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有識者検討会が報告書 少量多品目生産の構造的課題解消へ 業界再編を視野 生産能力強化を

公開日時 2023/06/07 05:54
厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」が6月6日に取りまとめた報告書案では、医薬品の安定供給をめぐり、「少量多品目生産が行われるといった後発品産業の構造的課題が存在している」と指摘した。構造的課題の解消に向け、「業界再編も視野に入れつつ、品目数の適正化や、適正規模への生産能力の強化を進めることが必要」と提言した。薬価のあり方や、製造ライン増設への支援策の検討などについて、「政府において、ロードマップを策定した上で、期限を設けて集中的な取り組みを行うべき」とも提言した。厚労省では、今後方策を具体化するための会議体を新設し、議論をさらに深める方針。

後発品を中心とした出荷停止の状態が続き、医薬品の供給不安が顕在化している状況にある。報告書案では、供給不安の背景に、「小規模で生産能力も限定的な企業」が多く、少量多品目生産が行われる構造的課題があると指摘。少量多品目生産であるため、「常に製造キャパシティの限界に近い稼働状況であるため、緊急増産等の柔軟な対応は困難である」ことが、供給不安が長引く一因であるとした。

このほか、少量多品目生産のビジネスモデルについては、「事前準備や洗浄等の公定が増加することによる製造工程の複雑化に伴う製造の非効率性」に加え、管理業務の増大によるリソース不足、品質不良のリスク増大などの“デメリット”があると説明。こうしたリスクに対して、必要な人員配置や教育研修などが十分に整備されていなかった企業において、「製造管理や品質管理の不備による法令違反や品質不良の発生が、供給問題の原因の一つになった」とも指摘した。

◎上市段階で安定供給を担保する要件を

医薬品の安定供給に向け、「少量多品目生産といった構造的課題を解消し、企業における品目ごとの生産能力を高める観点から、業界再編も視野に入れつつ、品目数の適正化や、適正規模への生産能力の強化を進めることが必要」と提言した。

具体的には、共同開発の導入で、「必ずしも十分な製造能力を確保できない多くの企業が新規品目を上市し、激しい価格競争による薬価引下げや、先発品の特許切れに伴う更なる品目の増加を招いてきた」とした。そのうえで、上市に際し、十分な製造能力を確保していることや、継続的な供給計画を有すなど、安定供給を担保する一定の要件をハードルとする考えを盛り込んだ。要件を満たさない企業は結果として市場参入できなくなる仕組みを検討すべきと提案した。

企業の安定供給などについての企業情報(製造能力、生産計画、生産実績等)を可視化したうえで、これらの情報を踏まえた薬価のあり方を検討すべきとした。あわせて、他産業の取り組みも参考に、「品目数の適正化に併せた製造ラインの増設等への支援や税制上の優遇措置を検討するなど、政府において、ロードマップを策定した上で、期限を設けて集中的な取組を行うべき」と提言した。

◎最低薬価など「運用の改善を検討」も「医療保険財政のバランスから優先順位検討を」

医療上必要性が高い品目を下支えする最低薬価、不採算品再算定、基礎的医薬品などの制度については「運用の改善を検討」することを盛り込んだ。中長期的には、「採算性を維持するための新たな仕組みの検討を進めるべき」とも提言した。ただし、「企業努力を促す観点や医療保険財政のバランスを確保する観点から、他の制度改善等との優先順位を考慮すべき」とも指摘した。

◎流通改善GL改訂も「医療上必要性の高い医薬品は別枠に」 最低薬価品目も調整弁に

医薬品流通をめぐっては、「過度な薬価差の偏在」を指摘した。医薬分業の進展に伴って、取引主体が医療機関から薬局にシフト。チェーン薬局や価格代行業者がバイイングパワーを強める中で、ベンチマークを用いた価格交渉が常態化。一部医療機関・薬局では経営原資を得ることを目的として、医薬品の価値にかかわりなく、前回改定時と同様、スライドを求めるような総価交渉が横行しているとした。競合品目の多い後発品や長期収載品は総価取引の調整弁として用いられる傾向が多いと説明。安定確保医薬品の中にも高い乖離率を示す品目があり、最低薬価品目については、「乖離率にかかわらず改定前薬価まで薬価が戻るという仕組みがあるため、総価取引の調整に使われている要因になっている可能性がある」ことも指摘した。

そのうえで、「製薬企業、医薬品卸売販売業者、医療機関等をはじめとした流通関係者全員が、流通改善ガイドラインを遵守し、医薬品特有の取引慣行や過度な薬価差、薬価差の偏在の是正を図り、適切な流通取引が行われる環境を整備していくべき」と提言。医療上必要性の高い医薬品については、従来の取引と別枠とするなど、「流通改善に関する懇談会(流改懇)等で検討の上、流通改善ガイドラインを改訂して対処していくことが必要」とした。

また、「購入主体別やカテゴリー別に大きく異なる取引価格の状況や、過度な値引き要求等の詳細を調査した上で、海外でクローバックや公定マージンが導入されていることも踏まえ、流通の改善など、過度な薬価差の偏在の是正に向けた方策を検討すべき」として、引き続き検討する姿勢を示した。

調整幅についても、全国グループ店舗の本部一括交渉で「配送コスト」が考慮されていない取引もあると指摘。流通コストの状況などを踏まえて、「どのような対応を取り得るか検討」とした。



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