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厚労省薬事検討会 小児用医薬品の開発促進「成人と同時に開発計画策定」提案 インセンティブめぐり紛糾

公開日時 2023/07/11 06:14
厚労省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課は7月10日、「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」に、小児用医薬品の開発促進に向けて成人と同時に小児用の開発計画策定を促す仕組みの導入などを提案した。業界代表の柏谷祐司構成員(日本製薬工業協会薬事委員会委員長)は、「インセンティブを明確にしないと、企業として何がどこまでできるのかというのは明確にできない。これだけ認めることは厳しい」と反対の姿勢を示した。最終的に、中医協での議論などを検討会に適宜報告することで決着した。

◎小児用医薬品のインセンティブは「別途検討」と提案

小児用医薬品の開発については、特定用途医薬品指定制度などで促してきた。遅くとも成人効能が承認されるまでの間にPMDAと開発計画に合意し、遅くとも成人の承認取得後2年以内に治験届を提出した場合に、成人を含めた再審査期間の延長を認めるという優遇措置が設けられている。欧米では小児用医薬品の開発計画策定が法律で義務化されているが、日本では義務化はされていない状況にある。国内でも小児用医薬品開発の義務化を求める声があがっているが、すでに義務化されている欧米でも適用を含めて企業と審査当局で多くの折衝が行われており、小児剤形について同時開発は必ずしも達成できていない、との意見もある。

厚労省医薬審査管理課は、新有効成分、新効能の医薬品については、成人用の開発時に企業判断で小児用の開発計画を策定し、PMDAが確認する仕組みを設けることを提案した。義務化までは求めない。適応症については、がんなどで小児と成人で異なることも想定し、分子標的または作用機序に共通性があれば対象となるとの考えも示した。一方で、企業による開発計画策定を促すインセンティブについては「別途検討」とした。

◎“インセンティブ”めぐり業界側構成員が強く主張「企業として何をどこまでできるかはっきりしない」

これに対し、柏谷構成員は、「企業側としては、インセンティブの部分、保険財政や再審査期間の延長、治験環境の改善等々、こういうインセンティブが全て入っていると思うが、この辺のところを明確にしていただかなければ、企業としても何をどこまでできるのか、はっきりしない。検討に先立って、どういうインセンティブを考えておられるのかお示しいただきたい」と訴えた。

事務局側は、「インセンティブの検討は必要と認識している。一方で、薬価などであればこの会議体での議論はなかなか難しいところもあるし、インセンティブといっても一つなのか、複数の組み合わせなのか、どれが最も有効性が高いのか、インセンティブを設けるための財源は確保できるのか、など色々現実的なところの議論も必要だと思っている。インセンティブの議論は引き続き事務局の方で検討をさせていただきたい」と理解を求めた。

◎清田座長の「反対ということか」の問いかけに粕谷構成員「はい」と回答

これに対し、柏谷構成員は、「やはりインセンティブのところを明確にしないと企業として何がどこまでできるのかというのは明確にできない。いま提案されている内容だけを突っ走ることなく、インセンティブの話が並行して走るべきだと思っているので、これだけを認めるということは厳しい」と述べた。清田浩座長(井口腎泌尿器科・内科 新小岩 副院長)の「反対ということか」との問いかけにも「はい」と回答。「PMDAが確認する仕組みを設けてはというところもやっぱりインセンティブを発揮してからここのところは制度化というか明確にしたらどうかと思っている」と述べた。

事務局側は、「医薬・生活衛生局では判断しきれない部分もある。薬価の議論であれば、別の会議体でやっていただく必要もある。そこが決まらない限り、薬事の今日示した部分もご了解いただけないということであれば決定は後ろの方にずれてしまう、場合によってはインセンティブの議論がどうなるかによって導入が難しい、というそういう結論もあるのかなと思う」と述べ、構成員に意見を求めた。

◎宮川構成員「子どもたちを救う大義として考えていただければ」と理解求める 

宮川政昭構成員(日本医師会常任理事)は、「インセンティブという言葉の中に、子供たちを救わなければいけない、そこには使命感としてのことがなければいけない。インセンティブをかければいいのか、なければできないのかと言ったら、それはおかしい話だ。国はもちろんインセンティブを重要に考えていただきたいが、企業は社会貢献を考えなければならない。そういうことを考えないと、この検討会は非常に薄っぺらいのものになってしまう。子どもをいかに救うのか。皆さんの知恵の中でやっていかなければならない。ぜひそこはしっかり大義として考えていただければありがたい」と呼びかけた。

柏谷構成員は、「もちろん、企業としてもそう思っている」と応じたが、インセンティブについては一歩も譲らず。

◎中医協などからの適宜報告受け、並行して議論することで決着

中井清人医薬品審査管理課長は、「インセンティブを同時並行で検討することは、やぶさかではないので、もちろん検討したいとは思ってはいる。ただ、どうしても範疇じゃないものがあるということが事実としてある」と理解を求めたが、最終的に中医協をはじめとした議論を検討会に適宜報告し、並行して議論をすることで決着した。

このほか、厚労省は、小児の治験はコストがかかることから、小児の治験実施の要否に関する考え方を整理し、明確化する方向性も示した。国際的に用いられているモデル&シミュレーション(M&S)の活用や、海外データ、文献情報等により有効性・安全性が説明できる場合を整理し、明確化する考え。PMDAに小児用医薬品に特化した相談枠を新設して対応することも提案した。

また、小児用剤形が開発されても対象患者が少ないため、医療機関や薬局が採用しないケースがあり、利用が進まないとの指摘があることを踏まえ、地域において中心的に小児剤形に対応する薬局を設置することなども提案された。専門機関連携薬局を念頭に、がんに加え、小児の区分を追加することなどを提案した。



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