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厚労省 循環器病対策推進基本計画の骨子案提示 外科的治療の集約化で問題提起

公開日時 2020/03/24 04:51
3月19日に開かれた第4回循環器病対策推進協議会で、厚生労働省は循環器病対策推進基本計画の骨子案を提示した。全体目標には、①循環器病の予防や普及啓発、②保健、医療、福祉サービス提供体制の充実、③循環器病の研究推進―を柱に掲げ、それらの達成を通じて最終的に「健康寿命の延伸、循環器病の年齢調整死亡率の減少」 を目指す。この日の会合では骨子案に対して構成員からさまざまな意見が出されたが、発症前から治療・療養までを通じた「予防」の重要性があらためて確認された。また死亡率減少などの数値目標を検討していくほか、サービス提供体制では心臓手術の集約化や包括的な相談支援体制の構築に関する指摘があり、今後の論点として浮上してきた。

◎「発症前から治療後の予防を前面に」


基本計画は、昨年12月に施行された循環病対策基本法に基づき、国の循環器病対策の基本的な方向性を明らかにするもので、今夏にも策定される見通し。今回の骨子案をもとにした議論と、これまでの各団体のヒアリングや検討を踏まえて厚労省は基本計画の原案を作成する。早ければ次回の会合で提出される見込みだ。

骨子案は、全体目標の達成を目指して3つの柱ごとに個別施策を記載。最も書き込みの多い「保健、医療、福祉サービス提供体制の充実」では、地域医療構想に基づく医療提供体制や地域包括ケアシステムの構築などこれまでの医療政策を踏襲。加えて、▽多職種の連携による循環器病の予防、重症化予防・再発予防、相談・生活支援等の総合的な取り組みの推進▽救急現場から医療機関により迅速かつ適切に搬送可能な体制の構築▽地域の医療資源医療資源を効率的に運用した24時間体制の救急医療の確保▽急性期から回復期、維持期・生活期までの状態に応じたリハビリテーションの提供等▽多職種連携や地域連携の下で循環器病患者の状態に応じた適切な緩和ケアの推進▽手足の麻痺、失語症、高次脳機能障害等の後遺症に対する支援体制の整備──などが盛り込まれた。

検討会の冒頭では、発症前から治療後を通した予防の重要性を指摘する声が相次いだ。小室一成委員(東京大学医学部附属病院循環器内科教授)は、「がん対策との違いで、例えば心不全の場合、生活習慣の改善によって悪化を防げる。何度でもチャンスがある」と説明し、一次・二次予防に加え、治療後の再発予防が大事であるというコンセプトを前面に打ち出すよう求めた。

また、脳卒中体験者として参加している川勝弘之委員は「『喉元すぎれば』で時がたつと患者も予防の重要性を忘れていってしまう。循環器病対策のベースは常に予防であると思っているので、その意識をなくさないような啓発活動が重要」と述べた。なお、「循環器病の予防や普及啓発」の個別施策では、「SNS等を活用した効果的な情報発信やマスメディアとの連携を通じ、循環器病の予防や発症早期の対応等について分かりやすく伝えるよう努める」と具体策を挙げている。

◎心臓手術の質高める集約化は困難? まず必要なのは「包括的な相談支援窓口機能」


厚労省はがん対策と同様、循環器病対策推進基本計画に何らかの数値目標を入れていく意向だ。羽鳥裕委員(日本医師会常任理事)は、「法律をつくって何が良くなるのか、目標を具体的に書いていただきたい」と要望。厚労省の担当官は、「どういうかたちでどのくらいのところを目指すのか、今後の検討会の中で議論していただきたい」と数値目標の設定を匂わせた。そのための資料を次回の会合で示すという。

一方、2017年の循環器病診療体制在り方検討会の取りまとめで「外科的治療(心臓手術)の集約化についての検討」が明記された。それを踏まえて磯部光章委員(榊原記念病院院長)は、「(循環器病対策基本法によって)これから病院がどうなるのかが切実な問題。集約化していくのか、それとも機能分化と連携でやっていくのか方向性を示すべき。少なくとも『均てん化』という文言は入れたほうがいい」と問題提起。これに対して美原盤委員(全日本病院協会副会長)は、「手術数が質を高めるエビデンスはあるが今の提供体制のなかで集約化はリスクがある。地域医療構想に基づいて集約化できる地域はあるだろうが、すべて一律にしていくのはいかがなものか」と牽制した。地域や施設間で格差があるといわれる外科的治療の質について医療資源との関係でどう考え、どこまで計画に書き込めるか、難しい調整が必要となりそうだ。

また、峰松一夫委員(医療法人医誠会臨床顧問)は、「患者の要望としては、急性期から介護までを網羅した包括的な相談支援窓口の設置がある。現状は取り残されている人がいるし、いろいろな窓口があるが対応がバラバラ。急性期の医療機関を揃えていくという議論よりは、こちらのほうが手をつけやすい。ぜひテーマの1つとして取り上げていただきたい」と訴えた。これには多くの委員が賛同しており、がん相談支援センターのようなものをつくれるかが、今後の焦点となる。
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