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中外製薬 「デジタルコンプライアンス」体制整備 19年から専任のワンストップ支援体制構築

公開日時 2023/12/01 04:50
デジタル技術の革新によって製薬企業でもリアルワールドデータ(RWD)やゲノム情報などのデータの利活用が当たり前になる中、中外製薬はデータ利活用におけるリスクマネジメントの一環として「デジタルコンプライアンス」の体制整備に取り組んでいる。11月20日にあった「サステナビリティ説明会」で事例を紹介した。同社では2019年からデジタルコンプライアンスの専任組織を新設し、ワンストップでの支援体制を構築している。統括する海老原潤一上席執行役員は「多様化、複雑化するデジタル技術やデータの利活用をチャンスと捉え、デジタル戦略の推進をリスクやコンプライアンスの視点から支援して、イノベーション創出に貢献していきたい」と述べた。

ゲノム情報を活用した革新的医薬品の開発や、RWDを使った開発プロセスの効率化、治験・臨床研究データの二次利用による新薬開発の迅速化など、製薬企業でのデータの利活用は必須とされる半面、データは多種多様化し、複雑化している。中外製薬でもデータを利活用する上での注意点が多かったり、相談する関係部署が多岐にわたったりと、新たな研究やデータ収集に乗り出す際のハードルがあった。海老原氏は「研究や開発が先端的、独創的であればあるほど、既存の枠組みでは判断が難しく、決断に時間を要する場面がしばしばあった」と振り返る。

◎得られた知見は社内方針策定や啓発・教育にも活用

こうした背景から、同社では19年から「ヒト由来データの利活用において国内外の法令・指針などを遵守すること」「社会通念上の規範や価値観に基づいて適正かつ適切なヒト由来データの取り扱いを実現すること」―をデジタルコンプライアンスと位置付け。取り組みの中核として、専任組織である「デジタルコンプライアンスグループ」を新設した。

専任組織はワンストップ支援体制を重視し、データを利活用する部門(研究、臨床開発、医薬安全性など)からの相談を一元的に受け、社内の法務や知的財産、研究倫理など関連部門と連携して迅速に対応する。さらに蓄積された事例を踏まえて、社内方針やガイドラインの策定、啓発・教育にも取り組んでいるという。海老原氏は「当初はゲノム情報の利活用が多かったが、近年はRWDやデジタルバイオマーカーのデータ収集や利活用に関する相談が増えている。ワンストップ機能によって効率化や迅速化につながるとともに、事例を通じて知見が得られ、全社的な対応力強化にもつながっている」と強調した。

◎21年からはERM導入 全社一元的な把握、可視化で効率的にリスク管理

また、説明会では21年から導入されたERM(Enterprise Risk Management)のフレームワークも紹介。全社レベルで経営戦略上のリスクとオペレーション上のリスクを一元的に把握、可視化することで効果的・効率的なリスク管理につなげているという。また、ERMフレームワーク導入時にリスクの内容に応じた選好方針「リスクアペタイトステートメント」を策定。イノベーションの追及に伴う場合は「リスクをとって積極果敢にイノベーション創出の機会を追求する」▽コンプライアンスに反するリスクは「一切受け入れない」▽製品の有効性・安全性などを阻害するリスクは「回避・低減に努める」―など場面に応じた考え方を明示している。海老原氏は「リスクは機会と表裏一体。特にイノベーションの追及においてはリスクテイクしないこと自体が最大のリスクだと考えている」と強調した。
 
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