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住友ファーマ 次期主力品候補のulotaront 統合失調症の第3相試験で主要評価項目達成できず

公開日時 2023/08/01 04:51
住友ファーマは7月31日、次期主力品候補のulotarontについて、米国で実施した統合失調症を対象とする2本の第3相臨床試験で主要評価項目を達成できなかったと発表した。野村博社長は同日開催した23年度第1四半期の決算説明会で、結果について、「非常に残念。私としては、今後のデータ解析と新しい開発方針を待つとしか言えない」と述べた。同社は、両試験とも「非常に高いプラセボ効果が観察され、ulotaront投与群の有効性をマスクした可能性がある」と推測。パートナー企業の大塚製薬とともに更なるデータ解析を迅速に進める方針を示している。今後の開発の進め方について米FDAと協議する考え。

TAAR1アゴニストのulotarontは住友ファーマの創製品で、ピーク時年間売上が2000億円以上あった非定型型抗精神病薬・ラツーダを超えるブロックバスターになると期待する次期主力品候補。統合失調症(米国有病者数230万人)、大うつ病補助療法(同1830万人)、全般性不安障害(同1300万人)を対象疾患に米国や日本などで開発しており、まず統合失調症で2024年度に米国で、27年度に日本で上市を実現し、その後に適応追加していく開発計画を立てている。

同社は23年2月にラツーダの米国特許が満了し、24年3月期はコア営業損失が620億円になると予想している。厳しい状況のなか、現在の基幹3製品(前立腺がん治療薬・オルゴビクス、子宮筋腫・子宮内膜症治療薬・マイフェンブリー、過活動膀胱治療薬・ジェムテサ)で“ラツーダクリフ”の減収影響を最小化して再成長への収益基盤を固め、ulotarontをはじめとする自社創製品で成長を循環させる絵を描いている。27年度を最終年度とする現中期経営計画の次の5年間の成長のカギをulotarontが握るなかで厳しい試験結果が出たことになる。

◎PANSS合計スコアの変化量 プラセボ-19.3、50mg投与群-16.9、75mg投与群-19.6

ulotarontの第3相試験であるDIAMOND1試験は、急性期の統合失調症患者435人を対象とした多施設共同、プラセボ対照、ランダム化、二重盲検比較試験。本剤50mg/日、本剤75mg/日を6週間投与した際のプラセボ投与群に対する有効性、安全性、忍容性を評価した。

その結果、主要評価項目の投与6週間後の陽性・陰性症状評価尺度(PANSS、主として統合失調症の精神状態を全般的に把握することを目的とした評価尺度)合計スコアのベースラインからの変化量は、プラセボ投与群-19.3に対し、50mg投与群-16.9、75mg投与群-19.6で、いずれの投与群でもPANSS合計スコアで大きな減少が示された。

第3相試験のDIAMOND2試験は、急性期の統合失調症患者464人を対象とした多施設共同、プラセボ対照、ランダム化、二重盲検比較試験で、本剤75mg/日、本剤100mg/日を6週間投与した際のプラセボ投与群に対する有効性、安全性、忍容性を評価した。その結果、主要評価項目の投与6週間後のPANSS合計スコアのベースラインからの変化量は、プラセボ投与群-14.3、75mg投与群-16.4、100mg投与群-18.1だった。

安全性に関しては、両試験とも、「総じて良好な安全性と忍容性が示された」としている。

◎「プラセボで大きな改善が観察され、試験結果に影響を及ぼしたと推測」 新型コロナ一因か

同社の池田善治常務執行役員(リサーチディビジョン担当)は同日開催した23年度第1四半期の決算説明会で、ulotarontの第3相試験結果に関し、「ulotarontは改善を示したが、プラセボで大きな改善が観察され、試験結果に影響を及ぼしたと推測している」と述べた。

池田氏は、プラセボ効果が大きく表れた理由の一つに、新型コロナのパンデミックが考えられるとした。2つの第3相試験は19年9月から開始したものだが、新型コロナのパンデミック前に登録した被験者を対象としたプール解析を行ったところ、ulotaront投与群で統計学的に有意な改善を示した第2相試験(SEP361-201試験)と「同様の傾向が見られた」という。そして、「(第3相試験で)プラセボ効果がこれだけ上がった要因としてCOVID-19が考えられる。他にも要因がないか解析中」だとし、「詳細な解析を進めている」と強調した。

SEP361-201試験は、統合失調症急性増悪期の入院患者を対象とした4週間のランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験。主要評価項目の投与4週間後のPANSS合計スコアのベースラインからの変化量は、プラセボ群-9.7、本剤50mg/日または75mg/日投与群は-17.2で、プラセボ群に対して統計学的に有意(p=0.001)な改善を示した。

◎野村社長 「今後のデータ解析と新しい開発方針を待つ」

野村博社長は決算説明会で、第3相試験結果の受け止めについて、「主要評価項目を満たさなかったということは非常に残念。我々も期待していたが、未達ということで申し訳なく思う。私としては、今後のデータ解析と新しい開発方針を待つとしか言えない」と述べた。

27年度を最終年度とする現中期経営計画への影響に関しては、米国における統合失調症はメディケイドの患者が多く、薬剤価格も低く抑えられることから、「そもそも現中計におけるulotarontは、必ずしも損益に対する貢献度は大きくない」と説明した。開発に時間を要する場合は、営業担当者の新規採用を控えるなどコスト抑制する考えも示した。ただ、27年度以降のulotarontの業績貢献への期待は大きく、患者数も多く民間保険が主体の大うつ病や全般性不安障害での適応取得への意気込みもみせた。
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