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中医協総会 薬局の夜間・休日対応、周囲薬局との連携通じ地域で実現を フォローアップは対象疾患拡充へ

公開日時 2023/11/09 04:51
厚労省は11月8日の中医協総会に、薬局・薬剤師の夜間・休日対応について、周囲の薬局との連携により、地域で機能を満たし、継続的な対応を可能にする方向性を示した。夜間・休日対応は、常勤薬剤師2人以下の薬局が半数近いなかで対応が難しく、かかりつけ薬剤師指導料届け出のハードルとなっていた。この日の中医協には、ポリファーマシーの解消など、かかりつけ薬剤師が職能を発揮することが示され、さらなる推進を求める意見も出た。このほか、薬剤師の調剤後の継続的な薬学的管理(フォローアップ)を評価する「調剤後薬剤管理指導加算」の対象疾患を、心不全など拡大する方向性に診療・支払各側から賛同する声があがった。

◎常勤薬剤師2人以下の薬局が半数 夜間・休日対応できず かかりつけ薬剤師届出のハードルに

夜間・休日対応を含む24時間対応は、地域包括診療料やかかりつけ薬剤師指導料の算定のハードルとなっていることが指摘されている。厚労省保険局医療課の調査によると、かかりつけ薬剤師指導料を届出ない理由としては、「夜間・休日に患者からの相談に応じる体制が取れないから」が最多となっている。一方で、「夜間・休日対応していない」と回答した薬局のうち、複数の薬局と連携することで対応可能とした薬局は25.4%あったという。厚労省は論点に、地域において周囲の薬局との連携により対応する方向性を示した。

診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「1店舗あたりの薬剤師が2人以下の薬局が約半分を占めており、時間外の対応の課題として、薬剤師の精神的・身体的負担が大きいこと、薬局の勤務人数が限られていることが課題となっている」と指摘。「自薬局での対応を原則としたうえで、地域での薬局同士の連携による体制確保など、働き方に配慮しつつ、どのようなことが必要か、フィージビリティ(実現可能性)を考慮に入れた見直しが必要だ」と指摘した。「休日・夜間に何かあった時に、患者さんがいつでも相談でき、必要な時に調剤ができる体制は重要だと思っている。ただ、個々の薬局では限界がある。自薬局での対応を原則した上で、地域の薬局が連携して地域医療を支えていくことに取り組んでいきたい」と理解を求めた。

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、近隣の薬局と連携した輪番で24時間対応を行っている薬局が少ないことに触れ、「地域支援体制加算を届け出ている薬局との連携、あるいは自治体や薬剤師会を通じた地域の医療・介護関係者への周知などをより積極的に進めることが重要ではないか」と述べた。

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、周囲の薬局との連携による24時間体制構築を「重要な機能」としたが、「具体的にはどのような薬局と連携するかについて、薬剤師の養成や配置の観点からも、よく検討する必要がある」と注文を付けた。

◎薬局機能見える化へ 診療側・森委員「地域薬剤師会が責任もって取り組むべき」

薬局が地域の中で機能を発揮するためには、夜間・休日対応など、個々の薬局が有する機能を“見える化”し、自治体や地域薬剤師会などを通じて、医療・介護関係者や地域住民に周知することも重要になる。診療側の森委員は、「自治体や薬剤師会が中心となって夜間・休日の輪番体制の整備や、インターネットや広報誌を通じた地域住民などへの周知、医療・介護の関係者の定期的な意見交換などが重要だ。このような役割は、各地区の薬剤師会が責任を持って取り組んでいくべきであり、日本薬剤師会としてもしっかり進めていく」と述べた。

◎調剤後のフォローアップで心不全による再入院回避に期待の声あがる

かかりつけ薬剤師の職能として、調剤後の継続的な薬学的管理(フォローアップ)が求められている。インスリンなどの糖尿病治療薬の調剤後のフォローアップについては、「調剤後薬剤管理指導加算」がある。厚労省の調査によると、診療所・病院からは、心不全、認知症について、フォローアップのニーズが高い傾向が示された。特に心不全については、再入院の要因として「治療薬服用の不徹底」があげられており、退院後の継続的な薬学的管理によりアドヒアランスを維持することが再入院を防ぐために必要とされている。このため、第2期循環器対策推進基本計画でも、かかりつけ薬剤師・薬局による服薬アドヒアランスの向上に資する薬学的管理・指導が取り組むべき事情に位置付けられている。医療現場でも取り組みが広がっている。淡海医療センター(滋賀県)と近隣薬局では、薬の飲み忘れの有無などを記す“心不全フォローアップシート”により、医療機関と薬局が情報を共有。薬局が継続した患者のフォローアップを行うことで、再入院の回避につながっているという。

診療側の森委員は、「診療所や病院からもフォローアップのニーズがある糖尿病、心不全、認知症に関しては取り組みが進むよう、何かしらの見直しや評価は必要だ。特に患者数の増加に伴って、心不全パンデミックが到来する可能性がある状況では、循環器疾患の薬物治療における薬局薬剤師によるフォローアップを検討する価値は十分にあると考える」と述べた。森委員は“フォローアップ”について、「患者さんが安全・安心に薬を使用する上で極めて重要な業務」と強調し、「薬剤の特性に応じてフォローアップを行い、必要に応じて医師への情報提供を行う」と述べた。特に心不全については症状によっては緊急受診が必要なケースもあり、医師との連携の必要性を強調した。

診療側の多くの委員から、特に心不全を対象に含めるよう求める声があがった。診療側の林正純委員(日本歯科医師会副会長)は、「骨粗鬆症薬と様々な口腔との関連薬剤や、ポリファーマシーによる口腔への影響も非常に重要な視点と考えている。医科歯科連携に加えてうまく医歯薬連携が進められるよう、ご検討をいただきたい」と述べた。支払側の松本委員は、「症状の悪化、再入院の回避などにつながることを踏まえれば、対象拡大を含めて取り組みを推進の方向性に異論はない」と述べた。

診療側の長島委員は、「薬剤師の本来的な業務に含まれるものだと思うが、評価を拡充するのであれば、単にニーズに応えれば良いというだけでなく、例えば、フォローアップが必要な扱いの難しい薬剤であることなど、専門的な薬学的管理が求められ、その手順や効果が確認できるのかについて検討するべきではないか」と慎重な姿勢を示した。

◎服薬情報提供料3伸び悩み 診療側・長島委員「医療機関や介護関係者との共同作業」

患者の服薬状況などについて、薬局と医療機関の連携強化も求められるところだ。ただ、患者や薬剤師が必要性を認めた場合に算定できる「服薬情報等提供料2」の算定回数は伸びているものの、2022年度診療報酬改定で新設した、医療機関からの求めに応じて入院予定の患者の服用薬の整理および服薬情報を提供することで算定できる「服薬情報提供料3」の算定回数は低率にとどまっている。算定しない理由としては、「医療機関からの依頼がないため」が95.5%と圧倒的という調査結果もある。

診療側の長島委員は、「単に情報を提供するだけでなく、薬局と医療機関、あるいは介護関係者との連携を強化することは、薬局だけでなし得るものではなく、医療機関や介護関係者にも対応が求められる共同作業だ。そのためには、どのような情報提供が必要か。あるいは情報提供した結果、どのような効果が得られたのか。医療提供体制全体から見て、どのような必要性があるのかという視点も必要ではないか」と指摘した。支払側の松本委員は、「医療機関からは持参薬に関する負担やリスク軽減につながるメリットがあげられている。薬局がより積極的に地域医療連携に参画していくことが重要ではないか」と述べた。

介護職との連携も求められる中で、診療側の森委員は、「介護支援専門員などの多職種との情報連携も不可欠だ。その際に、質の高い指導や在宅におけるチーム医療の推進のためには、単なる服薬情報だけではなく、嚥下や口腔機能、排便や睡眠の状況など患者の生活情報を多職種で共有することにより、有意義な連携が一層進められるような対応が必要だ」と述べた。

◎敷地内薬局「誘致や出店、止まらない状況」 診療側・森委員「国の方針に大きく反する」

この日、厚労省は論点にあげていなかったが、診療側の森委員は敷地内薬局に言及した。敷地内薬局をめぐっては、22年度改定でも評価が引き下げられたが、医療機関による誘致や出店は1年間で100か所以上にのぼるといい、「誘致や出店が止まらない状況」と説明。「現状における医療機関と薬局との関係を考えると、国の方針に大きく反するものだと考える」と述べ、さらなる適正化を求める姿勢も示した。厚労省に論点としてあげることも求めた。



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