【MixOnline】パンくずリスト
【MixOnline】記事詳細

軽度認知症治療薬・レカネマブが薬価収載、20日に発売へ 年間推定薬剤費は298万円 有用性加算45%で評価

公開日時 2023/12/13 11:40
中医協総会は12月13日、アルツハイマー病治療薬・レカネマブ(製品名:レケンビ)の薬価収載を了承した。体重50kgの人に500mg製剤を使用した場合の年間1人当たりの推計薬剤費は298万円。ピーク時の市場規模は、2031年(9年後)に986 億円を見込む。新規作用機序であることや、初めて認知症の進行抑制が認められたことが評価され、有用性加算(Ⅰ)45%の加算が付いた。あわせて、最適使用推進ガイドラインが了承され、MRI検査を求めたほか、重大な副作用とされるARIA(アミロイド関連画像異常)への適切な対応を求めた。保険上の留意事項通知も発出し、適正使用を推進する。12月20日に薬価収載され、保険上の留意事項通知なども同日適用される予定。

エーザイは薬価収載を踏まえ、12月20日に同剤を発売すると発表した。日本での発売は米国に次いで 2 カ国目。エーザイが本剤の製造販売元として販売 を行い、エーザイとバイオジェン・ジャパンが共同販促を行うとしている。

◎原価計算方式で算出 有用性加算(Ⅰ)45%取得も画期性加算は認められず

同剤の効能・効果は「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」。薬価は、200mg2mL1瓶4万5777円、500mg5mL1瓶が11万4443円。原価計算方式で算定された。製造販売業者のエーザイから、類似薬効比較方式で算定する主張がなされていたが、最類似薬は「なし」と判断し、原価計算方式での算定が適切と判断された。

新規作用機序であることや、臨床試験では臨床的に意義のある有効性が示され、既存の治療方法で効果が不十分な患者群においても効果が認められたこと、初めて認知症の進行抑制が認められた薬剤であることなどから、有用性加算(Ⅰ)45%を取得。一方で、画期性加算に対して不服意見の申し出があったが、要件を満たしていないとして、画期性加算は認められなかった。

◎介護費用は費用対効果で検討 介護費用含めた場合、含めない場合で総合評価案策定へ

介護費用の削減効果は薬価上では評価されなかったが、費用対効果評価での議論が進められる。同日の中医協総会では、費用対効果評価の分析ガイドラインに沿って分析を実施。介護費用を分析に含めた場合と含めない場合について、エーザイが提出した分析を元に公的分析が検証、再分析を行った上で、専門組織で検討し、介護費用を含めた場合と含めない場合の総合評価案を策定。その後、中央社会保険医療協 議会総会で議論し、費用対効果評価の結果を決定することが了承された。

◎最適使用推進GL 十分な知識持つ医師、ARIA対応可能な医療機関での投与求める

あわせて、同剤の最適使用推進ガイドラインも了承された。患者要件としては、認知機能の低下及び臨床症状の重症度範囲を満たすほか、MRI検査の実施が可能であることを求めた。また、アミロイドPET 又は脳脊髄液(CSF)検査を実施し、Aβ 病理を示唆する所見が確認されていることとした。

医師要件、施設要件としては、十分な知識と経験を持つ医師を責任者として配置することを求めた。同剤の重大な副作用として、ARIA(アミロイド関連画像異常)が指摘される中で、「ARIA 管理に関する適切な知識を有する医師、かつ投与に際して必要な検査体制及びチーム体制が構築されている医療機関において投与され、認められた場合には、画像所見や症状の有無から、本剤の投与継続、中断又は中止を判断し、かつ適切な処置を行うこと」も要件として明記した。

◎18か月間以降継続投与、中等度以降の患者への投与 判断した理由をレセプト上に明記求める

これを踏まえて、保険上の留意事項通知も発出された。初回から18か月間を超える継続投与については、継続が必要と判断した理由などをレセプトに明記することも求めた。中等度以降のアルツハイマー病による認知症と診断された患者に対しては、有効性が確立されていないことから、投与継続を行う場合には、再評価を行った結果として、知機能の低下及び臨床症状の重症度範囲を示し、継続が必要と判断した理由などをレセプトに明記することも求めている。「CDR全般スコア推移、MMSEスコア推移、患者及び家族・介護者から自他覚症状の聴取等による臨床症状の評価を踏まえた有効性の観点、並びにARIAの有無や副作用発現状況等を踏まえた安全性の観点を含めて具体的に記載すること」としている。

◎ピーク時予測は31年に3.2 万人 、986 億円 収載当初の市場規模は限定的に

最適使用推進ガイドラインを踏まえ、「本剤が投与可能な医療機関を受診する患者割合、あるいは診断やアミロイドβをはじめとする検査の実施割合などによって本剤の投与患者数は収載当初は限定的」として、ピーク時の市場規模予測は、2031年(9年後)の3.2 万人 986 億円とした。

短期間で急激に投与対象患者数が増大することは想定しにくいとして、薬価収載後の価格調整として市場拡大再算定の適用については、「通常通り、薬価調査やレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)に基づき市場拡大再算定、四半期再算定の適否を判断する」ことなども確認された。ただし、医療機関の体制や検査方法の拡充などの使用実態の変化や、投薬期間の延長による市場規模への影響も懸念されることから、全例調査である使用成績調査の結果などを注視し、使用実態の変化が生じた場合は、速やかに中医協総会に報告の上、改めて、本剤の薬価・価格調整に関する対応の必要性等について検討するとしている。

◎市場拡大に懸念の声も 安川薬剤管理官「市場規模拡大の要因は使用後徐々に把握」

診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「今後の市場規模がかなり限定的に推計されているが、使用可能な医療機関の数や、市販後のARIAや未知の副作用の発現、患者あたりの療養期間などの影響により、予測が難しく、市場規模が予測を大きく超えることはないか。ガイドラインに従い適切に使用されているのか、有効性、安全性、患者アクセスについて問題がないかなどきちんとフォローして対応していただきたい」と要望した。

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)も、「感染症治療薬のように急激な上振れは想定されにくいが、徐々に検査体制が整備されていくことや、長期投与のエビデンスが蓄積されていくことにより、徐々に市場規模が拡大していく可能性は十分にある」と指摘した。

厚生労働省保険局医療課の安川孝志薬剤管理官は、「市場規模が拡大する要因につきまして徐々に使い始めてから把握していくものと認識をしている。最適使用推進ガイドライン中で医師の要件なり研修要件、施設要件などが整備されていく中で体制が広がっていくものと認識している」と説明。使用成績調査を通じ、患者数や投与期間の把握が可能として、「全体の市場規模も含めて慎重に見ていきたい」と述べた。

このほか、支払側の松本委員は、「企業の立場からすると、100%希望通りにならなかったかもしれないが、介護費用の取り扱いは、今後費用対効果評価で適切な対応を検討すると思う。今回は45%有用性加算がつき、原価の約1.5倍近い薬価で、年間の薬剤費が1人298万円との報告もあったが、イノベーションの評価は一定程度されたものというふうに思っている」と述べた。そのうえで、「この薬に関する国民の期待が極めて大きいだけに使用できない患者や家族への適切な対応が必要だ。また、認知症施策全体の中でレケンビのような新しい治療法をどのように位置づけるかということも、今後の重要な課題だと考えている。政府として着実な実施をぜひお願いしたい」と述べた。

なお、高額薬剤であることからDPC病院で出来高払いとすることも了承された。

プリントCSS用

 

【MixOnline】コンテンツ注意書き
【MixOnline】関連ファイル
関連ファイル

関連するファイルはありません。

【MixOnline】キーワードバナー
【MixOnline】記事評価

この記事はいかがでしたか?

読者レビュー(14)

1 2 3 4 5
悪い 良い
プリント用ロゴ
【MixOnline】誘導記事

一緒に読みたい関連トピックス

記事はありません。
ボタン追加
バナー

広告

バナー(バーター枠)

広告

【MixOnline】アクセスランキングバナー
【MixOnline】ダウンロードランキングバナー
記事評価ランキングバナー