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膀胱がんの69%に治療標的となる遺伝子変異 標的治療に期待も

公開日時 2014/02/12 00:00

筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)は、治療標的になりうる遺伝子変異を有する腫瘍が69%を占めていることが分かった。また中でも、エピジェネティックな制御(クロマチンへの後天的な修飾とクロマチン構造を制御するタンパク質による遺伝子の発現調整)による遺伝子変異が、ほかのがん種と比べて高頻度で認められることも分かった。米国サンフランシスコで1月28日~2月1日まで開催されたASCO 2014 Genitourinary Cancers SymposiumのGeneral Session 5およびGeneral Poster Session BでMemorial Sloan-Kettering Cancer CenterのJonathan E. Rosenberg氏が発表した。

研究は、米国がん研究所(NCI)と米国ヒトゲノム研究所(NHGRI)が共同で実施したがんゲノム研究プロジェクトThe Cancer Genome Atlas(TCGA)の一貫として実施。最新の塩基配列解読法、解析法を用いてMIBC 131例を解析した。

今回の解析で、膀胱がんにおいて有意に頻発することが明らかになった変異は32種類。9種(CDKN1A、ERCC2、RXRA、ELF3、KLF5、FOXQ1、RHOB、PAIP1、BTG2)は、TCGAで解析されている他のがん腫(白血病、肺腺がん、肺扁平上皮がん、腎がん、前立腺がん、子宮がん、神経膠芽腫、頭頸部がん、乳がん、卵巣がん、結腸がん、直腸がん)いずれにおいても同定されず、他の研究でも3%以上の変異頻度で報告されていない変異だった。

腫瘍の69%は、治療標的となる遺伝子変異を有していた。標的は、PI3K/AKT/mTOR経路が42%、HER2を含むRKT/MAPK経路が45%だった。腫瘍は、遺伝子の変異およびコピー数変化のパターンが異なる3集団に分類され、発がん機序が異なる3集団が存在することが示唆された。

エピジェネティックな制御による遺伝子異常であるMLL2(27%)、ARID1A(25%)、KDM6A(24%)、EEP300(15%)が1つ以上認められたものが99例(76%)、2つ以上が53例(41%)で、この頻度は他のがん腫よりも高かった。

現在、MIBCの治療は、シスプラチンベースの併用化学療法と手術のみで、過去30年間、治療の目立った進歩がないことが指摘されている。再発または転移性膀胱がんに対して、シスプラチンベースの化学療法後の2次治療は確立されておらず、標的療法の有用性についても症例報告にとどまっている。
なお、詳細な解析結果は、Nature電子版に1月29日掲載された。

 

◆Memorial Sloan-Kettering Cancer Center・Jonathan E. Rosenberg氏に聞く
「他のがん腫で承認された薬剤で妥当性の検討を」

患者は日々、命を失っている。適切な対象集団を選択し、たとえば乳がんで用いられている抗HER2薬など、まずは他のがん腫ですでに承認された薬剤や開発中の薬剤で臨床試験を行い、膀胱がんにおける標的治療の妥当性を検討すべきだろう。エピジェネティックな制御による遺伝子異常については、現時点で機能は明らかになっていないが、新たな膀胱がん治療の可能性を示唆するものであり、さらに研究を進めるべきだと考える。

(取材 医学ライター/リポーター 中西美荷)

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