【MixOnline】パンくずリスト
【MixOnline】記事詳細

財務省主計局 診療所の初・再診料引下げで「診療報酬本体はマイナス改定を」 処遇改善への対応は可能

公開日時 2023/11/02 04:53
財務省主計局は11月1日の財政制度等審議会財政制度分科会に、2024年度診療報酬改定について、「診療所の報酬単価を引下げること等により、現場従事者の処遇改善等の課題に対応しつつ診療報酬本体をマイナス改定とすることが妥当」と提案した。財務省が独自に実施した機動的調査から、経常利益率が20年度の3.0%から22年度には8.8%に急増していることが明らかになったとして、診療所の収益は「極めて良好」と分析した。現場従事者の処遇改善などの措置を行ったとしても、診療報酬全体の約2割を占める診療所の報酬を引下げることで、マイナス改定は可能だと主張している。このほか、リフィル処方箋をめぐっては、医療費適正効果が十分得られていないとして、「処方箋料の時限的引下げなど、その分を差し引く調整措置を講じる必要」を指摘した。

◎病院・診療所・調剤の区分ごとにメリハリつけた改定で保険料の上昇最大限抑制を

この日の分科会で財務省主計局は、岸田首相の所信表明演説を引き合いに、診療所・病院・調剤の区分ごとに経営状況などが異なることから、“メリハリをつけた”トリプル改定を実施する必要性を主張した。

これにより、医療・介護保険料の上昇を最大限抑制し、子育て世帯等現役世代の手取り所得を確保する必要性を強調する。24年度の概算要求における社会保障関係費の“自然増”要求のうち、医療分は医療費ベースで8800億円(国費ベースで2200億円)の増額要求となる。仮に改定率をゼロとした場合でも、保険料4400億円程度増加することが見込まれると説明。さらに、診療報酬・介護報酬の1%の引き上げにより、保険料負担は約3000億円増加するとして、保険料を上昇させないために、どれだけ診療報酬に切り込めるかを論点として強調した。

◎初・再診料中心に引き下げを 財務省・機動的調査 診療所の経常利益は8.8%と高水準

特に、診療所については、「極めて良好な経営状況」として、「診療所の報酬単価を引下げること等により、現場従事者の処遇改善等の課題に対応しつつ診療報酬本体をマイナス改定とすることが妥当」と提案した。具体的には、初診料・再診料を中心とした報酬単価の引下げが必要との認識を示した。

財務省は、財務局を活用した機動的調査を始めて実施した。38都道府県、1万8207法人の直近3年間の医療法人の事業報告書を収集したところ、20年度から22年度にかけて収益が12%増加する一方で、費用は6.5%の増加にとどまり、経常利益率は3.0%から8.8%へと急増していることが明らかになったとした。なお、中小企業における全産業、サービス産業ともに平均経常利益率は3%台で、経常利益率自体も高い水準にあると指摘した。

◎“診療所のストック” 看護師など現場従事者の賃上げ約14年分に相当 税制活用ベースに考えるべき

賃上げに議論の焦点が当たる中で、「高齢化等に伴う事業者の収益増等(全体として年+2~3%)が処遇改善(現場の従事者の賃上げ等)につながる構造の構築」の必要性を強調した。医療機関にとって“ストック”に当たる利益剰余金については機動的調査によると、2年間で18%(1900万円)増加しており、これは看護師など現場従事者の3%の賃上げに必要な費用(140万円/年)の約14年分に相当するとして、“ストック”の活用で十分賃上げが可能だと指摘した。

さらに、賃上げに活用した場合、最大4割を法人税額から控除する「賃上げ促進税制」が年末の税制改革で強化が検討されていることを踏まえ、医療法人は黒字であることから税制の活用を基本に考えるべきと主張した。さらにきめ細かい対応が必要な場合には別途対応することが必要との考えを示した。

◎処遇改善の加算新設は「職種別給与等の提出を要件化を」

処遇改善について診療報酬上で評価する場合には、実績に応じた配分とする必要性を指摘した。このためには、医療機関経営の“見える化”が必要とした。経営情報データベースでは、職種別の給与や人数が任意提出となっていることから、診療報酬で処遇改善などの加算を新設する場合には、「少なくとも職種別給与等の提出を要件化すべき」と主張した。

◎1受診当たり医療費 物価上率上回る水準で上昇

物価の上昇が医療機関経営に与える影響も指摘されている。財務省主計局は、過去20年間、消費者物価指数がほぼ横ばいで、物価がほぼ横ばいで変動する中で、医科診療所(入院外)における1受診当たりの医療費は、ほぼ一貫して増加しているとのデータを提示。特に、19年度から22年度にかけては+4.3%/年で、物価上昇率(+1.02%/年)を大幅に超えるほか、受診していない人も含めた国民1人当たりの医療費の増加(+3.8%/年)で、“1受診当たりの医療費”がいずれの指標も上回る水準で上昇していると強調した。

◎地域別診療報酬で医師の偏在対策を 患者数減少も診療所の開設は増加傾向

患者数が減少傾向であるにもかかわらず、診療所の開設が増加しているとのデータも示し、こうした背景に診療所の高利益体質があると説明。開業医から病院勤務医へシフトすれば、医師偏在は相当改善されるとの指摘があるとして、診療所の報酬抑制の必要性を強調した。また、診療報酬点数の1点当たりの単価が全国共通だが、診療所不足の地域では1点単価を引き上げ、逆に診療所が過剰な地域では単価を引下げることを提案。これにより、診療所過剰地域から不足地域への医療資源のシフトを促すことが重要との考えを示した。

◎リフィル処方箋 適正効果達成されるまでの時限措置「処方箋料の引下げを」

リフィル処方箋をめぐっては、2022年度診療報酬改定における大臣合意では、リフィル処方箋の導入・活用促進による医療費効率化効果を改定率換算で▲0.1%(医療費470億円程度)と見込んだ。しかし、日本保険薬局協会(NPhA)の調査では0.148%の普及にとどまっており、これに基づいて単純計算すると、医療費効率化効果は年間▲70億円程度(改定率換算で▲0.014%程度)にとどまる。このため、リフィル処方箋による適正化効果が達成されるまでの間の措置として、24年度診療報酬改定で、「処方箋料の時限的引下げなど、その分を差し引く調整措置を講じる必要」があるとした。

また、リフィル処方箋の普及促進に向けた周知・広報や保険者インセンティブなどに加え、「薬剤師がリフィル処方箋への切替を処方医に提案することを評価する仕組みや、例えばOTC類似薬については、薬剤師の判断でリフィルに切り替えることを認めることなどを検討すべき」とも提案した。

◎薬価改定 保険収載時など「イノベーションの適切な評価も」 長期収載品と配分の見直しの必要性指摘 

薬価改定については、国民皆保険の持続可能性確保とイノベーションの推進を両立させる配分の見直し等を行う必要性を指摘した。「保険収載時をはじめとするイノベーションの適切な評価」を方向性として示したうえで、「医療保険財政の中で、こうしたイノベーションを推進するため、⾧期収載品等の自己負担のあり方の見直しを併せて進める」ことを提案した。

長期収載品の見直しについては、「諸外国の例も踏まえ、高額な医薬品について費用対効果を見て保険対象とするか判断する、医薬品の有用性が低いものは自己負担を増やす、あるいは、薬剤費の一定額までは自己負担とするといった対応を採るべき」、「市販品と医療用医薬品とのバランス、リスクに応じた自己負担の観点等を踏まえ、OTC類似薬に関する薬剤の自己負担の在り方も検討すべき。その際、保険外併用療養費制度の柔軟な活用・拡大についても併せて検討を行うべき」、「高額な医薬品について保険対象外とする場合や、未承認薬の使用に関しては、民間保険の活用についても検討すべき」と列挙するにとどめた。このほか、毎年薬価改定の完全実施も提案した。

プリントCSS用

 

【MixOnline】コンテンツ注意書き
【MixOnline】関連ファイル
関連ファイル

関連するファイルはありません。

【MixOnline】キーワードバナー
【MixOnline】記事評価

この記事はいかがでしたか?

読者レビュー(9)

1 2 3 4 5
悪い 良い
プリント用ロゴ
【MixOnline】誘導記事

一緒に読みたい関連トピックス

日医・松本会長 24年度改定へ物価高騰・賃金上昇「従来改定とは別に」財源確保を 財政審議論を牽制

日医・松本会長 24年度改定へ物価高騰・賃金上昇「従来改定とは別に」財源確保を 財政審議論を牽制

2023/10/02
日本医師会の松本吉郎会長は9月29日の会見で、「コロナ補助金は、昨今の物価高騰や賃金上昇への対応に充てるべきものではない」と述べ、財務省・財政制度等審議会の議論を牽制した。
日医・松本会長 24年度改定は3%以上の賃上げ実現を「シーリングと別枠で」 基本診療料引上げ念頭

日医・松本会長 24年度改定は3%以上の賃上げ実現を「シーリングと別枠で」 基本診療料引上げ念頭

2023/10/26
日本医師会の松本吉郎会長は10月25日の定例会見で、2024年度のトリプル改定に向けて、「(高齢化に伴う増加分に当たる)5000億円程度のシーリングとは別枠でのインフレ、賃金上昇、物価高騰への対応をお願いしたい」と述べた。
ボタン追加
バナー

広告

バナー(バーター枠)

広告

【MixOnline】アクセスランキングバナー
【MixOnline】ダウンロードランキングバナー
記事評価ランキングバナー