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コロナ禍3年目のMR活動 「e嗜好性中位」の医師へのアプローチが重要に 視聴「前」と「直後」がカギ

公開日時 2022/04/05 04:52
コロナ禍のMR活動は4月で3年目に入った。新型コロナの新規感染者数が爆発的に増加した「第6波」(22年1月以降)における医師の医薬品情報源は、もはやWeb講演会や会員制情報サイト、自社サイトが中心で、MRは処方機会を確実にするコンテンツ視聴直後のタイムリーなフォローアップ活動をより重要視していることが分かった。特に、e嗜好性が「高位」の医師はデジタル中心で採用から処方継続までカバーできるが、e嗜好性が「中位」の医師の場合、Web講演会や3rd Partyの動画コンテンツを視聴する「前」のMRによるアプローチと、視聴「直後」に行うオンライン面談が処方機会の獲得や処方継続に寄与している可能性が示唆された。

ミクス編集部が3月31日付のミクスOnline(関連記事)で報じた通り、コロナ禍の医薬品情報のチャネル別ディテール数(DTL数)は、「Web講演会」と「インターネット」がコロナ前の160%~200%程度という高水準を維持していることが分かった。各種デジタルコンテンツを活用した医師への情報のインプットが「市民権」を得たことを裏付けている。ただ一方で、処方機会の獲得や処方継続に、デジタル情報がどの程度寄与しているかを定量的に測定することは難しい。まして、コロナ以前に比べてリアル面談が激減しているMR個々の活動をどう評価するかは、各企業にとって悩ましい課題として議論の俎上にあがっている。

そこでミクス編集部は、直近のDTL数や実際のディテールインパクトのデータなどを実際のMR活動に当てはめ、コロナ禍における最適なMR活動を「AMTUL」を用いて検証した。AMTULとは、認知(Aware)、記憶(Memory)、試用(Trial)、日常使用(Usage)、愛用(Loyalty)―の頭文字をとったもの。MR活動に当てはめると、▽認知(A):医師が当該新薬について初めて知るとき、▽理解(M):処方経験がない薬剤の特徴を理解するとき、▽採用検討(T):未処方薬剤の採用や処方開始を検討するとき、▽処方拡大(U):処方患者数を増やす判断をするとき、▽継続処方(L):使い慣れた薬剤の継続を判断するとき―と定義できる。

◎製品認知、理解、採用検討 e嗜好性の高位・中位はデジタルファーストが優位

まずAMTULを通じて、各フェーズにおける医師側の行動分析を行った。その結果、デジタル系チャネル(Web講演会、3rd Party、自社サイト)から情報入手したいとの割合は、認知(A)の段階で31.9%、理解(M)は31.3%、採用検討(T)は29.4%、処方拡大(U)は28.9%、継続処方(L)は27.4%―となった。デジタル系チャネルの特徴として、認知、理解の割合が高いのに比べて、採用検討、処方拡大、継続処方の割合が若干低下しているところが気になるところだ。

一方で、MRチャネル(面談、電話、メール)から情報入手したいとの割合は、認知(A)は24.6%、理解(M)は24.5%、採用検討(T)は24.3%、処方拡大(U)は21.4%、継続処方(L)は19.7%―で、各段階でデジタル系を7ポイント程度下回った。MRチャネルについては、認知、理解、採用検討までのフェーズは比較的同じ割合を維持しているのが特徴で、デジタル系チャネルとの違いも見えている。

この結果からまず言えることは、認知(A)、理解(M)、採用(T)までのフェーズはデジタル系チャネルが優位にあること。よって、冒頭に触れたように、製薬企業からの情報のインプットに対し、医師は一定の満足感を得ていると解釈できる。よって、このフェーズはデジタルファーストにより製品の認知、理解について一定程度の成果をあげることができる。また医療機関における新規採用もMRの適切なフォローさえあれば目標達成できる可能性が高い。

◎処方拡大、継続処方 e嗜好性高位の医師 視聴直後のMRフォローで処方機会最大化も


次に、処方拡大(U)、継続処方(L)の各フェーズをみる。先述したように、コロナ禍のMR活動において“悩ましい”部分と言える。単純にデジタルとMRを比較すると、デジタルとMRともに「AMT」に比べて「UL」のインパクトは下がっているものの、デジタルの方がダウン率は軽微となっている。リアルMRの病院内での訪問活動が制限されていることが起因するものだ。またデジタルの詳細をみると、処方拡大(U)のフェーズでWeb講演会など動画コンテンツの割合が他のチャネルに比べてあがっていることも分かってきた。

コロナ禍でWeb講演会の回数や、会員制情報サイトによる動画コンテンツの配信件数は格段に増加している。その点で、「U」、「L」のフェーズについては、よりデジタルを活用した医師への情報のインプットが求められるのと同時に、その後のMRによるフォローアップによる適切なクロージングが求められていることが分かる。その際に考えるべきは、医師のe嗜好性ということになる。このフェーズで「e嗜好性の高位」な医師であれば、コンテンツ視聴直後のタイムリーなMRによるアクセスとクロージングで処方拡大の機会を最大化できる。

◎MRが時間を割くべきは「e嗜好性中位」の医師 視聴の「前」と「直後」が重要に

一方で、MRが最も時間を割いて注力すべきは「e嗜好性の中位」の医師ということになる。MRにとってコロナ前であればリアル面談で情報提供し、その場でクロージングできていたのだが、コロナ禍が長引くにつれ、こうした医師へのアクセスは逆に難しくなった。MR自身も医師とのコンタクト機会を創出することに時間を割き、肝心のクロージングに持ち込めないケースも多いと聞く。逆に、MRとしては、e嗜好性が中位の医師の薬剤に対する医療上のニーズや課題感を共有化することで、処方機会を増大したいというのが本音だ。

そこで、e嗜好性が中位の医師へのアプローチだが、まずはWeb講演会などデジタルコンテンツを案内し、事前紹介する活動に軸足を移す必要がある。e嗜好性が高位の医師であればデジタルファーストで、MRのタイムリーなフォローで十分目的を達成できるが、逆にe嗜好性が中位の医師の場合は、デジタルの前のMRによるアプローチがより重要となる。Web講演会の視聴案内は極めて重要で、この機会をいかに充実させ、医師に視聴頂ける状況に持ち込めるかがMR活動としての重要ポイントとなる。もちろん、リアル面談以外のオンライン面談でも十分その役割は達成できるが、大切なのは、視聴前活動を軽んじないことだ。コロナ禍を通じた取材の中で、Web講演会の案内をDM(ダイレクトメール)やメルマガだけで済ますMRが散見された。これに対し医師側の印象が必ずしも良かったわけではない。一方で、視聴後のタイムリーなフォロー活動については、e嗜好型が高位の医師と同様に、タイムリーなアプローチと医師の抱く医療上の課題やニーズの共有に他ならない。

◎MR活動 医師の「e嗜好性」を踏まえた活動計画立案を考えるきっかけに

これまでのMRは長らくプッシュ型でかつSOV(シェア・オブ・ボイス)に慣れてきただけに、デジタル環境下でのプル型活動への転換には少々戸惑いもあるだろう。ただコロナ禍でデジタル情報が医師の情報源となる中で、MR側のマインドセットにも変化が求められるのは当然の流れと言える。また、MR活動における注力ポイントも、e嗜好性が高位の医師よりも中位の医師へのウエイト(時間配分)を考えた活動計画を立案することが求められる。逆に、e嗜好性が低位の医師であれば、MRによるアプロ―チは一時的に減らすか、極端なところ、止めてしまうという選択肢もあるのではないだろうか。現場のMR数が減る一方で生産性の向上が求められる中で、デジタル時代の情報提供活動におけるMRの立ち位置も大きく変わろうとしている。

各社ともオムニチャネル型の情報提供活動に舵を切っているが、コロナ禍で3年目を迎える情報提供活動において、いよいよMR側の活動変容が重要なタイミングとなってきた。


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