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HOKUSAI-VTE  第Ⅹa因子阻害薬・エドキサバンがVTEの再発抑制でワルファリンへの非劣性示す

公開日時 2013/09/03 13:30

第Ⅹa因子阻害薬・エドキサバンが症候性静脈血栓塞栓症(VTE)患者の再発予防効果において、低分量未分画ヘパリン/ワルファリンの併用に対し、非劣性を示したことが分かった。日本人209例を含む同剤の臨床第3相試験「HOKUSAI-VTE」の結果から分かった。8月31日からオランダ・アムステルダムで開催した欧州心臓病学会(ESC)2013で、同試験グループを代表して、オランダのHarry Buller氏が9月1日の「Hot Line I: Late Breaking Trials on Thrombosis 」で報告した。Harry Buller氏


試験は、症候性VTEと診断された深部静脈血栓症(DVT)、肺塞栓症(PE)患者を対象に、低用量未分画ヘパリン静注後のエドキサバン投与によるVTE再発抑制効果が、標準療法である未分画ヘパリン/ワルファリンの併用に対し、非劣性を示すことを検証する目的で、ランダム化、二重盲検下で実施された。


患者は、オープランラベルでエノキサパリンもしくは未分画ヘパリンを最低5日間投与された後、エドキサバン群、ワルファリン群に割り付けられた。エドキサバン群では、未分画ヘパリンの投与中止後、エドキサバン60mg/日を経口投与した。ただし、中等度腎機能低下例(CrCl:30~50mL/min)、60kg未満の低体重、p-糖タンパク質阻害薬の併用患者では、低用量の30mgを投与した。一方、ワルファリン群では未分画ヘパリンの投与を継続した上で、ワルファリンの用量調整を行った。


登録期間は、2010年1月~12年10月までで、37カ国、439施設から8292例が登録された。エドキサバン群4118例、ワルファリン群4122例に分け、治療成績を比較した。なお、日本は、29施設から209例が登録された。主要有効性評価項目は、症候性VTE(DVT+非致死性PE+致死性PE)の再発率、主要性安全性項目は、On-tratment(実際に治療を受けた患者群)の投与終了後3日以内の大出血+臨床上重大な出血の発生率とした。ワルファリン群の12か月時点の主要評価項目発生率は3%と推定し、非劣性マージンをハザード比1.5と設定した。観察期間は、治療期間によらず12か月間。


患者背景は、年齢がエドキサバン群56歳、ワルファリン群56歳、男性が57%(2360例)、57%(2356例)、DVTが60%(2468例)、60%(2453例)、PEが40%(1650例)、40%(1669例)だった。危険因子は、unprovoked (外傷や入院、手術に関連しない)がエドキサバン群66%(2713例)、ワルファリン群65%(2697例)、がん9%(378例)、10%(393例)、VTEの既往が19%(784例)、18%(736例)だった。低用量投与例はエドキサバン群18%(733例)、ワルファリン群17%(719例)だった。



◎出血で優越性のマージン満たす 重篤なPE患者への効果も示唆


主要評価項目の発生率は、エドキサバン群3.2%(130例)、ワルファリン群3.5%(146例)で、ハザード比(HR)は0.89(95%CI:0.70-1.13)で、非劣性のマージンを満たした(非劣性:p<0.001)。DVT患者では、エドキサバン群3.4%(83例)、ワルファリン群3.3%(81例)、PE患者では、エドキサバン群2.8%(47例)、ワルファリン群3.9%(65例)で、DVT、PEによらず一貫した結果を示した(DVTのHR:1.02、95%CI:0.75-1.38、PEのHR:0.73、95%CI:0.50-1.06)。実際に治療を受けた期間での主要評価項目の発生率を検討したところ、エドキサバン群1.6%(66例)、ワルファリン群1.9%(80例)で、同様に非劣性のマージンを満たした(非劣性:p<0.001)。


バイオマーカーのProBNP値から右室機能不全とされた、重篤なPEを対象にしたサブグループ解析では、主要評価項目の発生率はエドキサバン群3.3%(15例/454例)、ワルファリン群6.2%(30例/485例)で、エドキサバン群で48%のリスク低下が認められた(HR:0.52、95%CI:0.28-0.98)。


一方、安全性については、大出血+臨床上重大な出血がエドキサバン群8.5%(349例)、ワルファリン群10.3%(423例)で、エドキサバン群で低率で、優越性のマージンを満たした(HR:0.81、95%CI:0.71-0.94、優越性:p=0.004)。内訳は、大出血がエドキサバン群1.4%(56例)、ワルファリン群1.6%(66例)だった(HR:0.84、95%CI:0.59-1.21、優越性:p=0.35)。このうち、致死性大出血はエドキサバン群2例(<0.1%)、ワルファリン群10例(0.2%)だった。

頭蓋内出血については、大出血はエドキサバン群0例(0%)、ワルファリン群6例(0.1%)、非致死性はエドキサバン群5例(0.1%)に対し、ワルファリン群12例(0.3%)で、エドキサバン群で低率の傾向がみられた。
BULLER氏は、低用量未分画ヘパリン静注後のエドキサバン投与は、「VTEの再発予防効果について、標準療法に対する非劣性を示した」と述べ、「VTE全患者にとって魅力的な治療戦略だ」と有用性を強調した。


◎Konstantinides氏「安全性の高さ、投与しやすさを評価」 Stavros V Konstantinides氏


Discussantで登壇したStavros V Konstantinides氏は、新規抗凝固薬としてダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンの3剤でVTEをめぐる臨床試験が実施されてきたと説明。同試験の特徴として、観察期間は12か月間と定められているものの、その中で治療期間を医師が柔軟に選択でき、実臨床に近いこと、バイオマーカーであるProBNP値を用いて、重篤なPE患者の治療効果を検討した初めての試験であること、などを挙げた。
その上で、リバーロキサバンやアピキサバンなど他の新規抗凝固薬に比べても、最も安全性が高いと評価した。また、同剤が1日1回投与で用量調整の必要がないことから、臨床現場でも投与しやすいと評価した。
ディスカッションでは、ワルファリン群だけ未分画ヘパリンを併用しており、出血の発生率への影響を示唆する声も聞かれた。これに対し、Buller氏は、ワルファリンは効果発現までに5~10日間の時間が必要である一方で、エドキサバンは投与直後から効果を発現するため、試験デザインとしてこのような形を選択したと説明した。なお、同試験の結果は、同日付の「THE NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE」に掲載された。


◎第一三共 2013年度中に日米欧の承認申請目指す


同剤の開発を進める第一三共は、同試験の結果に基づき、日米欧において、2013年度中に承認申請する予定。心房細動に伴う血栓塞栓症の予防の適応症取得を目的としたENGAGE AF-TIMI 48の試験結果も、11月に開催される米国心臓協会学術集会(AHA)2013で発表されることも明らかにしている。

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