アストラゼネカ（ＡＺ）は４月13日の会見で、ＭＲが日々の営業活動に利用するＥＶ車の導入割合が2022年末までに46％（850台/1854台）に達したと明らかにした。今年４月からは降雪地帯で４WDのＥＶ車導入について実地検証を行う予定も説明した。同社は、「2025年までにグローバル規模での自社事業で、温室効果ガス排出量ゼロ」、「2030年までにバリューチェーン全体でカーボンネガティブ」を宣言しており、脱酸素社会に向けた取り組みを進めている。

◎再生可能電力への移行は100％を達成

ＡＺ日本法人では、22年に15年比で温室効果ガス排出削減割合が64％（グローバル59％）、再生可能電力への移行割合100％（同・91％）を達成した。営業車におけるEVの導入割合は4割を超え、5割に近づきつつあるほか、営業車におけるグリーンフリート（EV、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車）の割合は95％（1761台/1854台）と高まっている。雪国以外の34県には１台以上のEV車をすでに導入しており、全国幅広く導入しているという。

◎44％の市町村で急速充電が未整備「社員の皆さんは働き方を変えながら取り組んでいる」

一方で、課題もある。吉越悦史CFOは、「車両自体の調達は非常に大きい問題。高価で、なかなか営業車両として対応できるモデルがEV車としてそれほどない。４WDは決まった量を購入できるモデルは今日時点ではない。こうした中で、試行錯誤しながら進めている」と説明した。

さらに、ガソリンスタンドに当たるＥＶ車の充電インフラが全国に約4000基しかなく、846市区町村（44％）で急速充電が未設置となっている。さらに充電に時間を要すことから、「社員の皆さんにも少し働き方を変えながら工夫しながら日々取り組んでもらっているというのが実情だ」と話した。吉越CFOは、「こういった問題に果敢に取り組むために、他の企業やインフラ企業にも声をかけて、一緒に前に進んでいこうとしている。1800台が100%電気自動車になってもおそらく地球に与える影響はほとんどない。ただ、我々が一歩前に進むことで、充電インフラが少しでも進めば、1800台が1万台になって10万台になって、色々な企業が一緒に進んでくれればという思いで日々取り組んでいる」と語った。

◎４ＷＤのＥＶ車　降雪地帯で8人のＭＲによるパイロットプロジェクトを実施

今年４月からは、降雪地帯でパイロットプロジェクトを実施することも紹介。４WDのEV車を調達し、雪地で８人のMRによる検証を実施する予定とした。吉越CFOは、一般的に４WDのEV車の降雪地帯での使用について、低温でのバッテリー性能の低下や、暖房使用による消費電力の増加などが指摘されていると説明。実際にＭＲに活用してもらうことで、課題解決策を探る姿勢を示した。

◎堀井社長「人と社会と地球の健康に対して貢献する企業」としてイノベーション起こす

堀井貴史代表取締役社長は、「問題意識に向かって、弊社の社員は理解したうえで、果敢にチャレンジをしてくれている。おそらく医薬品業界に限らず、日本でこれだけの車をすでに100%EVに切り替えている会社はなかなかないのではないか。最初に飛び込んでチャレンジしていることを本当に誇り誇らしく思っている」と述べた。

利便性などの課題もあるが、「利便性を見た場合に、全員がハッピーという状況かと言えば、そんなことはないと思う。一方で、我々は人と社会と地球の健康に対して貢献する企業だということで、一緒にやっている。ここでもイノベーションが必要だ。色々なパートナーの方々と話をしているので、必ず少しずつ解決していけるのではないか」との見解を表明した。

「需要家（電気などの供給を必要とし、使用している者）、我々一人ひとりがモノを購入する側の人間として、どういった意思決定をしていくかが大事になってくる。そこを最初にパイオニアとして乗り越えることで、最終的には皆が健康でいられるよう努力していく」と述べた。インフラ整備を含めた課題解決は、「1社だけでは解決できない」と強調。産業界に加え、関係省庁との対話にも意欲をみせた。

従業員を含めた啓発の必要性も強調し、社内で勉強会なども開催しているとして、「我々の子供、皆さんの子供、もしくはお孫さん、こういった方々に本当に住みよい日本地球を残せるのか、大きな課題として捉えた上で、一歩一歩行動していくっていうことが求められていると思う」と訴えた。