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オフェブ適応追加で有効な治療薬なかった肺線維症領域の臨床効果に期待 日本BIセミナー

公開日時 2020/08/06 04:49
日本ベーリンガーインゲルハイムは7月30日、抗線維化剤オフェブ(一般名:ニンテダニブエタンスルホン酸塩)の適応追加プレスセミナーを開催した。オフェブは2015年8月に特発性肺線維症(IPF)の治療薬として承認され、昨年12月に全身性強皮症に伴う間質性肺疾患(SSc-ILD)、今年5月には進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)の適応を相次いで取得。いずれもアンメットメディカルニーズの高い疾患として、新たな治療薬の開発が望まれていた。同セミナーでは、両疾患の特徴や最新治療の周知・啓発を目的に、日本医科大学リウマチ膠原病内科教授の桑名正隆氏と、国立病院機構近畿中央呼吸器センター臨床研究センター長の井上義一氏が講演し、オフェブの適応追加への期待を示した。

◎全身性強皮症伴うILD 早期診断の啓発が重要

膠原病の1病態である全身性強皮症(SSc)は国の指定難病333疾患のうちの1つで、皮膚だけでなく各種臓器の線維化と血管障害を特徴とする自己免疫性疾患。患者数(指定難病の医療費助成を受けている患者)は約2万7000人、30〜50歳代の女性に多く発症するとされている。

日本医科大学教授の桑名氏は、SScについて「一言で言えば、皮膚が硬くなり、内臓を含めて全身に広がる病気」と説明。主な合併症として間質性肺疾患(SSc-ILD)のほか、心臓が線維化を起こして硬くなると心不全、消化管の場合は腸閉塞や逆流性食道炎など、SScによって引き起こされる多様な症状を示した。

なお、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど膠原病の他の病態と異なり、SScは著しい内臓病変の場合には発症後短期間で命を落とすケースが少なくなく、そのSSc関連死の死因の3分の1をSSc-ILDが占めている。肺の間質が硬く厚くなり線維化することによって、肺機能の「ガス交換」がうまくできなくなる疾患であり、咳や呼吸苦を生じ、進行すると呼吸不全で死に至る。

SSc-ILDを含む全身性強皮症診療の課題として桑名氏は、①診断・治療介入の遅れ、②多様な症状・臓器障害・臨床経過、③有効な治療法がない──の3点を指摘。①に関しては、初発症状から診断までに至る期間が平均3.4年を要していることを問題視し、「SScの早期発見・診断はレイノー現象(寒いときに指先が白や紫になる)に着目すれば比較的容易であり、その周知により飛躍的に早期診断が進む」と現状の改善を訴えた。また②については、SScの症状は極めて多様で、予後の悪い症例がある一方、方や手指に限局した皮膚硬化だけで15年間治療を受けていないといった症例もあり、「個々の患者さんの将来起こる臓器障害や生命予後の予測などからグループ分けをして、命にかかわる症例を見つけて優先的に治療していくことが重要」と指摘した。

SScの治療に用いられる薬剤は、免疫抑制薬に一定の効果がみられるものの感染症にかかりやすいなどの副作用リスクがあり、他の膠原病に有効な副腎皮質ステロイドは有効性が証明されていないことから補助的な使用にとどまっていた。

昨年12月にSSc-ILDの適応が追加された抗線維化薬オフェブは、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)をターゲットとする低分子チロシンキナーゼ阻害薬。日本人71名を含むSSc-ILD患者580名を対象とした国際共同第3相試験において、1年間の治療後、オフェブはプラセボに対してFVC(努力肺活量)の低下を44%抑制し、肺の線維化を抑え病気の進行を遅らせることが証明された。

桑名氏は、同剤の副作用である下痢や吐き気などの消化器症状はコントロール可能としたうえで、「これまで免疫抑制薬しかなかったが、オフェブとの使い分けや併用でより高い臨床効果が期待できる。より多くの患者さんの救いになる」と述べ、オフェブによる治療選択肢の拡大に期待を寄せた。

◎早期介入が望ましい 進行性線維化伴うILD


一方、今年5月に適応追加が承認された進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)は、様々な疾患が含まれるILDのなかで、臨床経路のある時点で進行性の線維化がみられるという共通の特徴を持つ疾患群の総称。特発性肺線維症(IPF)が代表的な疾患であり、過敏性肺炎、自己免疫性ILDs、IPF以外の特発性間質性肺炎(IIPs)など異なる基礎疾患を横断した疾患概念だ。

近畿中央呼吸器センター臨床研究センター長の井上氏は、「間質性肺疾患には200以上の疾患が含まれ、その多くが難治性で頻度の少ない難病。そのため検証的な臨床試験の実施が難しく、エビデンスに基づいた治療薬がなかった」と解説。特にIPFは悪性腫瘍に準じて予後不良の疾患であり、その傾向はPF-ILDに共通することから、効果的な治療選択肢がない領域として、従来から治療薬の開発が求められていた。

PF-ILDの特徴は、肺の線維化、肺機能検査や症候および画像での肺機能の悪化により評価される急激な疾患の進行であり、進行性の肺の線維化は息切れや呼吸不全を招来する。IPFの典型的な臨床経路は初診から2年後に蜂巣肺となる通常型間質性肺炎(UIP)パータンを呈し、3年後に死亡となる(中央生存期間35カ月)が、PF-ILDも疾患ごとに期間にばらつきはあるものの、同じ経過をたどるケースが多い。

オフェブは2014年にIPFに対する有効性と安全性が証明され、世界各国で先行して承認されたが、PF-ILDについては日本人108名を含むPF-ILD患者663名を対象とした国際共同第3相臨床試験で、主要評価項目である投与52週までの努力肺活量(FVC)の年間減少率はプラセボ群より有意に低いことが明らかになった。

井上氏は、進行性線維化のILDへの治療選択肢が増えたことを高く評価するとともに、「IPFについては診断がついたらオフェブなど抗線維化薬の投与を検討するが、PF-ILDもそうなっていくのではないか」と、線維化の程度に寄らず早期の介入が重要との認識を示した。ただし、PF-ILDのなかには、難病に指定されていない疾患もあることから、「まったく無症状の患者さんに服用してもらうには、肺の線維化には抗線維化薬の投与が必要であることを十分に理解してもらう必要がある」と、投与の際の留意点を述べた。

【訂正】線維化の表記に誤りがありました。訂正します(2020年8月6日17時43分)
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