エーザイの内藤晴夫代表執行役CEOは３月７日の記者懇談会で、「我々はＡＤ領域の旗手。まさしく新しい医療を切り開く。我々の前に道はない。道を作る気概でいま取り組んでいる」と強調した。アルツハイマー病治療薬・レカネマブ（製品名：レケンビ）については、価値増大のゲームチェンジャーは「かかりつけ医の本格参入」と強調。内藤CEOは、「実はClarity AD試験に一番症例をエントリーしたのがかかりつけ医だった」と明かした上で、「認知症医療の重要性とか緊急性に（かかりつけ医は）非常に関心が高い。この医療に参画したいという意識はかなり高いと思う」と期待感を表明した。一方で昨年12月の上市から50日を経過した日本市場の状況については、大学病院・ナショナルセンターのパスウェイ導入達成度が41％になるなど、「想定を上回るスピードでパスウェイ導入と処方導入が進展している」と胸を張った。

◎「我々の前に道はない。我々の後ろに道はできる」　3月末実績「心配していません！」

「我々の前に道はない。我々の後ろに道はできる」－、高村光太郎の詩の一節を用いて、レカネマブの“いま”を内藤CEOはこう表現した。続けて「診断・治療パスウェイ構築が我々の目の前で順調に進行している。３月末にどれくらいの人数がいて、どれくらいの金額売れたか、これ心配していません。１つの通過点であるということを申し上げたい」と強調した。

◎AD診断・治療に「かかりつけ医」の本格参入が可能となる　SC-AIやBBBMの普及で

この日はレケンビの価値を増大させる“ゲームチェンジャー”について内藤CEOが語った。2024年以降に想定するものとして、IV維持療法やSC-AI（皮下注 自己注射剤）維持療法、SC-AI初期・維持療法が24年～25年度中に見込まれる。また血液バイオマーカー（BBBM）の普及も26年度までに予定する。こうした状況を踏まえ内藤CEOは、「PET／CSFやInfusionに依存することなく、SC-AIやBBBMに置き換わるということは経済的にも大きな意味がある」と指摘。この結果、「2027年度以降、診断医療の分野が大きく転換することにより、かかりつけ医が主要な役割を果たすマーケットになる。極めて重要なゲームチェンジャーだ」と強調した。

◎「医療専門家のＡＤへの情熱を強く感じる。そういう市場になっていきたのではないか」と期待感

一方で昨年12月に上市した日本の状況については、大学病院/ナショナルセンターの初期導入予定の85施設に対し、パスウェイの構築が完了した施設は76。うち処方が出ている施設35で、導入達成度は41％だった。また、基幹病院に限ってみると、初期導入予定757施設に対し、パスウェイ構築完了施設は558、処方が出ている施設は213で、導入達成度は28％となった。内藤CEOは、「実働50日あまりの中では想定以上のパスウェイ構築と処方導入が展開できている」と評価。ARIAに対する講習も3500人が受講を完了したほか、予定を前倒しして採用するケースも100施設程度確認されている状況を示しながら、「全例調査締結は約300指数を超えるというところ。日本では特に医療専門家のＡＤへの情熱を強く感じる。そういう市場になっていきたのではないかと思う」と期待感を表明した。

◎中国のパスウェイ構築「他産業連携によるスクリーニングを目指す」

このほか中国におけるパスウェイ構築の流れについて、「ＡＤ治療パスウェイは日米と全く違うものになる。他産業連携によるスクリーニングを目指す」と内藤CEOは語る。具体的な施策として、すでに認知症保険の売り出しの準備をしていると明かし、「その中には薬剤負担軽減という商品が入っており、そこで疾患啓発やスクリーニング機会を提供していただく」と述べた。また、「プライベート健診産業も一大産業になっており、 こちらでは認知機能検査やＭＲＩをやっていただく。それからナーシングホーム産業も急成長しているので、こちらで疾患啓発や早期スクリーニングを行っていただく」と述べた。さらに診断、治療パスウェイについては、JD Healthとのパートナーシップを活かし、オンライン診療を活用したサービスなども手掛ける。内藤CEOは、「今後インドをはじめ他のアジア諸国やアフリカなどへの展開を考える上で非常に重要なモデルになるのではないか」との見解を示した。