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中医協総会で支払側 コロナ禍での脆弱性是正へ急性期入院医療で「医療資源の集約化」求める

公開日時 2021/11/11 04:52
中医協総会は11月10日、2022年度診療報酬改定に向けて、急性期入院医療について議論した。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)が「コロナ禍でわかった医療の脆弱性をいまこそ是正すべき。これが新興感染症に強い医療提供体制の構築につながる。支払側委員の総意として強く主張する」と述べた。「特に高度急性期については、医療資源を散在することなく、集約することが極めて重要」と主張した。手術実績が多いなど、急性期に注力する医療機関は評価を拡充する一方で、医療・看護必要度や、重症度患者割合を厳格化することなどを強く迫った。これに対し、診療側は、コロナ禍であることなどから、抜本的な見直しに慎重な姿勢を示した。

◎診療側・城守委員 「医療計画を診療報酬で支えるのが基本的な考え」

22年度診療報酬改定に向けては、改定の基本的視点として、「新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築」が重要課題となっている。考えられる具体的な方向性の例として、「医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価」があげられている。

支払側の松本委員は、「急性期入院医療、基本認識としてコロナ禍での教訓を生かして、機能の分化・強化、連携をこれまで以上に推進する必要がある。特に高度急性期については、医療資源を散在することなく集約することが極めて重要だと認識している」と指摘した。

これに対し、診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、「コロナ禍で救急体制、人員確保体制や様々な医療資源、各都道府県で全く異なる」と指摘。「第8次医療計画の見直し検討会で、(24年度からスタートする)医療計画を策定する。それを診療報酬で支えていくというのが基本的な考え」と述べるなど、早急な議論をけん制した。

◎A項目の心電図モニター管理 支払側・松本委員「次回改定で必ず解決すべき」

急性期入院医療の指標である「重症度・医療看護必要度」については、A項目(モニタリングおよび処置等)、B項目(患者の状況等)、C項目(手術等の医学的状況)からなる。

急性期一般入院料では、A項目の「心電図モニターの管理」や「点滴ライン同時3本以上の管理」が焦点となった。特に心電図モニターの管理をめぐっては、入院分科会でも、「心電図モニターの保有台数等、医学的必要性以外の理由で装着を決定している医療機関もあるのではないか」などの声があがり、「純粋に患者の状態を反映しているとは必ずしも言えない」などの指摘があがっている。

支払側の松本委員は、「心電図モニターの管理については、以前から問題意識をもっており、次回改定で必ず解決すべき」と主張。安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、点滴ライン同時3本以上の管理について、使用薬剤が2種類以下の患者が含まれていることから、「分科会からの指摘も踏まえ、この2項目については除外する方向で検討を進めるべき」と主張した。特定集中治療室(ICU)管理料など高度急性期医療について松本委員は、「ICUではB項目は削除すべきだ」と指摘した。

◎診療側・城守委員 ICUのB項目で「分科会は根本的なことがわかっていないのでは」

一方、診療側の城守委員は、「これまで改定のたびに評価項目を変更すること自体、医療現場にとって負担となっている。ましてやコロナ禍で経過措置の延長対応、病床確保やコロナ患者の受け入れ対応など、通常とは異なる対応が求められてきた。評価項目に関してもう少し実態の正確な把握をするべきであって、ここをさわるということには賛同いたしかねる」、「今回の資料だけでは実態が正確に把握できない。もう少し実態を正確に把握していただいたデータを事務局が出していただかないと、次回改定で削除するということはあり得ない」と反発した。

ICUでのB項目については、「B項目は看護必要度、各病棟において看護師にどれだけの手間がかかるのか。そのために多くの看護配置が必要になるのかということも指標の一つとして組み入れられた経緯がある」と説明。「分科会は、根本的なことがわかっておられないのではないか。安易にB項目を削除することはあってはならない」と強調した。

◎重症患者割合 入院基本料1の引き上げで早くも火花

重症患者割合については、急性期一般入院料1は看護必要度Iで31%以上とされている。支払側の松本委員は、「入院料1の基準値を引き上げ、区分ごとに一定の差を設けることで、メリハリをつけて急性期医療に適切にできるようになると考えている」と主張。これに対し、診療側の城守委員は、「今回のコロナ対応で中小の医療機関の救急対応能力は度重なる診療報酬改定で、急性期医療への厳しい評価の切り下げということも相まって非常に救急隊の能力が下がってきている。現状において、急性期入院料をさらに削減するような方向性を打ち出すということは到底考えられないのではないか」と真っ向から意見は食い違った。

◎急性期入院料1評価拡充で診療側・城守委員 治療室を持たない医療機関も急性期に対応

一方で、急性期一般入院料1を届け出ている医療機関で、救急搬送受入件数、手術(緊急手術等を含む)等の実績があり、充実した急性期入院医療を行っている医療機関に対しては、手厚い評価をすることも論点となった。診療・支払各側ともに評価の拡充には理解を示したが、各論では議論がわかれた。

支払側の松本委員は、「急性期入院医療の評価にメリハリをつける新たな切り口になるのではないか。次回改定でぜひ対応していただきたい」と歓迎した。安藤委員は、「現在でも複雑な診療報酬体系をさらに複雑にするということについては避けるべき。新たな類型を追加するのではなく、現行の報酬体系に組み込む方向で検討すべき」と注文を付けた。

一方、診療側の城守委員は、「治療室を持たない医療機関は急性期入院医療を担っていないかというとそうではない。特に、中小病院においてはユニットをわけて、それだけの構造的な余裕がなかったり、看護のさらなる手厚い配置がしづらかったりということもあって、特定入院料を取れていないことはある」と説明。「こういう医療機関を評価しない、または評価を切り下げるとなれば、さらなる地域における救急体制、救急対応の弱体化につながる。そういう方向で議論するということであれば、我々としては明確に反対する」と反発した。

◎支払側・松本委員「薬価制度の根幹に影響する極めて深刻な問題」 九州卸談合疑いで

このほか、総会終了直前に支払側の松本委員は、国立病院機構を発注者とする九州エリアで、医薬品入札で談合の疑いがあるとして医薬品卸6社に公正取引委員会が立ち入り検査を行ったことに触れた。

松本委員は、「現時点ではまだ疑いだが、これが事実ならば前回にもまして薬価制度の根幹に影響する極めて深刻な問題だ。厚労省においては事実関係を正確に把握し、中医協にも報告いただきたい。次期薬価制度改革について議論する中で医薬品の流通は重要なテーマであることは周知な事実だ。業界団体にも厳正な対応と説明責任を果たしていただきたい」と述べた。
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