日本CSO協会は５月31日、「わが国のCSO事業に関する実態調査－2021年度」を発表した。2021年10月時点の稼働コントラクトＭＲ数は前年比４％増の3424人。アウトソーシング率（全ＭＲに占める比率）は前年比0.6ポイント増の6.4％で過去最高となった。新薬上市時や適応追加時の需要に応えたほか、特例承認のスキームにより極めて速く承認・実用化された新型コロナに係る治療薬やワクチンの情報提供・収集活動の需要増が、稼働コントラクトＭＲが増加した理由のひとつになった。CSO活用企業数は過去最多の138社（前年比12社増）。製薬企業に留まらず、バイオベンチャーや医療機器を含む小規模企業に加え、医療機関での活用も広がった。

調査は、同協会加盟５社を対象に、CSO事業の動向、CSO企業およびコントラクトＭＲの状況を調べた。調査期間は21年10月～22年１月で、21年10月１日時点の状況を聞いた。

◎「ワクチン」での活用　前年比231％増

コントラクトＭＲ（ＭＲ以外の人材含む）の活用領域のトップ３は、「循環器・脂質異常症」（コントラクトＭＲ等全体に占める割合は43.4％）、「糖尿病」（29.0％）、「中枢神経」（28.1％）――で、これまでの傾向と変わらなかった。「がん」（21.1％）などのスペシャリティ領域での活用も堅調だった。

今回は「ワクチン」（10.5％）での活用が前年比231.5％増と大きく伸びた。この伸び率は、他の領域よりも群を抜いて大きく、多くが新型コロナワクチンに係る活動となる。「医療機器」（5.7％）での活用割合は全体の５％程度と小さいものの、伸び率は前年比8.4％増となり、「ワクチン」に次ぐ２番目の伸びをみせた。

◎コントラクトＭＲの領域経験　７領域以上経験が過半数　５領域以上は７割弱

CSOサービスの深化・拡大に伴い、同協会加盟社には多領域経験者やスペシャリティ領域経験者が多いことも確認された。顧客各社の新薬をはじめとする主力領域を中心に７領域以上の経験者が53％と過半数を占め、５領域以上は７割近くにのぼった。「このCSOならではの中立性と幅広い経験は、コントラクトＭＲにおける患者中心の全人的な情報活動の基盤になっている」としている。

また、製品のスペシャリティシフトを背景に、スペシャリティ領域経験者も多く、例えば中枢神経領域経験者は４割強、がん領域経験者は３割弱いることが確認された。

◎CSO活用目的　市販後調査や流通強化の伸び大きく

CSO活用目的のトップ３は、「主力品強化」（64.9％）、「欠員補充」（63.3％）、「新薬上市」（29.9％）――で、「新薬上市」での活用は前年比73％増と大きく伸びた。次いで、「エリア強化（未開拓先）」（13.8％）、「産休対応」（11.1％）、「市販後調査」（11.0％）となった。このうち「市販後調査」での活用は前年比約2.7倍で、新型コロナの治療薬やワクチンに係る安全性情報の収集活動も多く含まれるとみられる。伸び率では「流通強化」（5.0％）での活用が前年比約17倍と最も高かった。

◎地域包括ケアの推進、医療機関の経営支援の職種としても活躍

コントラクトＭＲ以外にも、エリアでの戦略展開や顧客MRのスキル強化を担う「フィールドマーケター/トレーナー」のほか、「MSL」や企業看護師として患者ケア等を支援する「エデュケーショナル・ナース」、地域包括ケアシステムの推進や医療機関の経営を支援する職種など、新たな担い手によるサービスも広がりをみせていた。

◎木﨑新会長　「アウトソーシング率10％超目指す」

同協会はこの日、役員改選に伴う22年度～23年度の新体制を発表した。新会長に選出された木﨑弘氏（シミック・アッシュフィールド社長執行役員）は、コロナ禍を契機に不確実性への対応が重要性を増し、様々なニューノーマルが加速しているなか、CSOの役割の深化・拡大とともにフレキシブルリソースとしての戦略的活用をより一層推進して、「欧米同様のアウトソーシング率10％超を目指す」と表明した。

◎CSOは医薬品・ヘルスケア業界の変革実行パートナーに

木﨑新会長は、「CSOサービスの質と幅を進化させることで、顧客のビジネス・トランスフォーメーション、生産性向上に寄与する」とも述べた。

日本のCSOの近未来の姿として、▽“質を備えたフレキシブルリソース”としてROI最適化に貢献、▽様々なイニシアチブの“チェンジエージェント”として、新しいコマーシャルモデルへの変革を加速、▽製薬・ヘルスケア業界の“人財ポートフォリオ機能”として、人材の流動化・最適化、多様なキャリア・働き方を促進――を挙げた。その上で、「これらは我々が果たさないといけない役割であり、今後ニーズがより高まると理解している」とし、「我々は顧客ニーズの高度化・多様化に対応するソリューションを提供し、医薬品・ヘルスケア業界の『変革実行』パートナーとして、患者中心の医療の実現に貢献する」と抱負を語った。