小林化工のイトラコナゾールに睡眠薬が混入し、自主回収（クラスⅠ）に至った問題で、半数の薬局が代替品の調達に苦労していたことがわかった。日本保険薬局協会（NPhA）が１月28日、調査結果を公表した。「患者から先発品へ戻したいという申し出が増えた」という回答も複数あがったという。NPhA医療制度検討委員会の石井僚氏（アインホールディングス）は同日の会見で、「後発品使用促進からの逆行が懸念される。患者一人ひとりに適した後発品の選択に貢献できるよう、薬剤師・薬局の責務として、より一層、丁寧な対応を行い、信頼回復に努める」との見解を表明。患者に医薬品についての説明責任を果たす、薬剤師・薬局の職能・職責に言及した。

調査は、イトラコナゾール錠50「MEEK」に睡眠薬が混入し、該当ロット（T0EG08）について、自主回収（クラスⅠ）に至った際に、薬局薬剤師が果たした職責を調べることなどを目的に実施した。調査はウエブで行った。回答期間は2021年１月８日から20日まで。回答は163薬局から得た。回収の該当ロットにかかわらず、イトラコナゾール錠 50 「MEEK」を服用・所持している可能性のある患者は131人だった。

◎全薬局が発表翌日までに第一報を入手　翌日中に８割の患者に伝達

該当ロットを交付した患者がいたのは13薬局で、18人の患者だった。同社は回収を2020年12月４日（金）の夕方に発表したが、当日中に第一報を得たのは９薬局、翌５日（土）に知ったのは３薬局だった。発表前の３日に情報を得た薬局も１薬局あった。情報を得た先は、「社内連絡」（51.5％）、「メディア（メディナビ、新聞、業界紙など）」（40.5％）、「Meiji Seikaファルマの担当者、もしくはHP（35.6％）」などが次いだ。

該当ロットを持つ患者のうち、連絡・説明を発表翌日の５日中に完了したのは14人だった。該当ロットを交付した患者のいたすべての薬局が翌日までに第一報を入手し、さらにその翌日までに約８割の患者に連絡、説明を完了していたことになり、薬局の迅速な対応がうかがえる結果となった。

◎患者の体調変化は医療機関と情報共有

患者の体調変化などを聞いたところ、「体調変化なし」（６人）との回答もあったが、「意識障害」（５人）、「傾眠・眠気」（５人）、「頭部ふらつき感」（３人）などの体調変化もみられた。こうした情報共有を「医療機関（処方医、薬剤師、看護師）」（15人）、「患者の家族にも情報共有」（11人）、「体調変化の聞き取りに対して受診勧奨」（2人）、「介護施設に情報共有」（1人）など、広く情報共有をしていたこともわかった。

代替品に交換した患者は11人。先発品への交換はなく、すべてが他のジェネリックメーカーの製品に交換した。交換方法は、「患者が来局」（５人）、「患者宅へ訪問」（５人）、「郵送」（1人）だった。一方で、中止や処方変更などで代替薬に交換しなかったのは６人だった。

◎「メーカーからの説明が２転、３転」、「情報が小出し」など苦言も

薬局が苦労したことを聞いたところ、トップは「代替品の調達」で53.4％、「患者やその家族への連絡、説明」（46.0％）、「本件の対応における情報収集」（33.7％）などとなった。代替品については、「代替品が出荷調整で手に入らない」との指摘も。「事態は収束しておらず、その影響が心配されている状況」と指摘した。また、「患者から先発品へ戻したいという申し出があった」、「小林化工のジェネリックは嫌という申し出があった」などの声もあった。

メーカーの説明について、「メーカーからの説明が２転、３転した」、「メーカーからの情報が小出しであり、必要な情報の開示に時間がかかった」、「情報が錯綜し、一部情報の違いに困った」、「小林化工製品かどうかの精査、情報把握が困難であった」との苦言も。小林化工はイトラコナゾールについて、該当ロット以外も自主回収（クラスⅡ）を行うことになったが、該当ロット以外の対応についての情報が錯そうしたという。

◎不測の事態には「多方面から患者に対応するための情報提供を」 　NPhA・石井氏

NPhA医療制度検討委員会の石井氏は、「不測の事態のときに、薬局がほしいのは患者に対応するための情報だ」と強調。薬局や日本薬剤師会、NPhAなどの団体も含めて複数のアプローチを求め、「重複しても良いので、色々な方向から薬局に情報を届けてほしい。薬局が第一報を早く知ることが、不測の事態のときに大事だと改めて思った」と述べた。

なお、イトラコナゾール錠以外の小林化工の医薬品の採用をしていた薬局は85％（139薬局）、同社の採用品目が「10品目以上」との回答も47％あった。