開発候補品の評価行動、欧米と日本の企業で差異 HS振興財団調査
公開日時 2009/03/25 23:00
ヒューマンサイエンス振興財団は3月25日、欧米大手製薬企業の研究開発戦略
などを調査した報告書をまとめたと発表した。報告書によると、欧米企業は新
規承認の獲得を最優先と位置づけて、自社品や導入品にこだわりを持たずに同
じ基準で開発候補品を評価する傾向が見られたと分析。その上で日本の製薬企
業に対し、「上市後の利益率が高いことに囚われて、未だに『自社品優先』で、
開発中断の判断の遅れが少なくない」と指摘し、欧米企業の視点を検討すべき
と提言した。
この報告書は、08年度国外調査報告書「グローバル開発時代における研究開発
戦略-創薬の新しいアプローチとパイプライン創出-」と題するもの。欧米の
規制当局、業界団体、製薬企業を計19か所(うち製薬企業7ヵ所)訪問し、研
究開発戦略や世界同時開発の動向などを調査した。
その結果、欧米企業では、開発品の資質の早期見極めに向けて、開発の続行・
中止を判断する担当役員や専任部署を設けたり、共同開発パートナーのグロー
バルな発掘などに注力していた。その一方で、研究部門と開発部門の一体化、
更にはマーケティング部門も加えた連携強化を図る企業が散見された一方で、
ノバルティスは、研究部門の独自性を尊重する体制を敷いていた。ノバルティ
スはこの体制を敷いて6年が経過した現在、「世界ナンバー1と評価される充
実した研究開発パイプラインを保有するに至った」という。市場性が小さくて
も、まずは最初の適応を確実に取得することにフォーカスした体制・戦略で、
報告書では、医薬品のターゲットを見つけることが困難になっている現状を踏
まえると、「日本企業にとって、十分に考慮すべきものと考える」としている。