アステラス製薬は10月29日、2022年３月期（21年度）通期の予想連結営業利益を90億円下方修正し、2180億円（前年同期比60.2％増）とすると発表した。通期の予想売上高やコア営業利益は据え置く。抗がん剤候補のゾルベツキシマブの膵臓腺がんの開発計画を見直したことに伴って、Ganymed社の買収時に計上した条件付対価の公正価値が増加したため。同社は、開発の成功確率の上昇、もしくは開発の前倒しなど、ポジティブな要因であると強調した。

◎安川社長　21年度第２四半期決算「成長トレンドに戻ってきている」　

2021年度第２四半期の売上高は前年同期比5.9％増の6516億6600万円。主力品の前立腺がん治療薬イクスタンジをはじめ、ゾスパタ、パドセブ、エベレンゾなど、重点戦略品が好調。消炎・鎮痛剤セレコックスや高コレステロール血症治療剤リピトールの販売契約終了、前立腺がん治療剤エリガードの製品譲渡などによる売上の減少で、259億円の減収があったものの、これを吸収。計画通りの進捗となった。安川健司代表取締役社長CEOは、「20年度までの減収傾向から脱して成長トレンドに戻ってきている」と強調。「21年度通期として増収増益を達成できるよう、引き続き経営計画で掲げた目標に対して推進していきたい」と述べた。

◎ゾルベツキシマブの条件付対価で公正価値変動額87億円を計上

同社は、21年度通期として、抗Claudin18.2モノクローナル抗体ゾルベツキシマブは条件付対価について、公正価値変動額を「その他の費用」として87億円を計上した。同社が独・Ganymed社を2016年に買収した際を買収した際に、株主に対して開発の進捗に応じて対価を支払う契約を結んでいたため。これに伴って、21年度通期での営業利益、当期利益を90億円引き下げた。

安川社長は、「過去においては期初に立てた予算が保守的で第二四半期で通期予想を上昇修正することが当たり前になってきた。数年をかけて見直してきた結果、今期は意欲的な目標を立てた。経営計画2021の達成に向けた初年度として意欲的に設定した期初予想に対して、目標の達成を目指していく」と意欲を見せた。

このほか、X連鎖性ミオチュブラーミオパチー患者を対象に開発が進められている遺伝子治療薬「AT132（resamirigene bilparvovec）」については、病理所見による追加の患者データを元にしたフォローアップ分析を12月まで実施予定だと説明。追加患者データの分析結果と専門家からの助言および科学的調査に基づき、規制当局との協議を2022年初めに開始する予定とした。

【21年度第２四半期連結業績 （前年同期比）　通期予想（前年同期比）】　
売上高　6516億6600万円（5.9％増）　１兆3230億円（5.9％増）
営業利益　901億6900万円（3.8％増）　2180億円（60.2％増）
親会社帰属純利益716億900万円（1.7％減）　1740億円（44.3％増）

【21年度第２四半期のグローバル主要製品売上（前年同期実績）　通期予想、億円】
イクスタンジ　2676（2255） 5541
ゾスパタ 165（110）354
パドセブ　91（60） 207
エベレンゾ　14（3）72
ベタニス/ミラベトリック/ベットミガ　844（800） 1763
ベシケア　128（162） 189
プログラフ　923（896）1857
エリガード　―（61） ―

【21年度第２四半期の国内主要製品売上（前年同期実績）　通期予想、億円】
グローバル品
イクスタンジ　236（199）471
ゾスパタ　21（18） 44
エベレンゾ　13（3）41
ベタニス　187（166） 367
ベシケア　65（94） 76
プログラフ（グラセプター含む）　197（211） 382
ハルナール　13（16） 24
ファンガード　9（29） 15

国内主要製品
スーグラファミリー　154（138） 305
うち、スージャヌ　63（55） 非開示
レパーサ　29（24） 非開示
リンゼス　35（31） 70
ビーリンサイト　29（22） 非開示
イベニティ　145（127） 非開示
スマイラフ　12（6）31
セレコックス　－（142） 非開示
ジェニナック　13（11） 31
ワクチン　20（28） 52
ゴナックス　26（29）　50
シムジア　56（50）　非開示
リピトール　－（55）　非開示
マイスリー　36（40）　69
＊仕切価ベース