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長期収載品 選定療養の患者負担、医療機関によらず「一定率」など検討 医療上必要性高い銘柄処方は除外

公開日時 2023/11/30 07:03
社会保障審議会医療保険部会は11月29日、長期収載品の選定療養として位置づけることについて、医療機関によらず患者の負担を一定の率に固定するなど「明確なルール」を定める意見が複数あがった。制度導入による医療現場の混乱を懸念する声も上がり、厚労省は、明確なルールを定める方針を示した。選定療養の適用を除外する場面として、「医療上必要性により、銘柄名処方」を行った場合などを例示。臨床現場での医師の判断を求める声があった一方で、「医学的な妥当性」などを踏まえて一定の要件を定める必要性を指摘する意見もあった。

◎患者負担 一律率の固定求める声あがる

厚労省は長期収載品と後発品の価格差を踏まえ、選定療養の場合における保険給付範囲の水準を議論の俎上に上げた。選定療養では一般に、医療保険で給付される基礎的部分と、患者から料金を徴取できる(自由料金)からなる。差額ベッドなどのように医療機関が自由に患者から料金を徴取するケースや、大病院の受診時定額負担のように下限の金額を定めるケースが含まれている。厚労省は、「長期収載品の薬価を超えて選定療養の負担を徴取する」ケースや、「選定療養についての負担を徴取しないことや、標準とする水準より低い額で聴取する」などのイメージを示し、これを認めるか、委員に意見を聞いた。

渡邊大記委員(日本薬剤師会副会長)は、「保険外併用療養費内(医療保険で給付される範囲)で見る部分と選定療養費内で見る部分との割合の設定が必要」と指摘した。池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)も、「医療機関ごと、あるいは薬局ごとに(患者負担を)上げたり下げたりということになると、本来の趣旨とは異なる。選定療養とした場合に、それをルールとしてこれは減額してはいけない、ということがルールとして可能なのかどうか」と事務局を質した。

厚労省保険局医療課の荻原和宏保険医療企画調査室長は、180日超の入院基本料では15%が患者負担とされており、選定療養でも患者負担を固定している例があると説明。「現場になるべく負担を生じさせないようにということ。医療上の必要性がある場合ついては従来通り保険給付が維持されるということになると、長期収載品の薬価そのものは残る仕組みになる。一方で、選定療養でバラつきを生むことが許容されるか、そのバランスで最終的に整理していくべき話だと考えている。最終的な法制上の整理とあわせて、ルールを決めてお示ししたい」と応じた。選定療養の導入には法改正は伴わないものの、「法制上の整理」のため、省令や告示などの発出も視野に、明確なルール制定を目指す考えを示した。

◎患者負担 製剤工夫での付加価値考慮には否定的な声あがる 「薬価制度で考慮すべき」

患者負担の金額をめぐり、佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)は、「長期収載品と後発品との差額全額とは言わないが、患者の負担増に一定の配慮をしながら、患者が後発品を使用するインセンティブはきちんと働く程度の水準にすべき」と主張。猪口雄二委員(日本医師会副会長)は、「患者さんの混乱を最小限にするためにも、できるだけ低い割合から始めるべきではないかというふうに思っている。その点についてはご配慮をお願いしたい」と述べた。猪口委員は、医療保険で給付される範囲は非課税だが、選定療養部分は課税対象となることも指摘し、明確なルール化を求めた。

患者の負担割合について貼り心地など製剤工夫に対する付加価値を考慮することについては否定的な意見があがった。佐野委員(健保連副会長)は、「薬価制度で考慮すべきことであり、選定療養の仕組みとして対応することには違和感を覚える」と指摘。渡邊委員(日薬副会長)は、「製剤の工夫等の評価ということのアプローチで率を区別することは難しい」と述べた。

◎選定療養の適用「医療上の必要性除外で“5年・50%”」の意見も

選定療養の対象範囲について、長期収載品はG1・G2ルールで、“後発品上市後の年数”、“後発品の置換率”を指標に薬価引下げがなされていることを踏まえ、年数や置き換え率を観点として提示した。

佐野委員(健保連副会長)は、「選定療養の活用を推進する観点から対象は極力広くとるべき。薬価制度においては後発品が出てから原則5年で強制的に引き下げる。年数については5年が一つの目途目安になると考える。また置き換え率についても一般の感覚で言うと、やはり過半数が使用してるということであれば、後発品が浸透してきていると考えることもできると思う」との見解を表明。「医療上の必要性に配慮した除外要件の設定を前提に、置き換え率は5割、50%を基準とする方向で検討すべき。5年、50%を基準とした上で、5年未経過のものについても対象として検討すべきだ」との考えを示した。

◎医療上の必要性めぐり議論

選定療養の除外要件として厚労省は、「医療上の必要性が認められる場合」をあげ、引き続き保険給付の対象とすることを提案した。具体的には、「医療上の必要性により、医師が銘柄名処方(後発品への変更不可)」を例にあげた。

佐野委員(健保連副会長)は、「当然、医療上の必要性に配慮して除外要件を設定することが必要だと考えているが、適正な運用という観点から、医学的に妥当な判断を担保することも重要だ」と指摘。具体的な理由をレセプトに明示するなどすることを求めた。中村さやか委員(上智大経済学部教授)は、医師の裁量で患者に抗菌剤が処方されている現状を指摘。「全て医師が医療上の必要性を判断するということではなく、今後は医療上の必要性が認められる疾患と薬剤の限定が必要ではないか」と述べた。

一方で、池端委員(日慢協副会長)は向精神薬を例に、「患者希望以外に医療上の必要性は、当然ながら医師が判断するということが一番明確だ」と強調した。

◎渡邊委員 患者の選択か確認は「実務にそぐわない」 処方箋活用などルール明確化を

選定療養を適用する場面についても、明確なルール化を求める声があがった。猪口委員(日医副会長)は、自己負担のない患者が先発品を選ぶケースがあり、トラブルになっているケースがあると説明。「現場でこのようなトラブルが発生しないように明確なルールが必要だ」と述べた。

渡邊委員(日薬副会長)は、「先発品の銘柄指定が患者希望なのか、医療従事者の判断なのかをその度ごとに確認しなければならないような状況は実務に全くそぐわない。例えば現在の処方箋様式で、変更不可欄にチェックするなど、明確な基準が必要だ」と指摘した。

◎後発品 供給不安品目は患者の自己負担発生しないよう薬剤師に判断を

後発品の供給不安が続く中で、後発品を選定療養から除くべきとの声もあがった。佐野委員(健保連副会長)は、「後発品の確保が困難な場合については、出荷停止や出荷調整がかかっているものについては当然一定の配慮が必要だと思うが、全体として必要量が確保されている、必要量が供給できてるというものについては、原則として選定の対象とする方向で検討すべき」との考えを示した。渡邊委員は出荷制限の品目が日々変わる中で、「品目をリスト化して対象外とすることも現実的な運用ではないと思う」と指摘。「後発品の出荷調整で先発医薬品を調剤せざるを得ないことが起こる。患者の自己負担が生じないよう、薬剤師の判断現場の判断をさせていただきたい」と述べた。
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