求められるのであれば、薬価を維持・下支えするための措置の充実」を求めた。これに対し、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、価格下落には製薬企業や医薬品卸の責任もあると指摘。「安定確保医薬品という価格での議論は時期尚早。今まで通りに不採算再算定や基礎的医薬品の適用を検討していただきたい」と述べる一幕もあった。
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