中外製薬の岸田雅司バビースモライフサイクルリーダーは６月24日の説明会で、同社として初の眼科領域参入となったバビースモ硝子体内注射液について、「より高度な価値提供に向けた社内体制を現在構築しているところだ」と説明した。22年7月から営業体制を再編し、スペシャリティMRを配置する予定。また、抗体医薬品の豊富な販売経験を活かし、スペシャリティMRに加え、眼科領域専門 MRも配置して、バビースモの情報提供活動を展開することを明らかにした。同社の安全性情報提供を専門的に担うセイフティエキスパートを通じ、医療関係者のニーズに合わせた安全性情報の提供も実施できる体制を整える。

◎投与期間延長で患者負担の軽減も　東京女子医・飯田教授「費用増はメリット含めて解説」

バビースモは3月28日、「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性（nAMD）」、「糖尿病黄斑浮腫（DME）」の適応で製造販売承認を取得。5月25日の薬価収載と同時に発売された。同剤は、既存治療薬が標的とするVEGF-A（血管内皮増殖因子A）に加え、Ang- 2（アンジオポエチン-2）を同時に標的とするバイスペシフィック抗体。同日講演した東京女子医科大学眼科教授・基幹分野長の飯田知弘氏は、「新規作用機序による治療効果により、既存薬で効果不十分だった患者の治療オプションになってくることを期待している」と述べた。

特に、同剤は維持期では通常、16週ごとの投与が可能となることから、飯田教授は、「投与間隔の延長により、患者の治療に伴う通院の負担や、患者が高齢の場合など、ご家族が一緒に来られることが多く、付き添いの負担軽減も期待できる」との考えを示した。投与対象については、「まずは新規の患者から投与されると思う」との考えも表明。導入期では１回当たりの薬価が既存薬よりも高額になるが、「投与間隔を延ばせることが期待できることを説明した上で、長い目で見た時の経済的負担も理解してもらい、処方している。VEGF-AとAng- 2を同時に阻害できる効果も説明して、最終的にどちらの薬剤を使かうか決定している」と解説した。

また、既存薬からの切り替え時の対応については、「従来薬で効果が不十分な患者に対しても新しいオプションとして使用を開始しているが、従来薬で効果が出ていないわけなので、薬剤を替えることには、患者も十分納得され、希望されていることになる。今までよりもこのぐらい今日の治療費は余分にかかりますということを説明した上で、その負担を承知の上で使わせてもらっている」と述べた。

◎副作用　眼内炎症は0.7％も「実際の臨床で今後注意深く見ていく必要がある」

nAMD適応の承認は、主に国際共同第３相臨床試験「TENAYA」、海外第３相臨床試験「LUCERNE」の結果に基づく。いずれも未治療の患者を対象とし、両試験とも有効性の主要評価項目においてアフリベルセプト群に対する非劣性を示した。安全性については、両試験の統合解析において、試験眼における眼内炎症の副作用は、バビースモの 8 週-16週間隔投与群で1.4％（10例）、アフリベルセプト8週間隔投与群で1.1％（8例）だった。

一方、DME適応の承認は、主に国際共同第３相YOSEMITE 試験および海外第３相RHINE 試験の結果に基づいている。いずれも未治療および既治療の患者を対象とし、両試験とも主要評価項目においてアフリベルセプト群に対する非劣性を示した。

安全性については、両試験の統合解析において、試験における眼内炎症の副作用は、バビースモ群全体で0.7％（9例）、アフリベルセプト8週間隔投与群で0.3％（2例）だった。同剤は、添付文書上で眼障害が重大な副作用にあげられ、医薬品リスク管理計画書（RMP）でも、眼内炎症が重要な特定されたリスクにあげられている。飯田教授は「眼内炎症という危惧しなくてはいけない副作用は数的には少なかった。実際の臨床でどうなるかを今後注意深く見ていく必要があると思う」との考えを示した。