「ＭＲ」によるディテールインパクトは、新型コロナの５類移行後も病院市場、開業医市場ともほとんど変化がないことがわかった。新型コロナ５類移行後にMRが医師と会える機会が増加し、MR活動のリアル回帰も指摘されるところ。ただ、５類移行から１か月経過した６月の、ＭＲのディテールインパクト（DTL数）は、病院市場がコロナ前の63％、開業医市場は87％にとどまり、コロナ前の水準には戻っていなかった。MRのDTL数はこの１年間、病院市場でコロナ前の60％前後、開業医市場は85％前後で推移しており、大きな変化はみられなかった。

一方で、「インターネット」や「Web講演会」といったデジタルを含むチャネル合計のDTL数は、病院市場で５月、６月と２か月連続でコロナ前の水準を超えた。コロナ禍による訪問規制の強化や製薬企業側の訪問自粛もあって、特に病院勤務医のデジタルチャネルの使用が急速に浸透した。３年間のコロナ禍を経て、医師がデジタルを用いて医薬情報を収集する行動は完全に定着したともいえそうだ。

ミクス編集部は、アフターコロナの情報活動とそのインパクトを探るため、“医師の印象に残ったチャネル別の企業活動”を把握するインテージヘルスケアの調査データ「Impact Track」を用いて分析した。調査データは、医師約4000人（ＨＰ〈20床以上〉約2500人、ＧＰ〈19床以下〉約1500人）を対象に、印象に残った製品とその情報源（ＭＲ、講演会、インターネット、Web講演会）を集計し、拡大推計している。例えばＭＲからの情報が印象に残った場合、ＭＲチャネルで１DTLとして積み上げ、拡大推計する。なお、ＭＲチャネルはオンライン面談も含み、ネットは自社サイトや外部の医師向けサイトなどが含まれている。

◎６月の病院市場　「ネット」は189％　「Web講演会」は272％　「リアル講演会」も回復

コロナ前の20年１月（以下、「コロナ前」）のDTL数を100％として、各月のDTL数の増減率を見てみる。５類移行後のチャネル合計のDTL数は、病院市場は５月104％、６月101％で、２か月連続でコロナ前の水準を超えた。開業医市場は両月とも94％だった。

６月のチャネル別のDTL数は、病院市場では「ＭＲ」が63％、「ネット」が189％、「Web講演会」が272％、「講演会（リアル）」103％だった。「ＭＲ」、「ネット」、「Web講演会」それぞれのDTL数はこの１年間、月によって増減はあるもののほぼ安定して推移。「講演会（リアル）」は６月にコロナ前と同水準となったが、これは20年２月の116％以来となる。チャネル全体に占める「講演会（リアル）」のDTL数の割合は約２％と小さいものの、５類移行がきっかけとなって企画され、病院勤務医の印象にも残るイベントとなったようだ。

◎６月の開業医市場　「ＭＲ」は87％　「ネット」は115％　「Web講演会」は127％

６月の開業医市場のチャネル別DTL数は、「ＭＲ」が87％、「ネット」が115％、「Web講演会」が127％、「講演会（リアル）」が30％だった。印象に残ったDTL数を積み上げる本調査における「ＭＲ」のDTL数は１月83％、２月81％、３月88％、４月82％、５月84％、６月87％と推移している。直近３か月は右肩上がりにも見えるが、コロナ禍の３年間に90％台の月も複数あった。現時点では、５類移行が必ずしもＭＲインパクトの増加につながっているとはいえなさそうだ。

文末の「関連ファイル」に全市場、病院市場、開業医市場について、情報チャネル別の印象に残ったDTL数の月次推移の資料を掲載しました（会員のみダウンロードできます。無料トライアルはこちら）。なお、ミクス８月号（８月１日発売予定）では、22年11月～23年１月の「第８波」のチャネル別DTL数なども詳報します。