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【ISC事後リポート】虚血性脳卒中急性期のスタチン投与 死亡リスク低下も  既往歴や重症度の影響も示唆

公開日時 2013/02/27 08:00

虚血性脳卒中急性期における、スタチンの投与と予後への影響を検討した結果、入院前から継続してスタチンを投与した患者で最も死亡リスクが低いことが分かった。一方で、血糖降下薬でも同様の結果を示したことから、既往歴や重症度、治療の過程などの影響を受けている可能性も示唆された。カナダの脳卒中登録ネットワーク「Registry of the Canadian Stroke Network」から、虚血性脳卒中で入院したカナダの患者データを解析した結果から分かった。2月6~8日まで米・ホノルルで開催された国際脳卒中学会(ISC2013)で、8日に開かれたセッション「Outcomes, Quality and Health Services Research Oral Abstracts」で、米Michigan State UniversityのMathew J. Reeves氏が報告した。


スタチンは、脳卒中の一次および二次予防として広く処方されている。これまでの観察研究の中には、脳卒中急性期におけるスタチンの投与と転帰の向上との関連性を示唆するものがあるが、重症度やアドヒアランス、投与薬剤、治療などの交絡バイアスによる影響については十分に検討されていない。一方で、これまでの研究からスタチンの有効性は、これらの交絡バイアスによる影響を受けやすいことが指摘されている。


そこで同研究では、カナダの脳卒中登録ネットワークであるRegistry of the Canadian Stroke Networkのデータから、2003~08年の間で、虚血性脳卒中急性期で初めて入院した患者1万646例を前向きに追跡し、入院前後のスタチン投与の有無が患者の予後に与える影響を検討した。過去の病歴、脳卒中の重症度(カナダ神経スケールCNSによる定義)、持続的な神経学的欠損、投与薬剤、緩和ケア、退院時のmRSなどについて解析した。スタチン投与は、発症から2週間以内に開始していたケースを「入院前から投与」、入院中または退院後に投与を開始したケースを「入院後に使用開始」と定義した。評価項目は、30日間と180日間の死亡と、退院時の機能障害(mRS≥4 vs ≤3)に設定し、年齢や性別、重症度、意識レベル、糖尿病、高脂血症、喫煙、心血管既往、認知症、腎疾患、投与薬剤、緩和治療などの因子を調整した、多変量ロジスティック回帰分析で解析した。またスタチン以外の経口治療薬(この場合は血糖降下薬)が、転帰に影響を及ぼしていないとの仮説が正しいことを検証するため、同様の解析を血糖降下薬の投与に対しても同様の解析を行った(トレーラー解析)。


入院前からスタチンを投与していたのは31%(3296例)。スタチンの投与率は入院前の31%から、入院後は65%に上昇した。入院前からスタチンを投与されていた3296例のうち、92%(3044例)が入院後も使用を継続し、8%(252例)が使用を中止した。



入院前からスタチン投与がされていた群では、投与されていなかった群と比べ、有意に高齢(73.2歳 vs 71.8歳)で、女性の割合が少なかった(43% vs 51%、いずれもp<0.001)。また入院前から投与群は、脳卒中既往(31% vs 18%)や急性心筋梗塞既往(27% vs 10%)、高血圧(82% vs 62%)、高脂血症(74% vs 16%)、糖尿病(37% vs 20%)、アスピリン投与(48% vs 27%)、ACE阻害薬投与(48% vs 24%)の割合が有意に高く(全てp<0.001)、入院前にスタチンを投与していなかった群と比べ、心血管疾患リスクが高かった。


一方、重症度(CNS:7.9 vs 7.7、p<0.001、CNS≤4の割合:19% vs 21%、p=0.008)や緩和ケア(12% vs 13%、p<0.01)に有意差はみられたものの、脳卒中の症状(無意識:2% vs 3%、p=0.14、失語症:44% vs 44%、p=0.88)や治療の程度(経鼻胃チューブ: 17% vs 16%、p=0.76、ICU治療:8% vs 8%、p=0.96)において、両群間に有意差はみられなかった。


多変量ロジスティック解析の結果、入院前からのスタチン投与により、180日間の死亡リスク(オッズ比(OR):0.82、95%CI: 0.69 – 0.97、p<0.05)とmRS≥4のリスク(OR:0.84、95%CI: 0.75 – 0.93、p<0.05)が有意に低かった。しかし30日間の死亡リスクは、有意なリスク低下はみられなかった。


入院後もスタチンの投与を継続した群と、中止した群では、高脂血症の合併率(75% vs 68%)に有意差がみられたが(p=0.009)、脳卒中既往(31% vs 29%、p=0.454)、急性心筋梗塞既往(26% vs 28%、p=0.535)、高血圧(82% vs 83%、p=0.503)、糖尿病(37% vs 39%、p=0.712)などの心血管因子リスクや、アスピリン投与(48% vs 45%、p=0.316)、ACE阻害薬投与(48% vs 45%、p=0.372)など薬剤の投与率には大きな差はみられなかった。


一方で、脳卒中の重症度(CNS:8.1 vs 4.9、CNS≤4の割合:16% vs 57%)や脳卒中の症状(無意識:1% vs 15%、失語症:39% vs 62%)や治療の程度(経鼻胃チューブ: 16% vs 29%、ICU治療:7% vs 17%)、緩和ケア(8% vs 57%)など、脳卒中の重症度や治療プロセスにおいて、有意な群間差がみられ(全てp<0.001)、スタチンの投与を入院後に中止した患者では、重症度や障害度が高いことも分かった。



◎入院後もスタチン非投与で治療の介入程度が有意に高く


入院前にスタチン非投与の7350例のうち、52%(3854例)が入院後にスタチンを開始した。入院後にスタチン投与を開始した群と非投与群では、非投与群では高脂血症の合併率が有意に低かったが(19% vs 13%、p<0.001)、脳卒中既往(16% vs 21%、p<0.001)や急性心筋梗塞既往(9% vs 11%、p<0.001)、心房細動既往(13% vs 22%、p<0.001)、認知症既往(7% vs 12%、p<0.001)は有意に非投与群で高い結果となった。また、アスピリン投与(26% vs 29%、p=0.024)、ACE阻害薬投与(23% vs 25%、p=0.040)の割合も有意に高かった。


さらに、入院後もスタチンを投与しなかった群では、脳卒中の重症度(CNS:8.0 vs 7.7、p<0.001、CNS≤4の割合:16% vs 26%、p<0.001)や脳卒中の症状(無意識:1% vs 5%、p<0.001)、また必要とした治療介入(経鼻胃チューブ: 15% vs 18%、p=0.003、ICU治療:6% vs 10%、p<0.001、緩和ケア:6% vs 21%)の程度が有意に高く(p<0.01)、予後不良につながる因子を有することが示唆された。


入院前後のどちらでもスタチンを投与しなかった群を基準として多変量ロジスティック解析した結果、30日間と180日間の死亡リスクはどちらも、入院前からスタチンを投与し入院後も継続した患者群(30日死亡リスク OR:0.39、95%CI: 0.31 – 0.49、p<0.05、180日死亡リスク OR:0.46、95%CI: 0.38 – 0.55、p<0.05)、入院前は非投与で、入院後に投与を開始した群(30日死亡リスク OR:0.27、95%CI: 0.22 – 0.34、p<0.05、180日死亡リスク OR:0.40、95%CI: 0.34 – 0.47、p<0.05)では有意に低下し、入院前に投与し、入院後に中止した群(30日死亡リスク OR:3.00、95%CI: 2.00 – 4.49、p<0.05、180日死亡リスク OR:2.08、95%CI: 1.40 – 3.09、p<0.05)では有意に増加していた。


また、退院時のmRS≥4のリスクも、スタチン継続群と入院後に開始した患者群で有意に低く、入院前に使用も入院後に中止した患者群では有意に高かった。


◎血糖降下薬でもスタチンと同様の傾向示す


ただし、トレーサー解析として、血糖降下薬の入院前後の使用についても同様に多変量ロジスティック解析した結果、スタチン使用の結果と同様の傾向が見られた。入院前後のどちらでも血糖降下薬を投与しなかった群のリスクを1とした場合、30日間の死亡リスクは、入院前から血糖降下薬を投与し入院後も継続した群(OR:0.47、95%CI: 0.34 – 0.65、p<0.05)と、入院前は非投与で、入院後に投与を開始した群(OR:0.43、95%CI: 0.25 – 0.76、p<0.05)では有意に低下し、入院前に投与も入院後に中止した患者群(OR:2.29、95%CI: 1.38 – 3.80、p<0.05)では有意に増加していた。180日間の死亡リスクにおいても、有意差はなかったものの、スタチン継続群と入院後に開始した患者群に低い傾向がみられ、入院前に使用も入院後に中止した患者群では有意に増加していた。


Reeves氏はこれらの結果から、「スタチンの投与を継続、中止、開始、または投与しないままにするかどうかの決断は、予後に関連するリスクの階層化メカニズムそのもので、心血管リスクのプロファイルや脳卒中の重症度、および治療プロセスなどにおける違いが患者群間で大きかったことから、多変量解析の結果の解釈には十分な注意が必要である」と強調した。その上で、「救急治療においてスタチンの投与が有効かどうかは、臨床試験でしか検証できない」と結論付けた。

 

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