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厚労省 後発品の安定供給、企業指標の評価、24年度薬価改定で試行導入へ 品質担保を求める声も

公開日時 2023/10/30 06:00
厚生労働省は10月27日の中医協薬価専門部会に、後発品の安定供給をめぐり、企業指標に基づいた薬価上の評価を24年度薬価改定で試行導入することを提案した。他社が出荷停止や出荷制限となった医薬品の追加供給の実績や実勢価による乖離の状況などの企業指標に基づき、3区分にわけ、薬価上評価する考え。診療・支払各側からは、企業指標を薬価に反映することに異論は出なかったものの、制度の導入による安定供給への影響を懸念する声や、安定供給の前提となる“品質”をいかに担保するかなど、懸念の声があがった。厚労省は、こうした懸念を踏まえて制度設計に向けてさらなる検討を進める方針。

◎企業指標により3区分 収載時、改定時薬価、薬価下支えルールへの反映を提案

厚労省はこの日の中医協に、各企業の評価結果に基づく企業区分を、「一般的な取り組み状況の企業」を基本に、一定水準超の取り組みを行っている評価の高い企業、水準を下回る評価の低い企業の3区分にわけ、薬価上も評価することを提案した。

具体的には、評価の高い企業では、収載時の薬価を高くするほか、改定時には現在の3価格帯とは別に価格を定める。一方で、評価の低い企業では収載時の薬価を低くし、改定時の薬価も最も低い価格帯に集約することを提案した。また、薬価を下支えするルール(基礎的医薬品、最低薬価、不採算品再算定)にも評価を反映することも提案。評価の高い企業では基礎的医薬品は薬効分類によらず対象とし、最低薬価も他の品目とは異なる薬価を定める。一方で、評価の低い企業には基礎的医薬品の対象から除外、最低薬価を適用しないことなどを提案した。

◎企業指標は「他社の出荷停止・制限への増産実績」、「実勢価の乖離状況」など

安定供給に向けた企業行動を促すためにも、「適用可能なものはできる限り速やかに評価することが望ましい」として、現時点で評価可能な項目を対象に試行的に薬価上で評価する考えを示した。

具体的には、「他社が出荷停止又は出荷量の制限を行った医薬品に対する自社品目の追加供給の実施」、「他社の長期収載品のうちG1区分の品目の市場撤退に伴う製造販売承認の承継、又は自社品目の追加」といった、“供給不安解消のための企業努力”を評価する項目や、安定確保医薬品の品目数や、出荷停止・出荷制限など“安定供給実態”を評価する項目に加え、薬価調査で把握可能な「実勢価の乖離の状況」などもあげた。「企業自らが赤字構造を生み出すような価格設定をしているかどうかを評価」する考えだ。

さらに、企業側の準備が必要になることから公表するまでの時間がかかることから、「後発品の安定供給に関連する情報の公表など」、「後発品の安定供給のための予備対応力の確保」の指標は、24年度薬価制度改革での評価を見送る方針。ただ、将来的には、今回評価する「製造販売する後発品の供給実績」、「薬価の乖離状況」と合わせて評価するとした。試行導入の結果を踏まえて検討を進め、評価の妥当性を今後検証する考えも示した。

◎診療側・長島委員 安定供給自体のプラス評価は「賛同しかねる」も社会貢献は「検討に値する」

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「製造販売業者として薬機法のもとで許可を取得した以上、いずれの企業も上市する医薬品を安定供給することは当然の責務ではないか。今回の供給不安が起きたのは、企業の不正が原因であったことも考慮すれば、安定供給できていること自体をそのまま薬価制度でプラスに評価するのは賛同しかねる」と述べた。

そのうえで、「後発品の市場に特有の供給不安解消のための企業努力、例えば他社が供給できない品目に対して、自社品目を追加供給するなど社会貢献などの企業指標については、薬価制度において活用することも検討に値すると考える。ただし、指標で評価された企業について、その全ての品目を直ちに一律に評価してしまうということでは、納得が得られないと思う」と続けた。また、「品質確保」を評価する重要性を指摘し、「例えば、自主回収に至った頻度や、品質改善に向けた取り組み等も企業指標に加えることについても検討が必要ではないか」と述べた。

診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「余剰製造能力、メーカー在庫の確保など企業の供給能力、自社理由による出荷停止、出荷量の制限、他社への自社品目の供給実績等は特に重要となるもので、評価上の重点事項となるような仕組みとすべき」と指摘した。一方で、医薬品の安定供給についての情報公開は「企業として当然すべき取り組みと思われるので、そのような項目をどのように評価していくかは具体的な考え方を示していただく必要がある」として、重みづけの重要性を指摘した。

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「指標は、全てが揃って初めてバランスを取ると評価になると考えている。現時点で把握可能な指標だけで薬価制度上の取り扱いに差をつけることで、偏った評価なのではないかという懸念がある」と指摘。「評価の目的は、品質が確保された後発品を安定供給できる企業の可視化であり、その大前提となる品質をどのように担保できるのか、これについてはいささか疑問を持っている。一旦シミュレーションしてみて、過去に不正を起こした企業が高い評価になるようなことであれば、指標そのものを改めて検討していただきたい」と述べた。

支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)も、「供給不安を改善するための解決には、品質が確保された上での安定供給が欠かせない。それが市場で正しく評価されることにより、結果的にその企業が優位になることで価値が上がっていく、顧客からも認められる、ということにつながるスタートポイントを作っていただきたい」と述べた。

◎安定供給への影響を懸念する声あがる

制度の導入による安定供給への影響を懸念する声もあがった。診療側の森委員は、「安定供給に支障をきたさないよう、十分配慮しつつ試行的に実施すべき。評価の低い企業であっても、大きく不利になるような対応は、安定供給に支障が生じて現場が混乱する可能性もあるので、取るべきではない」と指摘。薬価の下支え措置を適用しない形での活用については、「供給問題を悪化させる懸念があるので、慎重に考えるべき」として、「後発品の収載時、改定時に活用するのが良いと思うが、どれくらいの影響があるかシミュレーションが必要だ」と述べた。

支払側の松本委員は、「安定供給の不安が解消される見通しが立たないなかで、24年度改定から薬価に差をつけることにより、かえって安定供給の問題が悪化する懸念もある。試行的導入であっても試行が終わったら薬価を戻すということにはならないと思うので、慎重に判断をいただきたい」と述べた。

◎支払側・松本委員「これまで不正が続くと業界の体質に疑問を持たざるを得ない」

安定供給をめぐり、流通を含めた産業構造の課題を指摘する声も診療・支払各側からあがった。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「ここまで不祥事が続くと、産業構造というよりも、業界の体質に関して疑問を持たざるを得ない。薬価制度上の課題がないとまでは申し上げないが、仮に薬価が低すぎて、製造管理や品質管理に影響しているということであれば、まずは適正な価格で取引すべき。23年度改定の特例措置のように、値引き販売をして薬価を上乗せするということを繰り返すべきではない」と述べた。また、日医工や沢井製薬など大手で不正が相次いだことから、「大規模化を進めることで、これが安定供給に繋がるとは到底考えにくい状況にある。健保組合からも、後発品の使用を患者に進めて良いものかという悩みの声が届いている。行政には指導力を発揮していただき、業界として早急に国民の信頼を回復していただきたい」と注文を付けた。診療側の森委員も、「安定供給については、流通改善もセットで議論すべき」と指摘した。

◎石牟禮専門委員「法令違反企業の分まで追加対応する企業に評価を」

石牟禮武志専門委員(塩野義製薬渉外部長)は、「品質を確保したうえでの安定供給は当然のことではあるが、法令違反等があった企業の分まで追加対応している企業があることもまた事実だ。そういったことについても評価いただけるような仕組みになれば」と述べた。
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