エムスリーは10月6日、「医師からのMA/MSL認知度・デジタル活用ニーズに関する調査」の結果を公表した。m3.comに登録している社外医学専門家（KEE）、準KEE医師と一般臨床医師を対象に行った調査によると、メディカル情報とプロモーション情報が判別できているKEE・準KEE医師は全体の約5割、一般医師で25％に止まった。情報収集におけるMRとMSLの使い分けについては、本来MSLに尋ねるべき内容をＭＲとMSLの双方に尋ねる医師が多いことも分かった。デジタル活用ニーズは高い傾向を示したものの、MA/MSLからの情報提供の改善余地として、「内容の充実度」、次いで「入手にかかる時間」などがあがった。

調査は、医師のMA/MSLに対する認識と、今後の医師のデジタル活用意向を明らかにし、現在の各企業のMA活動とのギャップを把握することを目的に、m3.comに登録するKEE（Key External Expert）・準KEE医師（回答数277人）、一般臨床医師（同309人）を対象に23年9月に実施した。同日、東京都内で開催した「MAラウンドテーブル」で公開した。

◎KEE・準KEE医師の91.7％　ＭＡの活動意義を実感

MAのミッション・意義の理解・実感については、KEE・準KEE医師の91.7％がMA/MSLとのやり取りを通じてＭＡの活動意義を実感していた。逆に一般医師の22.0％がMAのミッション・活動意義を聞いたことがあるものの実感していないと回答した。活動意義を実感できる理由は、マーケティング部門／ＭＲと異なるニーズに応じた情報提供や科学的議論が出来る（KEE・準KEE医師63.2％）など。一方で実感できない理由は、MA/MSLからの情報提供がマーケティング部門/MRからの情報提供と重複している（KEE・準KEE医師43.5％）だった。

◎KEE・準KEE医師の47.1％がプロモーション情報と区別　MSL/MR双方から情報収集も

メディカル情報とプロモーション情報の判別については、KEE・準KEE医師の47.1％が「MSLの情報とMRからの情報を区別できる」と回答。一般医師の場合は24.3％に止まっていた。MRとMSLの使い分けについては、「適応外使用や担当者の企業が開発中の未承認薬に関する情報」がMSLからの情報収集39.7％、ＭＲからの情報収集は10.5％に対し、MSL/MR双方からの情報収集が41.3％だった。「専門領域における最新の論文／知見」については、MSLからが35.8％、MRからが13.6％、MSL/MR双方からが47.1％。「担当者の企業以外の製品を含む、複数薬剤についての比較情報」はMSLからが26.5％、MRからが25.7％、MSL/MR双方からが43.6％となり、「本来MSLに尋ねるべき内容についてもMSL/ＭＲ双方に尋ねる医師が多い」ことも分かった。

◎入手したい情報　1位は「自身の専門分野における最新の学術情報」

KEE・準KEE医師がMA/MSLから情報提供を受ける際の評価について調査した。その結果、入手したい情報の第1位となった「自身の専門分野における最新の学術情報（最新の論文のサマリなど）」について、50.9％が「改善の余地がある」と回答。同じく第2位の「自身の専門分野における、ongoingの治験に関する情報」も54.0％、第3位の「自身の専門分野における非臨床試験・基礎研究に関する情報（MoAに基づく薬効薬理作用、毒性など）も52.7％と、医師が入手したい情報で過半数が何らかの改善を求めていることが分かった。

一方、入手したい情報チャネルについては、いずれもデジタルを介した情報収集ニーズが高い。デジタルチャネル比率が50%以上で良いと考える理由についての回答では、「自分の好きなタイミングで情報収集できる」（KEE・準KEE医師69.2％）、「短時間で情報収集できる」（同54.1％）、「自分が必要と思う情報のみを選んで情報収集できる」(同49.1％)と続く。

◎対面での双方向コミュニケーション求める

ただ、医師側もMSLとの対面でのディスカッション・コミュニケーションを重視している状況も読み取れた。自由コメントでは、「一方通行の情報に頼りたくない」、「双方向コミュニケーションで気づくことがある」、「一方的な情報提供より疑問点などをすぐ質問できる環境が必要」などがあり、内容・医師に応じたチャネル活用により、医師の情報収集の頻度向上、製薬企業のMA活動への関与増加が見込まれると分析している。