厚労省 在宅医療でのオンライン服薬指導 薬機法上の具体的要件検討に着手
公開日時 2018/07/05 03:52
厚生労働省は、医薬品医療機器等法(薬機法)改正議論の中で、在宅医療などでのオンライン服薬指導の具体的な要件の検討に着手する。現行の薬機法では、服薬指導などは対面で行うことが求められているが、これを見直す。高齢化が進展し、ポリファーマシーや残薬が社会問題化する中で、地域包括ケアシステム時代に合致した新たな薬剤師・薬局像として、かかりつけ薬剤師が医師と連携し、薬学的知見に基づいて最適な薬物療法を実現する姿を描いた。これに伴い、従来の医薬品を中心とした“対物業務”の効率化を推進する考え。具体的には、在宅での訪問薬剤管理・服薬指導で、オンライン服薬指導をはじめとしたICTの活用や調剤機器の活用を提案する。きょう7月5日に開かれる厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会で議論される。
医薬分業が新たな局面を迎えている。行政誘導による院外処方せんの増加により、医薬分業率は72.8%(2017年度)に上昇、調剤技術料は1.8兆円規模(16年度)にまで膨らんだ。財務省の財政制度等審議会や規制改革推進会議で、院外処方箋と院内処方箋の患者負担の格差も指摘され、調剤バッシングも巻き起こった。こうした中で、保険薬局・薬剤師は、患者の負担増に見合うだけの機能を発揮することが求められている。
一方で、高齢化が進展する中で、複数の疾患を合併し、複数の薬剤を服用する患者が増加する中で、ポリファーマシーや残薬などの問題も社会問題化してきた。医療現場が地域包括ケアシステム構築へと動く中で、地域に根差した保険薬局は、医療だけでなく、介護、福祉、生活の接点でもあり、かかりつけ薬剤師・薬局としての機能を発揮することへのニーズも高まっている。
◎地域包括ケア時代の薬剤師・薬局を定義 かかりつけ医と連携・処方提案
厚労省はきょうの制度部会に、地域包括ケア時代のかかりつけ薬剤師・薬局の姿として、薬剤師が薬を渡す前だけでなく、調剤後もかかりつけ医と連携し、服薬状況を把握。ポリファーマシーや重複投薬の防止、残薬の解消などに向け、必要に応じて処方提案を行う“対人業務”にシフトした姿を提案する。これにより、患者の服薬アドヒアランスが向上することで、安全・効果的な薬物療法の実現だけでなく、医療費の適正化にもつながるとの考え。
かかりつけ機能を強化する一方で、これまでの対物業務を効率化する必要性も出てくる。そのため、効率化のための方策として、オンライン服薬指導が議論の俎上にのぼる。在宅医療などでは薬剤師が患者の居宅を訪問し、副作用や服薬状況を把握することが求められているが、離島やへき地などでは緊急対応をはじめ、薬剤師の訪問が難しいケースもある。そのため、対面での服薬指導を原則としたうえで、オンライン服薬指導を補完的に活用することを提案する。
オンライン服薬指導をめぐっては、規制改革推進会議が実施を求め、6月15日に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)でも、服薬指導を含めたオンライン医療全体の充実に向けた検討を進めることが明記されていた。すでに特例として国家戦略特区内で実証的に行うことが認められており、6月に愛知県、兵庫県養父市、福岡市の実証事業の実施計画が認定。すでに愛知県ではアインホールディングス100%子会社のアインメディオが運営するアイン薬局稲沢店、福岡市ではHyuga Pharmacy社のきらり薬局を登録事業者として認定している(関連記事)。オンライン服薬指導が実現すれば、オンライン診療から服薬指導まで一気通貫したモデルが構築され、患者の負担軽減なども期待される。なお、2018年度診療報酬改定ではオンライン診療料、オンライン医学管理料などが新設されたが、初診や新たな医薬品の処方時などは原則として対面診療とするなどの要件が定められている。
◎在宅や高度薬学管理は地域で連携・機能分化を 日薬は「地域医薬品供給体制確保計画」策定求める
在宅医療のニーズ増加が見込まれる中で、地域における医薬品の提供体制も議論となる。無菌製剤や麻薬調剤、さらには緊急時・急変時の対応なども求められる中で、薬剤師が2名以下のいわゆるパパママ薬局が在宅に参画することが難しいと指摘されている。厚労省は、地域において在宅医療や、退院時支援、がんやHIVなど専門的な知識を必要とする高度薬学管理機能を担う保険薬局が必要であると指摘。個々の薬局の体制ではなく、“地域”の薬局が連携し、必要な機能を分担し、効率的な提供体制について検討を進めることを提案する。
日本薬剤師会は薬局について、調剤だけでなく、「要指導医薬品・一般用医薬品を含め、すべての医薬品及び衛生材料などを供給する機能を有する施設」、「地域において多職種連携を図るよう努める必要がある」ことなどを薬機法上に定義することを求める。在宅へ特化した薬局や高度薬学管理機能を有す薬局などへの機能分類の必要性を指摘したうえで、「過疎地域や中山間地域などを含め、地域住民・患者への医薬品供給体制を確実に担うよう」、医療計画や介護保険事業計画などとの整合性を踏まえた、地域ごとの「医薬品供給体制確保計画」(仮称)の策定の必要性を指摘する。