FDA バイオメディカル・イノベーション推進で青写真を策定
公開日時 2011/10/18 04:00
米食品医薬品局(FDA)は、10月5日、バイオ・医薬品・医療機器分野での業界育成、個人化医療の推進、IT技術の活用、革新的技術研究者の育成などについて青写真ともいえる具体的対応策をまとめた、「バイオメディカル・イノベーションの推進:患者のための製品を改善する取組み」(Driving Biomedical Innovation: Initiatives to Improve Products for Patients)を公表した。
全57ページにわたる報告書だが、内容は大きく分けると、ベンチャーなど起業家・小規模企業の支援策、個人化医療のインフラ構築策・支援策、標的療法などの新規医薬品の迅速な開発への関係者の協力の推進、データマイニング・情報共有・患者保護などIT技術活用策、次世代革新的技術者の養成、FDA規制の合理化・改革などを提唱している。
特に起業家支援については、「イノベーションは小規模ビジネスから始まる」とベンチャーなど起業・小規模企業の役割を重視、今後も、FDA内の既存の所小規模企業支援を担当する部署が、人材教育・相談(申請など)などの面で小規模企業を支援していく方針を示している。また、小規模企業を支援する部署であるFDA内に「小規模ビジネス連絡事務所」(Small Business Liaison)を設置する計画を明らかにした。
個人化医療のインフラ構築策・支援策については、「FDAは、個人化標的療法の開発促進に必要な規制上のインフラ構築と科学的最前線に立つ役割を担い続ける」との決意を表明している。そのうえで、個人化医療実現のためには、個人化医療を念頭に置いた、臨床試験においての試験デザイン、実施方法、統計法などにリソースを投入し、新規医薬品とコンパニオン診断薬の同時開発の臨床試験デザインのガイダンスを検討中であることも明らかにした。FDAは今年7月には、コンパニオン診断薬(機器)のガイダンス案を発表している。
FDAの現在の政策や実務の評価・反省などに基づき、業界幹部、小規模ベンチャー経営者、学者、患者団体など関係者との会合を重ねたうえで同報告書をまとめた。近年、製薬企業による医薬品の研究開発費への多額な投資にもかかわらず、FDA承認品目数が減少傾向にあることや持続的な研究開発パイプラインの維持が困難になるなどの危機感が背景にあると思われ、医薬品・医療機業界を浮上させることが米国経済に貢献するとの狙いもある。
米保健福祉省(HHS)のKathaleen Sebelius長官は、「オバマ政権は我が国のヘルスケアシステムを近代化・強化させる起業家や企業を支援してきている」と述べたうえで、「このイノベーションについての青写真はヘルスケアビジネスを成長させ、米国人の保健維持のための我々の努力の一環だ」と強調、FDAの取り組みを評価した。
FDAのMargaret A・Hamburg長官は、科学の進歩が前例のない機会を米国人に提供している状況という認識を示したうえで、「この青写真はFDAがその機会を確実にとらえ実行できる取り組みだということを提示している。これを実行することで、米国の患者に有効で安全な治療を提供することになる」と取り組みへの意欲を新たにした。