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【FOCUS】アフターコロナのMR活動 再開の「第1歩」どう踏み出す コロナ禍の経験活かすMRが勝つ

公開日時 2021/10/18 04:54
新型コロナの緊急事態宣言(第5波)が解除され、MRの訪問自粛要請を緩める大学病院や基幹病院が出始めた。取材に応じた東京23区内の大学病院に勤務する薬剤師は、解除日から大勢のMRが病院を訪れ、薬剤部内や病院の廊下で挨拶を交わす光景を久々に目にしたという。こんな、ちょっとした光景に、懐かしさを覚え、コロナとの闘いがひと山を越えたことを実感した。ただ、それも数日で、オンラインやメルマガ、DMなどによる情報収集に慣れたこともあり、スーツ軍団の再来訪に戸惑いを感じる同僚も少なくないと話してくれた。(沼田佳之)

新型コロナに伴う緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が全国各地に繰り返し発令されてきたなかで、製薬企業の情報提供活動は、メールアポイントメントやリモート面談、自社サイト、「MR君」のような3rd Partyの利活用が主戦場となった。特に、大学病院や地域基幹病院では、Web講演会やデジタルコンテンツを通じた情報提供が盛んに行われ、MRも社内研修を通じ、デジタルを活用したコミュニケーション術や、オムニチャネル型情報提供の習得などにトライしてきた。

その甲斐もあり、2020年3月以降は、コロナ以前のMR活動として批判されることの多かったSOV(シェア・オブ・ボイス)によるワン・キーメッセージ型プロモーションや、重点施設への頻回訪問・集中訪問、病院内の廊下で医師の帰りを立ち待ちする活動の多くが消失した。

◎「さあ、いくぞ!」と開放感一杯の気持ち


新型コロナとの闘いは今後も継続する。とはいえ、社会全体がアフターコロナを見据えた社会経済活動の再開に向け動き出したことも見逃せない。MR活動も同様で、冒頭に記した大学病院や基幹病院がMR活動の訪問自粛要請を徐々に緩め始めたことも事実である。いま、MRにとっても「さあ、いくぞ!」と開放感一杯の気持ちを抱くだろう。だが、ここは、ちょっとだけ踏みとどまって欲しい。水を差すようで申し訳ないが、いま我々が考えるべきは、アフターコロナを見据えたMR活動の再開の第1歩をどう踏み出すかにある。

我々はこの間、新しい顧客へのコンタクト方法と手段を経験した。デジタルに抵抗感を唱えるMRも大勢いた。それでも製薬各社はデジタル投資を拡大し、医師や薬剤師と製薬企業とのエンゲージメントを強めるデジタル施策を数多く打った。一方で企業はMRに働き方改革を推奨し、生産性向上に努めるための人財育成に注力した。各社が行う「DX推進」はまさに、これに該当する。過去に慣れた働き方から決別し、新時代の働き方を習得すべく想像力を養うスキルトレーニングやデジタルソリューションの利活用方法などの研修に努めていると聞く。

◎「自分の10年後の姿を想像できますか」

「自分の10年後の姿を想像できますか」-。この問いかけに応えるためのスキルトレーニングが、いまMRに求められる。10年後の医療界は、今回のコロナを皮切りにデジタル化が進み、地域ごとに医療・介護・健康プラットフォームが構築される。患者はオンラインで医師の診察を受け、薬剤師によるオンライン服薬指導後には、自宅に医薬品が即日配送される。保険薬局はデジタル化が進み、店舗を持たないオンライン薬局も誕生するだろう。オンライン薬局は電子処方せんによる調剤・宅配のほか、健康サポート関連商品を専用eコマースから患者や家族に販売する。もちろん代金は電子決済される。健康と医療の垣根はどんどんなくなり、スマホを使って自分の健康データや処方薬情報を管理することも可能だ。患者や一般消費者も健康投資を意識し、民間保険会社と製薬会社によるタイアップ型民間保険を活用して、いつでもどこでもかかりつけ医や専門医とオンラインを使ったコミュニケーションが可能となる。

◎社会構造と社会システムの変革はMR活動にも当てはまる

こうした時代のMR活動を想像してみて欲しい。地域には医療者や多職種をつなぐコミュニケーションネットワークと診療情報データベースが存在し、医療機関は個々患者に適した医療を提供する。もちろん、医療システムの評価軸には治療アウトカムが最重視されるようになる。アウトカムの評価軸には、社会実現が求められる「健康」な日常生活と労働生産性の維持が位置づけられ、その結果に応じ、地域の医療・介護サービス提供者、保険者にインセンティブが配分される。

製薬企業にとっても、革新的新薬のイノベーション評価として、病気を克服して日常生活に戻る指標や職場復帰を果たして労働生産性を向上させる指標を評価するようになる。よって、製薬企業のMRは新薬の価値向上に資する活動に、より注力することが求められ、活動の先に「患者中心(Patient Centricity)の医療」の実現が目標として与えられるようになるという訳だ。

実は、これからの10年間は製薬産業にとって極めて重要な期間となる。先述したように社会構造や社会システムが激変することに伴い、社会が求めるゴールも大きく変わるのだ。岸田内閣が掲げる「新自由主義」は、まさにこうした時代の変化を見据えたものだ。一つ気がかりなのは、コロナがピークアウトしたことで、コロナ以前のMR活動に戻ることを企業トップが選択してしまうことだ。一度動き出した波は戻ることは無い。コロナは製薬産業のビジネストランスフォーメーションの背中を確実に押した。この波をMR自身の手で止めてはならない。逆に、この間のコロナ禍における経験を活かすMRを育てることこそが企業にとって人財の財産になる。前を向き、これからの10年をMR一人ひとりがじっくり考え、きょうの活動を考えて欲しいと願うばかりだ。

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