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製薬協・上野新会長 創薬力強化が最重要課題 「エコシステムが回るミッシングピース見つける」

公開日時 2023/05/26 04:55
日本製薬工業協会の新会長に就任した上野裕明会長(田辺三菱製代表取締役)は5月25日、会見に臨み、創薬力強化に向けて、「創薬エコシステムがうまく回るための“ミッシングピース”を見つけていきたい」と意欲をみせた。上野会長は日本の創薬力低下に危機感を露わにし、「我々が力をつけ、日本の創薬力を強くすることが最重要課題だ」と強調した。もう一つの柱として、特許期間中の薬価維持など、イノベーションの適切な評価実現の必要性も強調した。これらの国の施策について、「単発的」であったとも指摘し、「継続性を持って、それぞれの取り組みが連動することが重要」との考えも強調した。

◎好循環の仕組み実現で「国民の健康寿命の延伸と日本の経済の発展に貢献」

「日本の創薬力強化とイノベーションと適切な評価、これが好循環する仕組みを実現して、国民の健康寿命の延伸と日本の経済の発展に貢献する。こういったことを実現すべく、製薬協の会長会社として邁進したい」-。上野会長は“イノベーションが躍動する国”をこう描いた。好循環の実現により、日本発の新薬が世界に届き、世界中の人々の健康に貢献するとともに、そこから得られる収益で日本経済の成長や担税力強化につながる姿だ。世界中のイノベーションや人、投資を呼び込むというものだ。

こうした姿の実現に向けて、上野会長が重視するのが、「日本の創薬力強化」と「イノベーションの適切な評価」だ。

◎エコシステム構築のミッシングピース カギは「ヒトの介在」

上野会長は、日本発の新薬の創製が鈍化していることに強烈な危機感を示す。新薬のモダリティは低分子から抗体医薬・核酸医薬などシフトしてきた。これにより、創薬スタイルも変化する。かつての個社完結のビジネスモデルは通用せず、開発早期から複数のプレーヤーと連携する「創薬エコシステム」を日本にも根付かせる必要性が指摘されてきた。米・シリコンバレーなどでは大きな成功を収めているが、日本ではまだ成果が十分とは言い難い状況だ。

上野会長は、創薬エコシステム構築に向けては、①創薬基盤技術の実用化、②スタートアップの持続的起業と育成、③新規モダリティ製造力の強化、④データ利活用の基盤整備-をポイントにあげたうえで、「私はそれだけで十分だとは言えないと思う。やはり、創薬エコシステムが本当にうまく回るためには何か別のものが必要ではないか」との考えを表明。「これまでエコシステムが、なかなか成果につながらないのは、一つはそれぞれがつながっていないということだ。すなわち、ミッシングピースが何かあるということ」と続け、「ミッシングピースが何か、見つけていくことが重要だと思う」と強調した。

そのうえで、重要なピースとして“ヒトの介在”をあげた。単なるスキルという意味ではなく、「本当にエコシステムがうまく回るためには何が必要かということを考えられる人、あるいはそれをリードしていくという強い気概を持った人、そういった人の介在だと思う。我々企業の中から選抜して必要なエコシステムを回すために、人を置くということを我々はもっと積極的に考えていかなければならない」との考えを示した。

◎特許期間中の薬価維持で「革新的新薬が生まれるスピードが増す」

もう一つの柱に据えたのが“イノベーションの適切な評価”だ。上野会長は、2016年度以降の薬価制度改革について、「毎年のように薬価制度が変わり、しかもそれらのほとんどが、薬価が下がる方の改定であり、そしてそれが突然行われる。こういった状況が続いている。これはとりもなおさず、中長期的な戦略を立てて経営をしなければならない、我々製薬企業を経営する立場にとって非常に予見性のない制度になっている。このままこの状況が続けば、やはり我々の経営は非常に厳しい状況になるのではないか」と危機感を示した。

そのうえで、「イノベーションを適切に評価する制度を早急に導入すべき」と強調した。特許期間中の革新的新薬を市場実勢価格による改定の対象から除外することなどを訴えた。

現行の薬価制度では、上市後の利益は比較的緩やかで、特許期間満了後も価格が緩やかに下がる。この結果、投資回収期間が長引き、次の再投資へのタイミングも遅れていると指摘。「新薬について特許期間中の薬価を維持されることが実現できれば、特許期間満了までになるべく早く投資を回収し、そこで得られた収益を次の投資に再投資する、そのサイクルが早くできる。その結果、革新的新薬が生まれるスピードが増す。このようなことが期待できると考えている」と説明。「革新的新薬をスピーディーに患者さんに届ける、そういったことが可能になることはないか」と強調した。

◎“仕組みづくり”に注力 「継続性を持って、それぞれの取り組みが連動することが重要」

これまでの製薬協の提言でも創薬力強化を謳い、国も様々な施策を打ってきたが、まだこの姿が実現しているとは言い難い状況にある。上野会長は、「これまでも日本の創薬力強化に向けた取り組み、あるいはイノベーションが評価される制度があった。しかし、それは単発的で、それぞれがなかなかつながっていなかった」と指摘。イノベーションが躍動するために、“仕組みづくり”という言葉を用いて表現し、「継続性を持って、それぞれの取り組みが連動することが重要だ。こういったものを意識して、それぞれの取り組みを考えていきたい」と求めた。

上野会長は、「ミッシングピースが何か見つける、そこをまずやっていきたい。これだけの施策があるなかで、何が足りないから成功しないのか、いまその議論が高まっている。そこを見つけて手を打っていくっていうところが、まず私自身が今取り組みたいところだ」と語った。
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