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費用対効果評価制度改革へ 価格調整・減算の「対象範囲拡大」で診療・支払各側が一致 中医協

公開日時 2023/07/13 04:50
中医協費用対効果評価専門部会は7月12日、費用対効果評価専門組織の意見書について議論し、診療・支払各側が大筋で了承した。専門組織は、現行制度では価格調整は当該品目の有用性加算などの範囲で行われているが、「価格調整の対象範囲のあり方」について問題意識を表明。診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「価格調整、減算の対象範囲は有用性加算等だけでなく、適用される加算の範囲をもっと拡大すべき」と表明。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)も、「加算部分に限らず、より広い範囲を調整の対象とすべき」と述べ、診療・支払各側ともに対象範囲拡大に向けた検討を求めた。今後は、業界ヒアリングを踏まえて、次期制度改革に向けて議論が進められる方針。

◎現行制度では開示度、加算で対象範囲異なる

費用対効果評価専門組織はこの日の中医協に意見書を提出した。今後の制度改革に向けて焦点となりそうなのが、「価格調整の対象範囲のあり方」だ。現行制度では、費用対効果評価についての評価や価格調整には、全体の費用を比較して効果の評価を行っているが、価格調整の際には有用性加算などの範囲で実施しており、「現状では、評価時点における分析対象と価格調整として反映する対象の範囲が異なることとなっている」と指摘。「諸外国の事例も参考にしながら、価格調整の対象範囲のあり方について検討する必要があるのではないか」と問題提起した。

現行制度では、「開示度が低く、加算のある品目」では「加算部分+営業利益」、「開示度が低く、加算のない品目では「営業利益」、「開示度が高く、加算のある品目」では「加算部分」が価格調整の対象となる。開示度が高く、加算のない品目は費用対効果評価の対象外となる。

◎診療側・長島委員「減算適用の加算範囲拡大を」 支払側・松本委員「加算部分に限らず、より広い範囲を」

診療側の長島委員は、「そもそも費用対効果評価制度が導入されたのは、革新的であるものの非常に高額な医薬品や医療機器が登場したことで、我が国の医療保険財政への影響が懸念されたことから、保険収載後の価格調整を適切に行うためであると理解している」と指摘。「価格調整の対象範囲は、本来の制度趣旨に沿って、価格調整、減算の対象範囲は有用性加算等だけでなく、適用される加算の範囲をもっと拡大すべき」と主張した。

支払側の松本委員は、この論点について「特に重要」としたうえで、「費用対効果評価の積極的な活用の観点から、加算部分に限らず、より広い範囲を調整の対象とすべき」と表明した。「将来的には保険償還の可否の判断に用いることを含めて、活用の幅を広げていくことも検討すべき課題」としたうえで、保険償還の可否に用いないのであれば、「費用対効果が同等になるよう価格調整することも必要だろう」との見解を示した。

診療側の池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)は、「開示度がますます低くなってしまうという逆のバイアスがかかってしまう可能性もあるので、この辺を慎重に考えるべき」と指摘した。

◎「予見性」求める支払側に診療側・長島委員「もう予見性は十分担保されている」と釘

議論では、“市場の予見性”をめぐり、診療・支払側で応酬する場面もあった。支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、「現状の費用対効果評価の仕組みだが、市場の予見性を阻害する一因にもなっているとの業界からの報告も上がっている。その結果として、ドラッグラグ、ドラッグロスにつながっていることも考えられる。今後の議論は市場の予見性を阻害しないような仕組みの構築も議論をしていただきたい」と述べた。

これに対し、診療側の長島委員は、「費用対効果評価は、どういう結果であればどれぐらい下がるということで極めて予見性は高い。一方で、実際に研究してみなければどこに該当するかわからないというのは当然のこと。これがやる前にわかっていたら困る。もう予見性は十分に担保されている」と釘を刺した。

◎介護費用取り扱いに診療・支払各側が慎重論

論点の一つにあげられた介護費用の取り扱いについては、「具体的な事例が少なく参考となる情報は限定的」として、「我が国の介護データベースの使用実績も少なく、データ蓄積期間も短いことから、引き続き研究を行う 必要があるのではないか」との意見も出した。「介護費用の取り扱いを含めた社会的価値については、現在承認時のデータで医薬品そのものの価値を見ており、具体的事例、データもないことから、慎重に検討していく必要がある」(診療側・森昌平委員、日本薬剤師会副会長)「研究を今後進めていただきたいと思うが、次回の制度改革で導入する状況ということになると、少し早めではないか」(支払側・松本委員、健康保険組合連合会理事)など、診療・支払各側から慎重論があがった。

このほか、診療側の長島委員は、「現行制度の課題を一言で言えば、分析に時間がかかっており、コストパフォーマンスが低いということに集約されると思っている」と指摘。「保険収載後の価格調整を適切に迅速に行うという制度の目的を実現するために、単なる費用対効果評価の学問的追求のためではなく、関係者にとって負担が減るように、できるだけ効率化、合理化を目指すという視点から検討されるべき」、「今後具体化する際には、学問的な正確性を目指して精緻化するよりも、事例を集積しつつ、判定の定型化、迅速化を図り、実用性を高めることを目指すべき」との考えも示した。

◎比較対照技術にBSCも「最も妥当性のある評価結果を採用できる方策の検討」

この日、費用対効果評価専門組織が提出した意見書では、費用対効果評価の分析方法として、比較対照技術に、積極的な治療を行わずに症状緩和のみを行う治療(Best supportive care(BSC)等)も含め、最も妥当性のある評価結果を採用できる方策の検討や、データ不足など分析できない場合の取り扱いを明確化することを提案。一度評価が終了した品目でも、市場拡大や新たな科学的知見などで評価基準に該当する可能性がある場合は対象品目として指定されるが、具体的な選定手順を明確化する必要性も指摘した。このほか、分析体制の充実の必要性にも触れた。



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