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厚労省 次期薬機法改正で責任役員変更命令、課徴金導入へ 品質・製造の不正抑止に向け

公開日時 2024/11/01 06:40
厚労省の厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会は10月31日、次期薬機法改正に向けて、責任役員の変更命令を盛り込むことを了承した。前回改正後も、後発品の製造業者を中心に不正が相次いでいることを踏まえ、製造販売業者と製造業者に絞って導入する考え。品質保証責任者(品責)を法律上明確化するなど、ガバナンスを強化する。あわせて、過度な出荷優先や利益追求の姿勢があったことを踏まえ、違法行為による不利益を増大させ、不正を抑止する観点から、課徴金制度の対象を拡大する。一方、薬事監視体制も強化。後発品をめぐっては、拙速な技術開発・検討など、いわゆる“上流問題”が指摘される中で、「後発品として初めて承認を受ける成分を含有する品目」の新規承認時の適合性調査についてはPMDAが実施することも了承された。後発品をめぐる品質・製造不正が相次いだことを受け、あらゆる面から不正を未然に防ぐ方策を打つ。

◎「責任役員が原因で法令違反が起きた場合」に変更命令 健康被害など広範な影響及ぼす可能性

責任役員の変更命令をめぐっては2019年の前回改定の議論では、偽造品流通問題や調剤報酬の付け替え請求問題などをきっかけに議論がなされた。制度部会の取りまとめとして、製造販売業・製造業に加え、薬局も含め、責任役員の変更命令を薬機法に盛り込むことを提案したが、与党との調整が難航。最終的に改正法に盛り込まれず、衆参議員の附帯決議で、「本法の施行状況を踏まえ引き続き検討すること」とされた。

法改正後の状況として、後発品の製造業者を中心に、製造管理・品質管理の不正事案が相次いでいる。23年12月に行政処分を受けた沢井製薬は初の総括製造販売責任者(総責)の変更命令を受けるなど、責任役員の関与が指摘されているケースも実際に起きており、さらなるガバナンス強化が必要な状況と判断。「責任役員が原因で、薬事に関する法令違反が生じた場合等、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するために特に必要な場合には、当該責任役員の変更を命じることができる」ことを盛り込むことを提案した。厚労省は、製造販売業者・製造業者に不正が相次いで起きていることから、薬局は対象とせずに、製造販売業と製造業に絞った形で、責任役員の変更命令の導入について検討を進める。

佐藤大作大臣官房審議官(医薬担当)は、「製造販売業や製造業は、製品による健康被害等の影響を全国的に広範に大きい可能性がある。現行法上から見ても違反事例が多く発生している。かつ、販売業のように許可をやめてしまえばいいということではなく、医薬品などの供給が止められない中で、色々行政的な対応をしないといけない。今回の提案としては、製造販売業者と製造業に対するものとしている」と説明した。

◎品責を薬機法上位置づけ、更命令も 製造業者に委託する製販の責務を法律上規定 

小林化工問題でみられたように、医薬品製造販売業者が医薬品製造業者に対する管理監督が不十分であることが一因と考えられる不正事案も頻発している。このため、医薬品製造販売業者の責務として、「製造所における製造管理及び品質管理が適正かつ円滑に行われていることの定期的な確認や、製造管理及び品質管理に係る情報の収集を医薬品医療機器等法に規定」する方針も示した。現行制度では、GQP省令に位置付けられているが、法律に格上げする考え。

こうした責務を遂行する観点から、品質管理業務を総括する品質保証責任者(品責)を医薬品医療機器等法に位置づけるとともに、省令に品質保証責任者の遵守事項を規定する。総責が品責を監督するという立場は維持するが、品責についても変更命令を行えるようにすることとした。また、医薬品リスク管理を含む安全確保業務を統括する安全管理責任者(安責)を薬機法上位置付けるとともに、省令に安全管理責任者の遵守事項を規定することも了承された。

◎課徴金対象 医薬品限定で「承認内容と異なる成分・分量等の製造販売・製造等の禁止違反」追加

不正事案を抑止する観点から、課徴金の対象に、「より保健衛生上のリスクが高い行為である承認内容と異なる成分・分量等の医薬品の製造販売・製造等の禁止違反(56条3号)を追加」する方針も決まった。製造管理・品質管理の不正事案をめぐっては、過度な出荷優先や利益追求の姿勢が原因の一つとして指摘されている。このため、これらの不正を抑止する観点から、違法行為によって得られた経済的利益を徴収することで、違法行為による不利益を増大させ、経済的誘因を小さくしたい考え。こうした事案が医薬品の製造販売業者・製造業者で認められるため、医薬品に限定して導入する。

◎初収載の後発品はPMDAが実施主体に 後発品の“上流問題”製造・品質管理の不備リスク高く

後発品の品質問題をめぐっては、市場競争が激しい中で、新規品目の十分な技術移転を行わないまま、発売を優先する拙速な技術開発・検討など、いわゆる“上流問題”が指摘されている。こうした中で、「後発品として初めて承認を受ける成分を含有する品目」については、製造管理・品質管理上の不備が発生するリスクが特に高く、その防止をより徹底する必要性があると指摘。これまで都道府県が調査の実施主体だったが、PMDAが実施する方針を示した。一方、その後の定期の適合性調査等は引き続き都道府県が実施する。都道府県で調査経験や調査員数に格差があることから、「必要時には都道府県に加え PMDAも調査を行うことができるようにする」ことも提案し、具体の方策について今後検討することも提案した。

茂松茂人委員(日本医師会副会長)は、「近年後発品の申請企業が減り、調査主体の変更が重なると、都道府県の調査件数がかなり減る。人員の削減や人材教育が難しくなる」として、厚労省に継続的な都道府県への支援を訴えた。中島真弓委員(東京都保健医療局健康安全部薬務課長)は、いわゆる上流問題について「明確に規定されていない」として、製造販売業者も含めた周知の必要性を指摘した。また、都道府県によっては調査件数が減るとして、「都道府県の状況に応じた支援をお願いする」と述べた。

花井十伍委員(ネットワーク医療と人権理事長)は欧米の査察官のキャリアパスについて触れ、「都道府県はジェネラリストを育成する」と指摘。サプライチェーンがグローバル化するなかで、欧米の査察官との連携・協力は不可欠として、「都道府県のキャリアパスだけでは難しい。グローバルなキャリアパスになるように検討すべき」と述べ、調査主体はPMDAとするのが本筋との見方を示した。PMDAの人員についての余力のなさを指摘する声もあがったが、佐藤審議官は、PMDAの人員引上げを行ったことを紹介し、「PMDAの組織体制も強化できるようにということで、制度改正等の機会を踏まえて人員体制の強化をしていく」との姿勢も示した。

◎GMP適合性調査はリスクベースに

また、GMP適合性調査についてはリスク評価に応じた運用とする。定期適合性調査申請時に企業が提出する資料を簡略化。申請資料に基づき高リスクと評価した製造所から優先的に、実地調査を実施する。低リスクと評価した製造所で製造される品目については、当該申請に基づく調査 (実地・書面) は不要とする。なお、調査頻度は5年に1度から「3年に1度」に変更する。企業の申請内容によってリスク評価が変わってしまうため、不適切な運用とならないよう求める声が委員からはあがった。

◎製造管理者の要件緩和 次回以降の制度部会で議論へ

このほか、製造所の製造管理者の薬剤師要件緩和をめぐり、日本製薬団体連合会(日薬連)が実態を報告した。業界が要望し、10月3日の制度部会で議論の俎上に上ったが、薬企業としての薬剤師確保や企業内での育成を問う声や、まずは実態を把握するところから議論をスタートすべきとの意見が出ていた。


中濱明子委員(エーザイ執行役)は、「我々は医療資格を有する薬剤師が製造管理者を務めることは基本だと考えている。一定数の薬剤を確保、育成するように努めている」と強調。実態として製造管理者を一般社員が努めている企業13%あるなど、現状では、職位が高くない薬剤師を管理者としておかざるを得ない可能性があると説明した。

川上純一委員(浜松医科大医学部附属病院薬剤部教授・薬剤部長)は、「懸念する部分が一定程度払しょくできたかなと思う。事務局が示した方向性で検討いただければ」と述べた。中濱委員は、「業界としても、しっかりと今後も実態調査、指導というものに取り組む」と応じた。次回以降、厚労省が改めて制度部会に検討の方向性を示し、議論がなされる予定。
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