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製薬キャリアの道しるべ 第二回

エディタV2

第一回では、私自身のキャリアを例にとりながら、私が何を考え実践してきたのかを駆け足でお話しました。自らの経験を振り返ることで、キャリアが単なる会社でのポジションや経験にとどまらず、会社の外の世界にも広がっているということを少なからずお伝えできたのではないかと思います。
今回は、改めて「キャリアとは何か?」について振り返り、とくに会社というフィールドの中で、自分のキャリアをどのように描くかに焦点を当てたいと思います。
改めて「キャリア」とは何かを考える?——定義を明確化する
まず、「キャリア」という言葉の定義を整理しておきましょう。
厚生労働省は、キャリアを「過去から将来の長期にわたる職務経験やこれに伴う計画的な能力開発の連鎖を指すもの」と定義しています。一方で、より広義には「時間の経過に伴う働き方の変遷」として捉える視点も存在します。
「キャリア」を会社の枠内のみで捉える必要はない
私自身は、キャリアの専門家ではありませんが次のように定義しています:
狭義には、「職務経歴書に記載する会社でのポジションや経験のこと」を指し、広義には、「副業、プロボノなどのプライベートも含めた人生の歩みそのもの」である。
つまり、会社での肩書きや役職だけでなく、個人として積み重ねてきた全ての経験と学びがキャリアを構成するということです。この視点に立てば、キャリアは会社の枠を超えて、より豊かで多面的なものとして捉えることができます。
会社人生にコミットしてきた30代までの自分
そんな私も22歳で会社に入り、30代半ばまで狭義のキャリアしか頭にありませんでした。常に気を張っている状態で、隙を見せれば生存競争から離脱してしまう、そんな精神状態だったと思います。一方、その期間に得られたビジネスパーソンとしての基礎体力があるからこそ今があるのも確かです。一方、「20代から会社の枠を越えた視野を持っていたなら?」人生は変わっていただろうか。そう考えることもありました。ただ、人生100年時代と謳われる今、遅すぎるということはないのだと思います。気づいた時点で今が最善なのです。
キャリアを多様性(幅)×専門性(深さ)で捉える
私は自分自身のキャリアをいくつかの軸で考えています。一つは「会社の枠の中か外か?(幅)」。会社の枠の中においては、営業、マーケティング、メディカル、学術、研究開発などの部門があります。経験部署が増えればキャリアの多様性をもっているということになります。一方、会社の枠の外で、ボランティア活動、プロボノ、副業などの活動をしていれば、これもまた多様性をもっています。
次に「専門性(深さ)」です。各々の経験において、それを極めていけば専門性は高まります。営業職でポジションをあげることもその一つでしょうし。営業経験を活かした副業をしていればそれもその一つではないかと思います。一方、会社の外に目を向ければ可能性は無限大です。どこまでをキャリアに入れるのかは悩ましいところですが、厚労省の定義「過去から将来の長期にわたる職務経験やこれに伴う計画的な能力開発の連鎖を指すもの」ではこのように記載されており、個人的には何かしらの開発に繋がっていること、および職務経歴書に記載できる深さがあればキャリアとして考えることができるのではないかと思います。その観点での専門性(深さ)は会社の枠を越えた捉え方も重要だと思います。
会社人生の「中で」描くキャリアの輪郭
余談が長くなりましたが、本題に入りたいと思います。今回はより実践的なアプローチとして、「会社というフィールドの中で、自分のキャリアをどのように描くか」に焦点を当てます。
一般的なビジネスパーソンにとって、平日の大半は会社で過ごし、本業に全力を注ぐのが現実です。そうした環境において、「どんな会社で、どんな立場で働くか」という問いこそが、キャリア設計の核心となるのです。
エキスパートか?マネジメントか?それとも両方か? キャリアの3つの軸
私自身、会社におけるキャリアパスは、「エキスパート型」「マネジメント型」、そして「ハイブリッド型」の3つの軸で分類されると考えています。

エキスパート型:専門性を深化させ、蓄積した知見とスキルを駆使して企業価値の創造に貢献する道です。MR、メディカル、薬事、マーケティング、データサイエンス、開発、流通、生産などの分野において、その道のプロフェッショナルとして活躍することになります。

マネジメント型:チームや組織を率い、人の力を結集することで成果を創出する道です。部門責任者やプロジェクトリーダーとして、組織運営の舵取りを担う役割です。エキスパートの力を最大化させるマネージャーです。

ハイブリッド型:エキスパートとマネジメントの双方を極める道です。深い専門知識を持ちながら、同時に優れた組織運営能力も兼ね備えた人材として、特に複雑なプロジェクトや新規事業の立ち上げにおいて重宝される存在となります。例えば、薬事の専門家でありながら部門全体を統括したり、マーケティングやメディカル領域の深い知識を持ちつつグローバルチームを率いるようなポジションが該当します。

これら3つの道は、それぞれ異なるスキルセットと日々のコンピテンシーを要求します。特にハイブリッド型は両方の能力開発が必要となるため、より戦略的なキャリア設計が求められます。どの道を選択するかによって、あなたのキャリアの軌道は大きく変わってくるでしょう。企業によってはマネジメント型ハイブリッド型が求められる傾向がありますが、私はこれからの時代、エキスパート型のキャリアは社外にも発展性があると考えています。ここで述べたいのはどの型が優れているということではなく、どんな働き方、どんな人生を歩みたいのかを考える必要があるということです。また、キャリアのステージによっても考え方は変わってくるため一度決めたら引き返せないということはないと思っています。一方、エキスパート型については、既定路線の専門性を極めていくことが競合優位性を生むことにはならない可能性があります。なぜならば、生成AIの劇的な進化が多岐にわたる職種の役割そのものに影響を与えるからです。
自分はどの道を歩むのか?——ライフラインチャートで振り返る
上記で述べたように選択肢に「絶対的な正解」は存在しません。重要なのは、自分が将来どのような姿になりたいのか、そしてそのために現在どのような経験を積み重ねるべきかを明確に言語化することです。
そのための有効なツールの一つが「ライフラインチャート」です。これは、これまでの人生における重要な出来事や転機を時系列で可視化し、その時々の満足度や充実度を曲線で表現する手法です。

ライフラインチャートの作成方法
  1. 横軸に年齢(または年次)、縦軸に満足度・充実度を設定
  2. 大学時代、就職、異動、昇進、プロジェクト参画など、重要な出来事をプロット
  3. その時々の気持ちの高低を線で結び、人生の波を描く
  4. 特に充実していた時期と、その理由を分析する
このチャートを描くことで、「自分はどんな時にやりがいを感じるのか」「エキスパート的な業務とマネジメント業務のどちらにより充実感を覚えるのか」といった傾向が見えてきます。

例えば、新しい専門知識を習得した時期や、難しい薬事案件を解決した時にチャートが上向きになる人は、エキスパート型の適性が高いかもしれません。一方、チームをまとめてプロジェクトを成功に導いた時期に充実感を覚える人は、マネジメント型の素養があると言えるでしょう。

推奨したいのは、こうした自己分析を踏まえて、「今の次」という短期的視点ではなく、
「2段階先」を見据えた逆算思考です。例えば:
  • 「10年後には○○領域のグローバルプロジェクトを統括する人材として認知されていたい」
  • 「将来的には地理的制約を超えて、どこでも価値を発揮できる専門家になりたい」
このような具体的な将来像を描くことができれば、次に取るべき行動と選択肢は自然と明らかになります。
「偶然」の積み重ねを、「意図ある偶然」に昇華させる
セレンディピティという言葉はご存知でしょうか。当然のことながら、キャリアは計画通りに進むとは限りません。人事異動、上司との関係性、家族の事情など、予測困難な要素が数多く存在します。
それでも、自分の中に「この方向性で進みたい」という明確な軸が存在すれば、予期せぬ出来事をチャンスへと転換することが可能になります。
クルンボルツのプランド・ハップンスタンス(計画された偶発性)理論が示すように、キャリアの8割は偶然によって決定されるとされています。しかし、その「偶然」をただの偶然で終わらせるのではなく、「意図ある偶然」として活用していく——これこそが、キャリアを自分の手で主体的に描いていくということなのです。
自らが変わるために何を変えるのか
ここまで、社内のキャリアについて私なりの見解を述べさせていただきました。とは言え、何からスタートすればいいの?という声が聞こえてきそうです。私は大前研一氏の「自分を変える3つの方法」を意識するようにして、実践してきました。
  1. 時間配分を変える
  2. 住む場所を変える
  3. 付き合う人を変える
1つだけ付け加えおくと、「付き合う人を変える」というのは単に今までの付き合いをリセットするということではないと私は考えています。今の自分が在るのは過去、お世話になった人々のおかげです。そういった方々を大切にしつつ、新しい出会いを求めるのです。気を遣わず心地良い関係性は大切ですが、自分とは異質の人々は新しい価値観や刺激を提供してくれるでしょう。

言うは易く行うは難しですが、みなさんも実践してみてください。私はマインドセットは容易に変わるとは考えていません。マインドセットとは「物事の捉え方」「考え方の枠組み」であり、経験の積み重ねの結果なのです。よって、マインドセットを意識するともに、まずは行動を変え、仕組み化することで自分を改革することが何かを変えることに有効ではないかと思います。
結びに——「会社を戦略的に活用し、自分のキャリアを培養する」
キャリアは「与えられるもの」ではなく、「能動的に勝ち取るもの」です。
会社という環境を戦略的に活用しながら、自分にとって本質的に意味のある経験を積み重ねることで、気づけばキャリアは確実に自分自身のものとなっていくのではないでしょうか。次回は、そうした「自分独自の軸を構築するために必要な要素」について、さらに深く掘り下げて探究していきたいと思います。




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