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PMDA・安川氏 「薬剤師は創薬のプレーヤーとして主体的関与を」 新薬トレンド変化で高まる適正使用の重要性

公開日時 2024/11/05 07:00
医薬品医療機器総合機構(PMDA)の安川孝志執行役員(新薬審査等部門担当)は11月3日、日本薬局学会で講演し、新薬開発のトレンドが変化する中で、「薬剤師は創薬のプレーヤーとして主体的にかかわってほしい」と呼びかけ、適正使用に積極的にかかわることを求めた。これまでは臨床第3相試験を通じて日本人の有効性・安全性データが提供されてきたが、制度の変化や小児・希少疾患薬などの上市が見込まれるなかで、「より情報が限られた状態で承認されることが増えてくる」と述べた。2024年度調剤報酬ではRMPを活用した薬剤師の情報提供について評価が新設されたが、「真意をきちんと理解した上で、RMPも活用しながらしっかりとかかわっていく」必要性を指摘。薬剤師の専門性・職能発揮が求められる中で、「患者を守る、あるいは様々な医療情報とか患者情報を活用することが薬剤師にとって、今後より必要になってくる」と強調した。

医薬分業をめぐっては、「2兆円の調剤技術料が業務に見合っているか」、「患者が医薬分業のメリットを実感できているのか」など厳しい声があがり、逆風が吹いてきた。安川氏は24年度調剤報酬改定に薬剤管理官としてかかわった立場から、「対外的な指摘は少なかったように見えるかもしれないが、流れは同じ」と説明。「医薬分業に対して「患者のためになる業務を評価すべきであって、単に処方箋を調剤して出すという行為だけで評価される時代ではないということが常に強く言われている」と述べた。

一方で、薬剤師に期待を寄せる声も多い。「期待される根幹は、まさに薬剤師の専門性であり職能の発揮。専門性の向上を常に意識をしてもらいたいと思うし、患者を守る、あるいは様々な医療情報とか患者情報を活用することが薬剤師にとって、今後より必要になってくる」と強調した。

◎RMP活用の調剤報酬点数「真意理解し、RMP活用しながら患者に情報提供を」

薬剤師が求められる職能発揮に向けて、医療情報の活用の観点からRMPについても言及した。安川氏は、臨床試験でわかる有効性・安全性情報には限りがあることに加え、治験が一定のコントロールされた条件下で実施されていることから、「市販後に、様々な医療環境で有効性・安全性をしっかり見ていくことが重要。そこからの適正使用にいかにつなげていくかが大切だ」と述べた。

2024年度調剤報酬改定では、医薬品リスク管理計画(RMP)に基づく説明資料を活用する場合など、医薬品の安全性に関する情報を提供する場合の評価として、特定薬剤管理指導加算3(5点)を新設した。安川氏は、薬剤管理官として調剤報酬改定にかかわったが、「単に患者向けの資材があるから、加算を付けたという単純な表面的な話ではない」と指摘。患者への説明の評価だけでなく、調剤管理料の算定要件として、処方内容の確認の際にもRMPの活用を求めている。「真意をきちんと理解した上で、RMPも活用しながらしっかりとかかわっていく」必要性を強調した。

これまでは、日本人を含む第3相臨床試験により、有効性・安全性情報は提供されてきたが、ドラッグ・ロス解消の観点から、迅速な患者アクセス確保することが重視され、条件付き承認などで特に、小児や希少疾患では情報が限られた状態で承認されることが今後増加すると指摘。「薬剤師は、どういった情報で認可されたのか、どのようなリスクがあり、なぜその薬を使わなければならないかを理解したうえで、患者に説明してかなければならない」と述べ、薬剤師が適正使用に積極的にかかわる必要性を強調した。

調剤報酬の要件とした理由について、「本来、薬剤師自らが様々な情報を積極的にかかわるべきだが、残念ながら十分活用できていない。診療報酬を検討するときに、要件に入れることでより活用できるのではないかという要望が安全部門からあったことを踏まえて、要件付けしている。本来は、そんなことをしなくても活用すべき」と苦言も呈した。

◎医療DXで患者情報入手 問われる薬剤師の「プロフェッショナルとしての責任・覚悟」

一方、患者情報の活用の観点から、オンライン資格確認や電子処方箋システム、電子カルテ情報共有サービスなど医療DXを取り巻く環境整備が急速に進んでいることも説明。薬剤師にとって得られる情報が増える中で、「DXを進めば進むほど、業務の質は大きく向上するのではないか」と期待感を示した。

一方で、薬局が患者情報を入手できるようになる中で、薬剤師としての「責任」が問われると指摘。「情報活用できる手段が増えるのは強力な武器になるが、検査値を見逃さないという話など、薬剤師にとってはプロフェッショナルとしての責任・覚悟を問われていることに等しい」と強調した。

また、オンライン服薬指導が浸透する中で、来局するメリットを示すことも必要になる。安川氏は「住民にとって薬剤師は何のために存在するかというのが問われる時代が来る」と強調。「薬剤師は情報活用することが得意な職種だと思う。しっかりと活用すれば、患者にとってもプラスになる、住民にとってもプラスになる」とも述べた。

◎「自分自身の業務や成果を見える化し、発信を」 地域薬剤師会の姿が「見えない」と苦言も

24年度調剤報酬改定は、「医療現場の薬剤師の意見と改定の根拠となるデータが示されたから実現された」ことも強調。実際に、在宅がん患者へのターミナル期の訪問回数の緩和や慢性心不全患者へのフォローアップの評価新設などが実現された。

安川氏は、「高尚な論文を書かないとダメという話よりも、現場で苦労する実態や地域の取組み事例をきちんと示すことで、流れとしては理解が深まる。ただ単に困っているというだけでは全く説得力がないので、具体的な調査を基にしたデータは必要になってくる」と述べた。「自分自身の業務や成果の見える化し、発信するということが大事。学会発表もそうだが、業務を振り返ることが重要になる」と強調。「結果的に薬剤師の業務が自ずと対外的にも理解されるようになる。主張や要望したい点は、まとめて分析して示すことが効果的なのではないか。行政もそういった方が響くし、具体的であるほど政策的には実現しやすい。単に不平不満や要望をつぶやくだけでは変わらないし、届かないというところを意識してほしい」と述べた。

データについては。「本来は全国的に収集した方が効率的」との見方を示したが、「県や地域薬剤師会の姿は見えにくい。24年度改定でも、薬剤師会以外の様々な学会や団体にデータを頼り、エビデンスつくりをやった現状がある。(行政として)苦労しているが、その点はどう考えるのか」と苦言も呈した。


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