ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J）は、このほどユーロネクストや米ナスダックに上場しているオランダのバイオ医薬品企業Crucell社（本社・ライデンRonald Brus最高経営責任者）を買収することで合意したと発表した。買収はCrucell社株式1株当たり24.75ユーロでの現金買収。買収総額は17億5000万ユーロ（約24億ドル、約1970億円）となる。

J&Jは既にCrucell社と09年9月に戦略的提携を行い、Crucell株式17.9％を保有していたが、今回、バイオ医薬品領域強化のためにJ&Jグループとしてオペレーションを行うことを提案、Crucell社がこれを受け入れた。J&Jでは買収成立後もCrucell社の従業員数、施設数などの規模は維持し、経営の独立性も担保したうえでJ&Jのワクチン事業の中核会社に据えたいとしている。

Crucell社は株主に対してJ&J提案の受け入れを推奨する。ただ、同社株式に関しては現在3社のファンドが合計で15.5％を保有しており、このうち4％を保有するDelta Lloyd Asset Managementは今回のJ&J提案の買収価格に対して不当に安価であるとの見解を示している。また、他の２社であるRobecoやVan Herkは旗色を鮮明にしておらず、場合によっては買収が難航する可能性も残されている。J&Jでは2011年第1四半期までに買収を完了させたい考え。

Crucell社は1993年設立で現在の従業員数は1300人超。ワクチンやモノクローナル抗体に特化しており、本社のオランダ以外に中国、インドネシア、マレーシア、韓国、ベトナム、イタリア、スウェーデン、スイス、スペイン、イギリスに拠点を有しており、世界100カ国以上でワクチンを供給。国連児童基金（UNICEF）のスポンサー企業の１つでもある。インフルエンザワクチンやマラリアワクチンなどの研究開発のほか、アメリカ政府とのエボラウイルスやマールブルグウイルスのワクチン開発で契約している。09年1月には旧ワイスが買収に乗り出したが交渉は決裂していた。09年の通期売上高は3億5800万ユーロ（約5億ドル、約410億円）