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【24年度薬価改定が放つメッセージPart2】厚労省・安川薬剤管理官 “過度な薬価差” 敷地内薬局で指摘も「個々の薬局見る必要ある」 流通実態踏まえ議論を

公開日時 2024/01/29 05:30
厚生労働省保険局医療課の安川孝志薬剤管理官は本誌取材に応じ、流通改善に向けて“過度な薬価差”が議論となる中で、「薬局やグループごとに購入状況が異なるため、個々の薬局の状況を見る必要があるのではないか」との考えを示した。「現在の流通制度に関するデータは、購入主体別の乖離率が“20店舗以上のチェーン”の括りで示されて過度の薬価差の存在が指摘されているが、それは少し乱暴な議論ではないか」と指摘した。厚労省が1月26日に中医協に示した個別改定項目(短冊)には、妥結率とともに「医薬品取引に係る状況」、「医療用医薬品の流通改善に向 けた取り組み」を報告するよう、見直すことが盛り込まれた。(望月英梨)

中医協に個別改定項目(短冊)が示されたことを受け、予定を変更し、本稿は連載Part2として、流通・薬価差編をお届けします。Part3後発品編は1月30日に掲載予定です。Part1新薬編は1月26日付で掲載(記事はこちら)。

“過度な薬価差”をめぐる中医協での議論は昨年12月、敷地内薬局をテーマとする中で起きた。厚労省は、「特別調剤基本料を算定する薬局においては、医療経済実態調査の費用別では医薬品等費の額が他と比較して突出して高い」とのデータを提示。それにもかかわらず、利益率が高いとして、「敷地内薬局の薬価差」について詳細な分析を求める声が診療・支払各側からあがった。

◎「流通は敷地内薬局に限らず、薬局・医療機関全体の課題」

安川薬剤管理官は、「薬価差は薬価制度だけの問題だけでなく、最終的には診療報酬制度の中での薬剤費のあり方の議論につながっている。薬局の収益構造として、敷地内薬局が他の薬局と比べ、突出して高い医薬品費がある中で、“過度な薬価差”があるのであれば、単に技術料の引下げだけではなく、流通との関係性も含めて検討しなければ、議論できないのではないか。流通に関しては敷地内薬局に限らず、薬局・医療機関全体の課題でもある」と指摘する。

◎“20店舗以上のチェーン括り”の議論は少し乱暴 24年度改定では取引状況の報告見直しへ

“過度な薬価差”を議論するうえでデータが不可欠だ。安川薬剤管理官は、「現在の流通制度に関するデータは、購入主体別の乖離率が“20店舗以上のチェーン”の括りで示されて過度の薬価差の存在が指摘されているが、それは少し乱暴な議論ではないか。薬局やグループごとに購入状況が異なるため、個々の薬局の状況を見る必要があるのではないか」との考えを示す。

なお、24年度診療報酬改定に向けて厚労省の示した短冊には、医薬品取引状況についての報告の見直しのほか、敷地内薬局の項では、「薬局の収益構造において費用に占める医薬品等費と医薬品購入状況等の医薬品流通の観点からの実態等を踏まえた、当該薬局及び当該薬局を有するグループとしての評価の在り方に関して、中医協で引き続き検討する」ことが盛り込まれており、今後、こうした観点から議論が進むことが想定される。

◎医療機関・薬局も「合法であれば何をしてもいいではなく、節度ある対応を」

24年度薬価制度改革の骨子では、「医薬品流通に関する課題」として、「過度な薬価差の偏在に関する課題も含め、医薬品流通に関する課題については、医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会(流改懇)やその他の関係会議において、薬価差の実態に関するデータ等も踏まえ検討されているところであり、これらの検討結果を踏まえ、必要な薬価上の対応について引き続き検討することとする」と明記されている。

安川薬剤管理官は、「この点に関しては、“過度な薬価差”に対して何をするかという議論も必要となる。購入者側への対応を考えるか。それとも、薬価制度を変えないといけないか。関係する流通制度の中で何を変えるか。今の状況では、一方的に買い叩きをして、過度に薬価差を得る方が得になっているがそれが本当に果たしていいのかというのが課題だ。医療保険制度の枠で対応する以上、合法であれば何をしてもいいのではなく、節度のある対応を医療機関・薬局には求めないといけない」と強調した。

なお、敷地内薬局については、「今回の改定で対応するのは当然として、今後継続して対応する方向性と考えているので提案している」とも話した。

◎不採算品再算定 流通当事者全てが医薬品の価値理解した取引を 乖離率7%超は除外

総価取引が横行する中で、医薬品流通を考える一つの縮図と言えるのが不採算品再算定だ。
24年度薬価改定では、2 3年末の武見厚労相と鈴木財務相の大臣折衝で2000品目に不採算品再算定を特例的に適用することが合意された。23年度改定で臨時・特例的に1100品目の薬価を引上げたことに続く対応となる。ただ、厚労省は23年度改定で不採算品再算定の臨時的・特例的導入した品目について、「安定供給を製薬企業に求めるとともに、そのフォローアップを実施」することも盛り込まれた。

安川薬剤管理官は、「23年度の中間年改定では、特例的に不採算品再算定により1100品目の薬価を引上げたが、その検証が宿題として課されていた。卸や医療現場から見れば、どの品目が不採算品再算定品目か区別できないため、薬価改定直後に、医薬産業振興・ 医療情報企画課から製薬企業に対して、「適正価格」での流通を求める通知が発出された」と説明する。

一方で、その結果が「検証」された薬価調査の結果、23年度改定で不採算品再算定が適用された1100品目の平均乖離率は3.3%で多くの品目で価格が維持できた一方で、乖離率が9%超と全品目の平均乖離率(6%)を大きく超えた品目が全体の14.0%と乖離が見られた品目もあった。中医協でも、診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)が、臨時・特例的な不採算品再算定の適用に理解を示したうえで、「せっかく不採算品再算定を適用したとしても、すぐに安売りされてしまうのであれば意味がない。乖離率9%を超えるような品目はさすがに行き過ぎではないか。総価取引などの流通上の課題も指摘されているので、その是正に向けた対応が必要だ」と話すなど、診療・支払各側から指摘があがった。

安川薬剤管理官は、「物価高騰が続く中で、今回も多くの品目で不採算品再算定の適用を求める声があった。現行ルールを当てはめてしまうと、限定的な品目となってしまうことから、不採算品再算定のルールのうち、“全ての類似薬について該当する場合に限る”との規定は適用しないこととした。ただし、これまでの議論の経緯を踏まえ、適正価格で販売せずに、乖離率が大きい品目については、中医協でも何のために薬価を引上げたのか、納得感が得られないため、昨年度の薬価調査結果の平均乖離率をもとに、乖離率が7%超の品目を除外することにした」と説明する。

◎不採算で薬価引上げも一括で安く購入は「医薬品の価値を無視している」

「中医協でも、2023年度の中間年改定の議論に端を発し、医薬品の価値に見合わない取引による“過度な薬価差”が問題視されてきた。薬価を引上げても流通の段階で乖離率が大きくなってしまうのであれば、誰のために保険財源を使って引上げたのかわからなくなる。製薬企業のためではなく、薬価差を得た購入者側のためになっているのではないかという指摘もあった」と説明する。

そのうえで、「今後のメッセージにもつながると考えているが、流通段階で、製薬企業はもちろん、医薬品卸、医療機関・薬局など、すべての流通当事者が医薬品の価値を理解したうえで取引を行う必要がある。採算が合わないから薬価を引上げているにもかかわらず、一括して安く購入しているのであれば、医薬品の価値を無視していることになってしまう」と強調した。

現在、「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」の改訂に向けて、不採算品再算定品目を含む医療上の必要性高い品目については、安定供給を確保する観点から、「価格交渉の段階から別枠」として、「個々の医薬品の価値を踏まえた単品単価交渉とすること」を盛り込むことが検討されている。安川薬剤管理官は、「そうした意識をもって流通に取り組むことが重要だ。医療機関や薬局も、数千品目ある中で、すべてを単品単価交渉することは大変だと思うが、スライド交渉や、ベンチマークを用いた交渉などは買い叩いているようにしか見えない。基礎的医薬品のルールにもあるが、平均乖離率を一つの要件として、薬価を下支えするルールについて考えるのは一定の理があるのではないかと思う」と話した。
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