自民党の議員連盟「ジェネリック医薬品の将来を考える会」（上川陽子会長）は６月12日、骨太方針2020に向けた提言案について、大筋で了承した。新型コロナウイルス感染症の拡大により、中国やインドなどからの輸入に頼ってきた医薬品の原薬の輸入が影響を受けるなど問題が顕在化した。提言案では、「国内製造の推進に加え、海外製造国の多元化など、国内外におけるサプライチェーンの再構築、強靭化へ向けた施策が必要であり、国をあげて取り組むべき」と明記した。今週中にも取りまとめ、麻生財務相、梶山経産相、加藤厚労相に手渡す考えで、提言の骨太方針への反映を目指す。

◎提言案は３本柱　「リスクへの対応と国際連携推進」を追記へ

後発品の80％達成期限が迫り、ジェネリックメーカーの「品質管理と安定供給を柱とする社会的な使命と責任」が増している状況にある。こうしたなかで、提言案では、①医薬品・原薬の国内外におけるサプライチェーンの再構築、②全都道府県で数量シェア80％以上の達成、③「品質に対する信頼性を伴う安定供給への努力」が反映される薬価制度の構築―を柱とする。この日の議連では、さらに「リスクへの対応と国際連携推進」の必要性も指摘されており、これも含めた最終案を作成する考えだ。重要な医薬品が不足、供給停止した場合の調整メカニズムの構築や、環境に配慮した原薬等の製造、サステナブルな医薬品供給の仕組みを国際連携のもとで構築するため我が国が主導的に対応していく必要性などを盛り込む方針だ。

◎中国やインドなどの過度な依存脱却を　海外製造国の多元化への支援求める

サプライチェーンの再構築をめぐっては、新型コロナの拡大の影響を受け、「我が国の医薬品及び原薬の基本的なサプライチェーンが著しく脆弱であるという構造的問題を顕在化させた」と指摘した。そのうえで、「医薬品及び原薬の特定国への過度な依存を改め安定的な供給を担保する」ことの重要性を強調。国内製造の推進だけでなく、「海外製造国の多元化など、国内外におけるサプライチェーンの再構築、強靭化へ向けた施策が必要」と明記した。

実際、後発品の原薬は６割を輸入に頼っており、なかでも、中国やインドなど特定の国への依存度が高い状況にある。新型コロナの影響で、ロックダウンを余儀なくされたインドでは国内の流通網がストップしたことに加え、日本への旅客機が欠航したことで、原薬の輸入がままならず、安定供給への影響も懸念されていた（関連記事）。

日本薬業貿易協会は、「サプライチェーンの一部を特定の国への依存しているのは日本だけではない」と指摘。「そのため、サプライチェーンの一部に障害が発生すると、世界中で原薬・中間体の奪い合いになる」リスクを指摘している。実際、原価が上昇しているケースもすでにある。日本製薬団体連合会（日薬連）が提出した資料では、ほぼ100％中国から供給されているペニシリンG・６APAは、中国の環境規制の強化政策や無菌原薬・製剤製造におけるGMP要件の高度化などの煽りをうけ、2004年以降原価価格の上昇が続いているという。

上川会長は、インドから日本への旅客機が欠航したことを例にあげ、「外交的な支援も必要だ。すでにそうした連携はされているが、何かあれば、外務省にも直ちに動いていただくようにお願いに行きたい」と述べた。なお、この日の議連には、省庁関係者として、内閣官房や厚労省に加え、外務省も参加した。

◎「2021年度までに全都道府県で数量シェア80％以上の達成」も　

このほか、後発品80％目標達成時期が迫るが、その後の施策として、「2021年度までに全都道府県で数量シェアが80％以上となるような施策を導入するべき」と盛り込んだ。実際、薬剤費の大きい東京都や神奈川県、大阪府、埼玉県、愛知県などは、80％目標値に達していない現状がある。そのため、「薬剤費の大きい都道府県を中心に置き換えが進むことで、一層の薬剤費の適正化につながる。特に領域別、年齢別のバラツキを解消し、全ての国民・地域において使用されるべき」と提言している。