日本製薬医学会は7月28日に東京都内で開催された年次大会で、医薬品開発能力促進機構（DDCP）と「製薬企業が求める人材とその価値最大化のキャリアサポート」をテーマに共催セッションを行った。登壇者からは、医師など医療資格保持者や研究者の採用について、時間がかかるがインターンが有効であることや、カジュアル面談などを通じ、採用する側・される側の双方が入社後の仕事内容やキャリアパスについて理解を深めておくことが大切などといった意見が相次いだ

◎医師はミッドキャリアで異業種転職　研修ニーズ高く

DDCPの玉田寛理事が「医師・研究者採用および採用後のキャリアサポートに関するアンケート調査結果」を紹介した。企業未経験者の採用に際し、ビジネススキル研修は必要かとの問い、「（必要と）感じる」と回答した人は、研究者採用では５～6割程度だった。一方で医師の採用では8割に上ったことがわかった。また企業未経験者の採用については、医師・研究者採用ともに「チームワークに適しているか」が最重要視されていた。

玉田理事は調査結果について、「研究者は博士号取得後まもなく企業に入職し、本来の自分の専門性に近い創薬研究から徐々に製薬キャリアを積み上げていくのに対し、医師は専門医を取得するなどで年齢を重ねたうえで、病院やアカデミアから企業という異業種への転職となるため、入職時に混乱してしまい、追加の研修ニーズが生じているのではないか」と指摘した。

◎成功のカギはインターンやカジュアル面談

パネルディスカッションではジェンマブ社でアソシエイトディレクターを務める安藤博司氏が登壇し、「採用時にはまず、チームワークに適しているかどうかをみている」と指摘した。同氏は、製薬企業に入社すると様々な部署と連携する必要があるため、これまで培ってきた専門性を活かしながらも、いかに組織に順応できるかという視点から採用を行っていると説明する。これまでの採用を振り返り、「時間や面接官の人数が限られる場合には、うまくいかなかったケースが多い。複数人でいろんな角度から面接や質問をして気づく点がある」と述べた。

成功事例については、玉田理事やDDCP設立理事でノヴァン社（米国ノースカロライナ州）の中鉢知子氏が、インターンからの採用や信頼する人からの紹介、口コミを挙げた。これに対し、武田薬品の犬島大介氏は、面接前にカジュアル面談を行う重要性を訴えた。犬島氏は、「今は転職したくないという方とも面談している。キャリアパスや仕事内容について説明し、１、2年後に採用できたというケースが最近増えている」と紹介した。同じく武田薬品の井筒美和氏も、「面接では聞きづらいこともあると思うので、私も必ずカジュアル面談をしている。チームワークに適しているかや、コミュニケーション能力を確認している」と述べた。

今後の採用活動については、国内の医師や研究者の採用についてもインターンを積極活用することや、抽象的な質問を通し、思考プロセスを知ることが必要なのではないかという意見が上がった。

一方、入社後のケアについては、社内ネットワークが構築できているかが重要なポイントだとの意見が相次いだ。安藤氏は「自分は十分コミュニケーションを取っているというつもりでも、外から見た時に不十分というケースは往々にしてある。メンターや上司に加え、同期とのつながりも重要だと思う」と述べた。犬島氏もフリーアドレス制やグローバル化によって、社内のネットワークの構築がより重要になっていると同調した。

ブリストル・マイヤーズスクイブの山本恒久氏は、「医師、研究者の中途採用は、企業未経験者を採用するため難しい部分もあるが、多様性という意味で企業にもたらすプラスの面が必ずあると思う。企業側には、採用者が専門性や知識を生かせるような教育システムに加え、フレキシブルな採用ができるような企業風土を、採用者側には気概が必要だと考えた」と述べ、セッションを締めくくった。

（訂正）標題に誤りがありました。訂正します。（8月22日18時45分修正）