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【FOCUS 原薬・中間体の輸入再開 安堵の一方で「第2波」に備えた対応策を求める声も】

公開日時 2020/05/11 04:52
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、インドをはじめとして滞っていた原薬の輸入が徐々に再開し始めている。インド政府は4月6日、輸出制限をしていた原薬・製剤26種類のうち、解熱鎮痛薬のアセトアミノフェンを除く24種類の制限を解除した。一方で、日本への空輸の見通しが立たず、安定供給への影響が懸念されていた(関連記事)が、ここにきて空輸の目途がたち、業界関係者からは安堵感も見られる。ただ、ビジネスの観点からは原薬、中間体の調達をすべて国内で賄うことが難しいことから、新型コロナウイルスの感染拡大の第2波に備えた対策の必要性を指摘する声がすでに製薬業界内からあがりはじめた。

インド政府が輸出制限を解除した後も、国内の原薬確保には課題が残った。海外からの原薬の輸送は航空機による空輸が大半。特に、輸送量が大きくないため、定期旅客便が過半数を占めている状況にある。そのため、インド政府が3月22日から国際旅客便の運航を暫定的に停止したことが響いた。

◎日薬連も厚労相、国土交通相に医薬品等の輸送確保などで要望書提出

こうした状況に対し、製薬業界も解決に動いた。日本製薬団体連合会(日薬連)の手代木功会長は4月30日付で、厚労相と国土交通相に対し、「COVID-19(新型コロナウイルス)感染症に対応した、医薬品と医療用品の安定確保に関する要望書」を提出した。要望書では、「航空各社、船便各社に医薬品、医療機器、および他の医療用医薬品の国際および国内輸送を確保するための措置を要請する」としている。具体的には、航空輸送機や民間旅客機、貨物船の増便、貨物要領の増加の検討や、旅客航空各社が貨物便を増便する際に新たな発着枠を迅速に承認することを求めた。また、これらの必要品の輸送のため、日本の主要空港や主要港湾が閉鎖されることのないことも訴えた。

要望書では、医薬品の空輸は民間旅客機の貨物スペースを使用していることに言及し、「昨今の旅客機の減便や欠航は、多くの医薬品や医薬品原薬等の輸送に支障をきたしており、医薬品のサプライチェーンを確保するうえで緊急かつ重要な課題」と指摘している。日薬連だけでなく、欧米製薬団体や日本ジェネリック製薬協会なども要請に動くなど、業界側の危機感も強い。

◎ロックダウン続くインド 医薬品含む製造業の8割が生産中断に


特に、ロックダウンが長期化するインドでの影響は甚大だ。日本貿易振興機構(JETRO)ニューデリー事務所の調査(調査期間:4月24~28日)では、医薬品だけではないが製造業の8割が生産を中断、9割がサプライチェーンに支障があると回答している。従業員の移動手段の確保なども難しい状況にあり、輸送についてもJETROも対策に乗り出している状況にある。

◎インドとの取引企業17社が「原薬・中間体が輸入できない」

実際、日本薬業貿易協会(藤川伊知郎会長)の調査によると4月半ばで(調査期間:4月13~17日)、回答35社のうちインドと取引がある企業27社のうち、17社が「原薬・中間体が輸入できずに困っている」と回答していた。原薬は32品目、中間体は6品目、化学品が1品目だった。薬効別では、抗生剤や消炎鎮痛剤、血圧降下薬などが含まれていた。

この理由としてもトップは、「空港や港が麻痺している」(13社)。「日本へのフライトがない」、「限定された自社トラック便で何品かは空港に移送できているが、日本へは通常のフライト便ではない別の便で輸送してくれている」、「中国から調達している出発原料が滞っている」などの回答があがった。

このほか、「通関などの手続きが止まっている、滞っている」(8社)、「鉄道、トラック輸送が麻痺している」(7社)、「製造所の操業が停止している」(5社)と続いた。「従業員が半減している」、「事務職員は在宅勤務、製造部門は封鎖の適用除外で、なんとか従業員は出勤、手持ちの主副原料で生産は継続しているが今後は不明」などの回答が寄せられた。

実際、輸入できない状態が続けば製剤が欠品するのは26品目という。「医薬品について優先的に輸出してもらえるよう働きかけてほしい」、「原薬工場だけでなく、中間体や包装資材のメーカーも稼働するよう働きかけてほしい」などの声があがった。また、「緊急対応として、製販の新規製造元追加に関する審査を早めてもらえないか」などの指摘も。「国内製造も含めた原薬の複数ソース化が必要ではないか」との声もあがった。

◎新型コロナ関係の補正予算30億円計上 国内回帰で原価高騰リスクも


国の補正予算でも、海外依存度の高い医薬品原薬の国内製造拠点整備への補助として、30億円が計上された。国内回帰を求める声も多いが、実際にすべて国内生産にしてしまうと、品目によっては原価が10倍程度に跳ね上がるなどの試算もあり、完全に国内製造とするには難しさもはらむ。薬価の引上げを求める声もすでに製薬業界からは漏れる。「製造段階をいくつ前倒しできるか」など、サプライチェーン全体を見通した医薬品の安定供給に着手する企業も出始めている。

製薬産業を含む製造業を対象に、経産省は補正予算で、主に東南アジアでの拠点確保を想定した「海外サプライチェーン多元化等支援事業」(235億円)を確保している。中国やインド頼みではない、東南アジアに新たな拠点を模索する必要性を高まることとなりそうだ。産業界だけでなく、政府も一体となった多面的な対策が求められている。(望月英梨)

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