プロポキシフェン含有の合成麻薬性鎮痛薬が米市場から撤退
公開日時 2010/12/01 04:00
アメリカのXanodyne Pharmaceuticals(本社・ケンタッキー州ニューポート、Natasha Giordano最高経営責任者兼社長)は11月19日、プロポキシフェン含有の合成麻薬性鎮痛薬・ダーボンと、プロポキシフェンとアセトアミノフェンの合剤であるダーボセットをアメリカ市場から撤退することを決定した。服用患者で重篤あるいは致死的な不整脈が発生するという新たな臨床データに基づき、FDAが市場撤退を求めたことに応じた措置。
プロポキシフェンは1957年にイーライ・リリー社がFDAから承認を取得し、05年にXanodyne Pharmaceuticalsに売却した。同薬に関しては既に1978年にアメリカの消費者団体・パブリックシチズンがベネフィットよりもリスクが高いとして市場撤退を求める要望をFDAに提出。また、世界各国で過量投与による依存症患者や自殺者が相次ぎ、05年1月にはイギリスで販売禁止となった。しかし、FDAは推奨用量ならば、リスクよりもベネフィットが上回るとして販売は継続してきた。
この間もパブリック・シチズンがプロポキシフェンに起因する死者は1981~1999年の間だけで2000人以上にのぼるとの推計を発表し、06年に再び市場撤退を求める要望をFDAに提出するなど、販売継続に批判的な声は少なくなかった。
09年1月、FDAの麻酔・救命医薬品諮問委員会と医薬品安全リスク管理諮問委員会の合同委員会は14対12で市場撤退を勧告。欧州医薬品庁も同年6月にプロポキシフェン含有医薬品のEU域内からの市場撤退を決定したが、FDAはその翌月に過量投与の危険性に関する黒枠警告の追加とXanodyne Pharmaceuticalsに心臓へのリスクについての新たなデータ提出を条件に販売を継続していた。
今回、Xanodyne社から新たなデータ提出を受けて審議をした結果、ポロポキシフェンの投与が突然死を含む心血管リスクを上昇させることが明らかになったとしてFDAは市場撤退を推奨することとなった。
また、既に同薬に関しては複数の会社からジェネリック品が発売されているが、そのうちの1社である米ナスダック上場のCornerstone Therapeutics(本社・ノースカロライナ州ケーリー、Craig A. Collard最高経営責任者兼社長)は11月22日、バラセット325をはじめとするプロポキシフェンとアセトアミノフェンの合剤の3製品を市場から撤退させると発表した。同社の3製品の年商規模は約800万ドルで、戦略製品でもないことから業績にはほとんど影響はないとコメントしている。これを受けて、ナスダック市場でのCornerstone Therapeutics社の株価は、発表前の6ドル25~50セントから6ドルを割る下落を見せている。