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新卒初任給30万円時代が示す未来

エディタV2
なぜいま、新卒者の初任給が高騰するのか 
ここ1-2年、新卒採用者の初任給が上がっているというニュースをよく耳にしますが、なぜ、いま新卒者の初任給が高騰しているのでしょうか。

テレビニュースの解説では、
・人手不足で採用環境が厳しい中、給料を上げないと優秀な人材が集まらない
・業績が良い企業が、長年据え置いてきた初任給に手をつけたことが周りの企業にも影響を与えている
・物価高騰のあおりを受けて上げざるを得ない
などということが言われていますが、皆さんはどう思われますか?

新卒者の採用人数が限られる中で初任給を5万円上げること自体は正直なところ企業経営に大きな影響を与えませんが、新卒者だけを優遇することの不公平感に対応するために既存社員の給料体系にも何らかの見直しが求められることを考えると、総額人件費としては長期にわたって大きなインパクトを持つことになります。にもかかわらず初任給を上げるということは会社として何かを考えていると訝る方がいても不思議ではありませんが、実はその答えは❝人事制度の大変革❞にあると言われています。
予測される将来の人事制度の変更
実際、人事関係の知り合いが集まると、❝メンバーシップ型人事からジョブ型人事への変更❞というトレンドワードが必ず話題に挙がります。これは会社と社員の関係性の変化を意味していますが、日本の雇用形態の根幹をなしてきた終身雇用をある意味で否定する変更なので、社員のキャリアにとってはとても大きな影響を与えることになります。

ちなみに、両者の特徴は以下の通りです。
●メンバーシップ型雇用:
個々の社員の職務内容や勤務地を緩やかな定義のもとに採用し、長期的な雇用関係の中で企業が各社員に適切な業務を割り振る形式の雇用形態。会社は、社員の成長に合わせて個々の社員に与える役割を見直していくが、結果的に年功的に役割が決まることが多い。

●ジョブ型雇用:
社内の個々の職務内容を明確に定義したうえでその職務に必要なスキルを持つ人材を採用する雇用形態。入社後の本人の意思によってジョブを変更することも可能だが、あくまで自身が就きたいと考えるポジションに求められるスキルや経験を有することがジョブチェンジの条件となる。

現在すでにソニーや日立、資生堂などをはじめとする大手企業がジョブ型雇用に舵を切っており、製薬業界でも第一三共が導入するというニュースが流れていますが、その主な理由は❝適切な人材の確保❞です。ビジネス環境の変化のスピードが社員の成長スピードと釣り合っていれば社内の人材を育成・活用するだけで環境変化に対応できるのですが、データサイエンスやAIの活用でビジネスの変化が驚異的に早くなってくると、事業の成長に釣り合う人材要件が急激に高度化し 且つ めまぐるしく変化し続けるため、ジョブ型雇用で適切な人材を適切なタイミングで確保することが不可避になってきています。
ジョブ型雇用におけるキャリア形成の注意点

さて、こうしたジョブ型雇用への移行は社員にどのような影響を与えることになるでしょうか?実は、個々人のキャリア形成や給与所得にかなり大きな影響を与えるので具体的に注意点を見ていきたいと思います。

(1) キャリア形成への影響
先述の通り、ジョブ型雇用では個々の職務内容を明確に定義したうえでその職務に必要なスキルを持つ人材を採用(または配置)するのですが、そのポジションに就く人は要件を満たしてさえいれば誰でも構わないというのが大きな特徴です。メンバーシップ型雇用では、「このポジションは経験豊富なベテラン向き」や、「ここは3年ごとに担当者が変わる」などといった暗黙の了解がありますが、ジョブ型雇用にはありません。したがって、希望のポジションに就くためには求められる要件を満たすことが必須となります。また、もしそのポジションに複数の希望者がいた場合は、競争に勝つ必要があります。社歴や年齢的な要素が考慮慣れないため、自身の目標に向けた自己研鑽が必須ということです。

(2) 給与所得への影響
ジョブ型雇用の場合、各ポジションの職務要件が詳細に定義されますが、そこには職務内容や求めるスキル以外に、評価基準や給与条件も明記されています。これを会社を主語に言い換えると、「Aというポジションにはこういうタスクがあるので、こんなスキルを持った方にお願いします。また、こういう成果を挙げた際にこの評価となり給与は●●●万円です」というイメージです。とてもクリアなのでよいのですが、このAというポジションには誰が座っても同じ給与ですし、また何年やっても同じ給与のままということは理解しておく必要があります。従来のメンバーシップ型雇用の場合、給与には年功給の要素が多分に含まれるのに対して、ジョブ型雇用の場合は一切含まれないということです。


これらのことを考えると、ジョブ型雇用時代に自分自身のキャリアをうまく切り開いていくためには以下の3点が重要になると言えそうです。

(A) 業界の未来を考えた行動をとる
10年ほど前、抗がん剤を経験しているMRの皆さんは転職市場で引く手あまたな状況でした。いくつかの会社が抗がん剤領域に進出するにあたってその経験者は喉から手が出るほど欲しい人材だったためです。ところが、今では抗がん剤経験者の中でも優秀な成績を収めていることが求められるようになっています。
これは一例ですが、市場やビジネス環境は常に変化しているので、常に業界の動向やトレンドをウォッチして、将来的にどのようなジョブが求められるようになるのかを理解することが重要です。そのうえで、そこにつながる知識を習得たりネットワークを構築するなどの行動が取れれば良いキャリアが築けると思います。

(B) 適切な目標を立てて行動する
ジョブ型雇用では常に新しい目標をたててそこに向かい続けることが求められます。そうしないといつまでも今の仕事・給与から脱却する(次のステージに進む)ことができないからです。だからこそ、定期的に自分の経験や知見を棚卸ししたうえで希望するジョブに求められるスペックを理解し、どのタイミングまでにどうなっておくべきかを見据えることが重要になります。この「目標設定・目標達成」には、自身の努力もさることながら、自分の応援団を増やしたり他者の視点をうまく取り入れるなど周囲と適切なコミュニケーションを取ることがカギとなります。

(C) 自分の市場価値をウォッチする
ジョブ型雇用の特徴の一つに雇用の流動性が挙げられます。終身雇用という約束の中で社内での成長を促すメンバーシップ型雇用とは異なり、完成された人材を各ジョブに当てはめる考え方のため、どうしても人材の出入りは激しくなります。そのため、自分の経験やスキルや知見が社内外でどのようなポジションにあるのかを正しく理解し、自分を高く評価し求めてくれる環境を探すことはとても重要になります。
ちなみに、どこでも生き抜くヒントとしては、「自分にしか発揮できない価値を認識する」ことが挙げられますが、いくつかの専門性を掛け算することでそうしたユニークな価値を生み出しやすくなります。


さて、いかがでしたでしょうか。納得感の高いキャリア形成のために充分な準備をしていただけていれば幸いです。

◆第一三共のジョブ型人事に関する記事
https://www.businessinsider.jp/article/2505-daiichisankyo-job-focused-employment/?page=2



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